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サザンクロスの死闘

楽しんでください。

序章

仰向けになると、眩い南太平洋の陽光が容赦なく射す。

それは暖かく、心地よいもの。

つい、自分の今置かれている状況を忘れさせてしまうような心の安らぐ日の光。

それを僅かな間でもいいから堪能しようと深呼吸する。同時に潮の香りが鼻腔をくすぐり、新鮮な空気が体内に流れ込んでいく。だが、暖かい日の光も新鮮な空気も、潮の香もすべてけし飛び、黒い影とともに俺の辺りは一瞬にして血と硝煙の咽るような空気と臭いにまた囲まれた。

「・・・・貴様もここで終わりだ」

凛とした響きの良い声が鼓膜を震わせた。

陰は俺をすっぽり包みこむと視界には長身の女が映る。

この女の顔見て俺は脱力してしまった。絶望からくる脱力だった。それはまるで、針葉樹の森の中でグリズリーと対峙した時に死を覚悟するあの感覚と類似した。

俺の前に立つ女は端正な容姿とは裏腹に、デジタル迷彩のBDUバトルユニフォームを着用し、同色でカモフラージュされた大き目のタクティカルベストを着用。ベストのポケットにはアサルトライフルの予備マガジンや手榴弾がまるでハリネズミの様に満載されている。足元はジャングルブーツで固め、皮のグローブをはめた手にはフランス、サン・テチエンヌ造兵廠が製造したFA−MAS A2アサルト・カービンが握られている。

本体には相当な改良が加えられ、ダッドサイトをはじめ、シュタル・ケイム社製の高性能消音サイレンサーが装着されていた。左手でグリップを握り、右手はハンドガードの腹下に装備されたフォアグリップを握っている。フォアグリップはフラッシュライトと同化したタイプのもの。左の人差し指はいつでも射撃可能な状況に対応出来るようにトリガーから一時も離れることはない。

「デッドエンドだ。貴様はここで死ぬんだよ」

冷やかな視線が地べたに這いつく格好の俺に向けられる。感情の見えない、冷酷な視線。

口は一文字に結ばれ、開くときは最小限。まるで殺人アンドロイドを目の前にしたような気分だ。

「貴様はここで死ぬ。だが、ただ殺すのではつまらない。ゆっくりとじわじわと死んでもらうよ・・・・」

冷酷な女は俺に告げると、スリリングを使ってFA-MASを肩にかけ、素早く太ももに巻きつけられていたサブウエポン――ワルサー社製のP99――を引き抜きスライドを後退。初弾を装填。間置かず銃口は俺に向けられ・・・・。

PAN!!

乾いた銃声と共に、俺は苦悶の叫びをあげた。

「うあぁあぁぁ・・・・」

9ミリ口径のフルメタルジャケット弾(以後FJと呼ぶ)は俺の疲れ切って動けなくなった足、それも大腿部に直撃。FJ弾は太股にめり込み、腱筋引き裂き、大腿骨の一部を破壊。それでも治まらず、内部を滅茶苦茶に掻き回して反対側へと抜け出る。貫通銃創だ。

「うぅぅぅ・・・貴様・・・あの男の恨みかっ!」「・・・・・」

女は俺の問にこたえようとはせず、さらに引き金を絞る、今度は肩に激痛が走った。

「・・・・・みじめだな、死んだ男にすがりついてるのが丸見えだぁ!!」

全身のいたぶる激痛を押し殺し、俺は余裕の表情で女に話しかける。

「貴様がなにをしたところであの男は帰ってなどこないんだぞ。馬鹿め」「・・・・」

さらにこの地に銃声が響く。立て続けに3発、俺は腹に喰らった。今度は致命傷だ。

「貴様はここで死ぬ、それだけだ。それ以上も、それ以下でもない。」「そうか、なら荒崎琴美、地獄で会おう・・・」

俺の最後の言葉を聞き入れてから南洋のジャングルに一発の銃声が響いた。


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