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つまり養ってくれるってことですか?  作者: なおほゆよ
無人島編
8/52

島に住み着く魔物


前回のあらすじ


熾烈を極める戦いだった。






人物紹介


ゲームマスター側


Mr.X 殺し合いサバイバルゲームのゲームマスター、本名は田中。機械音痴。


助手 Mr.Xの助手。Mr.Xの部下だがときどきMr.Xを呼び捨てで呼ぶ。


ボス ボスはボスでボス以外の何者でもない




プレイヤー


萩山レンジ (ニート)高校を中卒後、就職が決まらずそのままニートになった。家に帰っても居場所がないため家に帰りたがらない。


月宮カグヤ (JK) 女子高生。Mr.Xから支給された携帯を即行で無くしたドジっ子。


天城ショウタ (ショタ)7歳のショタ。虐待を受けて育って来たために家に帰りたがらない。


平間和也 (イケメン) 24歳のイケメン。島が気に入ったので家に帰りたがらない。


西谷マキ (アパレル) アパレルショップで働いていたが、親が残した借金が返せず、日々取り立てに追われていたので家に帰りたがらない。


小坂慎太郎 (係長) 年頃の娘と妻を持つ係長。娘から一緒の洗濯機で下着洗いたくないと言われたのがショックだったのか、家に居場所がないと感じて家に帰りたがらない。


黒崎サナエ (ビッチ) 大学生のクソビッチ。イケメンを好きになったために家に帰りたがらない。


鬼塚ケイ (犯罪者) 犯罪を犯し、警察に追われていたところを拉致された。シャバにいるより島の方が安全と判断して家に帰りたがらない。


石川哲也 (おじいちゃん)89歳のおじいちゃん。昨年ひ孫の顔も見れたのでもう現世に思い残すこともなく、少なくとも人を殺してまで家に帰ろうとはしない。


エンジェル プレイヤー達の殺し合いを阻止すべく動く謎の人物





その他


タケシ 黒崎サナエ(ビッチ)の彼氏と思われる人物。頑張れ、タケシ。


兄貴 タケシが襲ったヤクザの舎弟頭的な存在のインテリヤクザ。鬼塚ケイを探し出し、殺すことを目的としている。


「…ンジ」


一面に広がる暗闇の中で遠くで誰かが呼んでる声が聞こえる。


誰の声か分からないけど、優しくて温かく、そしてどこか懐かしい声だ。


呼び声に誘われるように…僕はフラフラと声の元に歩き出す。


「レンジ…」


そして声の主に近づくにつれて、呼び声が大きくなるにつれて僕の歩みは速くなる。


やがて息を切らしながら走り出した僕の視界に月明かりに照らされた女性の姿が目に入る。


「レンジ」


月の光も弱く、闇にまぎれてよく見えないが、ひどく懐かしい感じがした。


やがて声をかければ聞こえるほど近付いた頃、月の光が彼女を照らした。


僕はその姿を見て思わず言葉を失う。


なぜなら月の光が彼女の全身を照らしているのに、彼女の首から上が無かったからだ。


しかし、彼女は口が無いはずなのに僕の名前を呼び続ける。


「レンジ!!」


僕はようやくそこで夢から目を覚ました。


薄暗い洞窟の中で目覚めた僕に外の光が差し込む。


その光の中から誰かが僕の声を呼ぶが、眩しくてよく見えなかった。


ニート「…お姉ちゃん?」


ボソリと呟く僕にその人は近づいてきた。


JK「いつまで寝てるの!?レンジ!!」


ニート「…なんだ、JKか」


JK「いま何時だと思ってるの!?もう昼の12時だよ!?」


ニート「うるさいな…お前は俺の母親か?」


JK「いいから起きろ!!ニート!!」


ニート「そんなに急かすなよ…まだ12時だろ?」


JK「いいから来るの!緊急集会を開くから!!」


ニート「…緊急集会?」






イケメン「食料がやられた」


プレイヤー全員が集まったのを確認すると、イケメンがそう切り出した。


ニート「…どういうことだ?」


犯罪者「備蓄していた食料が食われたんだよ」


ニート「一体誰が!?」


イケメン「ネズミだ」


ニート「ネズミ?」


イケメン「どこから入って来たか分からないが、ネズミに侵入されて食料を食べられたと思われる」


犯罪者「幸いなことに食料を全部食べられたってわけではないが、対策を考えないと食料を根こそぎ食べられちまうって話だ」


イケメン「それだけじゃない。ネズミは衛生的にも悪い。病原菌の感染源でもある」


係長「とにかくネズミを追っ払えばいいんだね」


アパレル「罠を仕掛けるっていうのはどうかしら?」


おじいちゃん「ネズミは警戒心が強いからの…そう簡単には捕まえられないぞ」


そんな感じに会議をしていると、イケメンの黒い携帯電話が鳴り出した。


着信相手はもちろんMr.Xである。


イケメン「…もしもし?」


Mr.X「私だ」


イケメン「あ、田中さん、こんにちは」


Mr.X「ふっふっふ、どうやらネズミにやられてお困りのようだな。…っていうか、あれ?いつの間にか本名バレてる?」


イケメン「それで、今日はどうしたんですか?田中さん」


Mr.X「田中と呼ぶな、Mr.Xと呼べ」


イケメン「で、本題は?」


Mr.X「ふっふっふ、なにやら大変なことが起きているようだな」


Mr.Xは島に設置してあるモニターからプレイヤーを観察しているため、状況を把握していた。


Mr.X「はっはっは!!余裕をこいでいたお前達もついに年貢の納め時だな!!せいぜいネズミに食料を食い尽くされて飢えてゆくのだな!!はっはっは!!…ごめんな、ショタ君」


イケメン「そうなんだよね。ネズミにやられて困ってるんだ、力を貸してくれないか?田中さん」


Mr.X「いや、だから田中って呼ぶなよ。ワシらは友達って訳じゃないんだからさ」


イケメン「それで、協力してくれるかい?」


Mr.X「いや、するわけないでしょ。ワシって一応、お前らに殺し合いをさせるためにここにいるんだからな」


イケメン「協力してくれないのかい?」


Mr.X「当然だ」


イケメン「言っておくが、これはお互いのためでもあるんだぞ?」


Mr.X「どういうことだ?」


イケメン「ネズミは衛生的にも良くない。歴史的に見てもペストの感染源と言われるほど衛生的にも悪い動物だ。そんなネズミを放っておいたらどうなると思う?」


Mr.X「なにかしらの病気にかかるんじゃないか?」


イケメン「そうだ。もしなにかペストのような大病に感染してみろ、僕たちプレイヤーは殺し合いもせずにみんな死んでしまう。そうなると困るのはそちらじゃないか?」


Mr.X「むっ…確かに関係のないところで貴重なサンプルを失うのは困る…」


イケメン「それに君の大事なショタ君もただでは済まないぞ。食料を奪われひもじい思いをし、病気で寝込む日々が続くのだぞ?」


Mr.X「むむむ…」


イケメン「ほら、ショタ君もなにか言ってやれ」


イケメンは携帯をショタに手渡した。


ショタ「あのね、ネズミさんがね、僕たちの食べ物を勝手に食べてきて困ってるの。田中のおじちゃんなら助けてくれるって、僕信じてるよ」


Mr.X「むむむ…わかった、ほかでもないショタ君の頼みだ。島にネズミ対策グッズを…」


その時、突然受話器の向こうから『熱い熱い!!』という声が聞こえてきて、その後、携帯から保留中の音楽が流れてきた。


しばらくしてから音楽が鳴り止んだ。


イケメン「…田中さん?」


助手「お電話代わりました」


携帯から聞こえてきた声はMr.Xのそれとは違う声であった。


助手「一応初めましてですね。私はMr.Xの部下にあたる者です。助手と呼んでください」


イケメン「ああ、いつもウチの田中がお世話になっております」


助手「…。とりあえずあなたは人をのせるのが上手いですね、先ほどの説得はなかなかのものですね。流石はエンジェルといったところですね」


イケメン「…エンジェル?」


助手「とぼけないでください。あなたがエンジェルであることは分かってます」


イケメン「…そうか」


助手「ですが今回ばかりはそう簡単には行きませんよ。私から島にネズミ対策グッズを送るなと田中にきつく言っておくので、今回は田中に頼るのは難しいですよ」


イケメン「なるほど…君は手強いようだね。というか、君がMr.Xをやった方がいいのでは?」


助手「一応、田中さんは上司なので…」


イケメン「君も大変だな」


助手「まったくですよ。で、そういうわけで電話切りますよ。はやく殺し合いしてくださいね」


イケメン「今回は一筋縄ではいかないな」


イケメンは通話を切ってそんなことを言った。


ニート「さっき言ってたエンジェルってなんなんだ?」


ニートは会話の中に出てきたエンジェルという言葉が引っかかっていた。


イケメン「ああ、あれか。僕もよく意味が分からなかったけど、つまり美貌溢れる僕は天使のようだってことでしょ」


イケメンの顔には『やれやれ、自分がイケメンすぎて困ったなぁ』と書いてあった。


ニート「その顔ムカつくからやめよ」


犯罪者「それで、結局どうするよ?」


皆で頭を悩ませているとある一人の女性がやって来て、一人ずつお茶を配り始めた。


きらびやかでおしとやか、かつ上品で美しいその女性はニッコリと微笑みながら優しい手つきでニートにもお茶を渡してくれた。


ニート「ど、どうも…」


あまりに美しいその女性の笑みに思わず照れながらニートはお茶を受け取った。


ニート「…ってか、誰?」


イケメン「誰って…分からないのか?。彼女はビッチだぞ?」


ニート「…え?」


ビッチ「悲しいですわ。ニートさんに忘れられてしまうなんて…」


ビッチはその美しい瞳から涙を流し、潤んだ瞳で訴えた。


ニート「ま、待て!。どういうことだ!?」


ビッチ「どういうことだとはどういう意味でしょうか?。もしや、わたくしの行為が至らなかったばかりにお怒りになっているのですか?」


ニート「い、いやそういうわけでは…」


ビッチ「だとしたらどうか誠心誠意謝らせてください!!。わたくし、これから共に生活していく仲間として、ぜひニートさんとも仲良くしたいのです!!わたくしのなにがご不満なのですか!?。どうか教えていただきませんか!?なんでもしますから!!」


潤んだ瞳でニートに攻め寄るビッチからは必死な思いが伝わってきた。


ニート「と、と、と、とりあえず落ち着こう!!一旦、落ち着こう!!ついでに俺も落ち着こう!!」


数分後…


イケメン「実は前回の話の時にビッチに足裏マッサージをしたんだ。その時に彼女のビッチ具合があまりにもウザ…じゃなくて、あまりにも気の毒だったからビッチに効くツボを刺激したんだ。そしてその結果生まれたのが…」


ビッチ「まるで生まれ変わったような気分ですわ」


ニート「ちょっと待って…どこからツッコめばいいの?」


係長「つまりはツボを刺激したことにより、彼女のビッチは治ったってことでいいんだね?」


イケメン「そういうことだね」


ニート「そこが一番理解できないところなんだけど…。っていうか、ビッチが治ったらなんで見た目まで変わるんだよ?」


イケメン「身は心を写す鏡とよく言うだろう?。ほら、僕みたいに」


ニート「その言葉に説得力を感じないのは俺だけか?」


ショタ「ビッチのお姉ちゃん、綺麗になったね!!」


ビッチ「そ、そんな、綺麗になっただなんて…照れますわ…はわわっ」


ニート「はわわって…」


イケメン「そういうわけで、彼女のビッチも治って一安心ということだ」


ニート「ビッチはビッチでウザかったけど、あれもあれで扱いにくそうだが…」


犯罪者「それより、ネズミの方はどうするんだよ?」


JK「ハイハイ!私に名案があります!」


イケメン「お?なんだい?」


JK「歴史の授業で習ったんですけど、高床式倉庫ってあったじゃないですか?。アレと同じのを作るっていうのはどうですか?」


イケメン「高床式倉庫?。確か縄文時代の食料庫のことだっけ?」


犯罪者「床を高くすることでネズミに侵入されないようにするやつだな」


JK「あと通気性が良くなって、乾燥するらしいですよ」


アパレル「でも素人の私たちでも作れるのかしら?」


おじいちゃん「ネズミなんてどこからでも侵入してくるからの…腕のないワシらでネズミが侵入しないようなものができるのか…」


ショタ「ねえ、高床式倉庫ってなに?」


係長「床を高くしてネズミが入れないように作った倉庫だよ」


ショタ「もしかしたら、僕それ見たかもしれない!!」


イケメン「え?」


ショタ「島を探検してるときに床が高く作られた小屋みたいなのがあったよ!!」


犯罪者「…どう思う?」


イケメン「見てみる価値はありそうですね。高床式倉庫でなくても、小屋ならなにか使えるものもあるかもしれません」


犯罪者「じゃあ、何人かで見に行くか…」





結局…


ニート「で、なんで俺が見に行くことになるんだよ」


イケメン「なにか使える物があるかもしれないからね、若い男手が必要なんだよ」


犯罪者「そういうことだ」


ショタ「遠足みたいで楽しいね!!」


ニート、イケメン、ショタ、犯罪者の四人で見に行くことになった。


しばらくショタを先導に歩いて行くとそれらしき物が見えてきた。


それはボロく古びた木でできた小屋で、確かに床が高く設置されていた。


ショタ「これだよ!これ!」


犯罪者「ほー、これはまさしく高床式倉庫だな」


ショタ「でしょ?」


イケメン「…でもこれ、古くて使えるか分かりませんね」


犯罪者「補強とかすれば使えるんじゃないか?」


ニート「………」


イケメン「でもこの小屋があるってことは、この島に誰か住んでいたってことですよね?」


犯罪者「そういうことだな。でも古いからもう何年も前のことだろうな」


ニート「………」


イケメンと犯罪者がそんなことを話し合っているなか、ニートはただ黙ってボロボロになったそれを見つめていた。


ショタ「…どうかしたの?ニートのお兄ちゃん」


ニート「…いや、なんか見覚えあるなって思って」


イケメン「この島に来たばかりの時に見たんじゃないか?」


ニート「いや…もっと前に…」


そのとき、ニートの脳裏にとある光景が浮かぶ。


それは真新しいこの高床式倉庫を数人で囲む光景。


そして、あの人が僕を呼ぶ声…。


ニート「………」


犯罪者「ダメだ、ところどころ木が腐ってる」


イケメン「食料庫として使うには少し心もとないな…」


犯罪者「やっぱり修理が必要だ。修理するにしてもいったい何日かかるのやら…」


イケメン「それまで食料が持てばいいんですけどね。とりあえずみんなのところに戻って方針を話し合いましょうか」


犯罪者「おーい!二人とも!戻るぞ」


ニート「…あ、あぁ、いま行く」


ニートはときどき高床式倉庫の方を振り返りながらその場を去って行った。





もしかして僕は…


この島に来たことがあるのか?。

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