婚約破棄しましたが元婚約者と結婚させられました
家同士が決めた婚約者がいたが、私は愛するアンジェラを選んだ。
その筈なんだが、私ユリウス・クラベッシュの妻は家同士の婚約者だったフランチェスカだ。
よって、我が愛しのアンジェラとは結婚できない。
アンジェラが私を責める。
「どうして私ではなく、婚約破棄されたあの方がユリウス様と結婚することになったの?!」と。
私のほうこそ、知りたい。
両親は婚約破棄を聞いて「折角、運が巡ってきたと言うのに、なんてことをするのだ!」と怒り狂った。
「フランチェスカは没落した子爵家の令嬢に過ぎないのに、何を言っているんです?」
「フランチェスカの母親は陛下の初恋の人で、陛下の想いを拒絶して、婚家と実家を没落させた張本人だ。その従姉である前のアントン侯爵夫人はうまく立ち回って、二十年も寵姫の座に居続けて婚家の爵位を上げ、ようやくその座が空いたと言うのに、お前が婚約破棄なんぞした為に水の泡になったではないか! 我が家はもう少しで権勢を手に入れることができるところだったのに!!」
それからしばらくして、両親に教会に引きずって行かれ、司祭準備室で結婚証明書に無理矢理サインをさせられたのだ。
「こんなことをしても私はお前を愛すことなんかないからな!」と腹立ちまぎれに叫んだ私に同じく結婚証明書にサインをした赤毛の魔女は嗤った。
「私もあなたの子どもを産むことはありませんから」と。
そう言って、フランチェスカは全員を置いて司祭準備室を出て行った。
それ以降、彼女と会うことはない。
偶然、顔をあわせたとしても、彼女は国王の隣で嫣然と微笑んでいる。
アンジェラが産んだ子どもたちが口々に言う。
「何故、同じお父様の子どもなのに、ジュリアン(フランチェスカの産んだ子どもだ)たちと自分たちの待遇が違うのか」と。
その答えに私は口が重くなる。
私が婚約破棄したフランチェスカは国王の目にとまり、寵姫となる為に元々婚約していた私が結婚相手に選ばれたのだ。
それを子どもたちにどう話していいのかわからない。
自分たちの兄弟だと思っている相手がそうではないと、父親が国王の寵姫にする為の結婚相手(国王の子どもを庶子にしない為の名ばかりの夫)だとどうして言えようか?
フランチェスカは寵姫として光輝いた中を歩き、私は寵姫の名ばかりの夫と言う称号を手に入れ、アンジェラは私の愛人と言う称号を得た。