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つまり養ってくれるってことですか?  作者: なおほゆよ
無人島編
36/52

星と花火とこの島に誓う 後編

前回のあらすじ


犯罪者「じゃあ、俺がJKに告白するよ」


係長「いや、僕が告白するよ」


イケメン「いや、僕が告白する」


ニート「え?…じゃあ、俺が…」


犯罪者 係長 イケメン「どうぞどうぞ!!」






人物紹介


ゲームマスター側


田中 殺し合いサバイバルゲームのゲームマスター。妻と娘が二人いるらしい。…Mr.X?誰のことだ?。


助手 田中の助手。デスゲームの行方は彼の手にかかっていると言っても過言ではない。


ボス ボスはボスでボス以外の何者でもない。なんか偉い人と繋がりがあるらしい。


Q プレイヤー達の安否の偽造工作員。兄貴と接触を試みる。




プレイヤー


萩山レンジ (ニート) 行方不明と記憶喪失の経歴がある。前回のデスゲームの勝者。


月宮カグヤ (JK) 女子高生。レンジとは幼馴染。意外と闇が深い。


天城ショウタ (ショタ)7歳のショタ。虐待を受けて育って来たために家に帰りたがらない。


平間和也 (イケメン) 24歳のイケメン。島が気に入ったので家に帰りたがらない。


西谷マキ (アパレル) アパレルショップで働いていたが、親が残した借金が返せず、日々取り立てに追われていたので家に帰りたがらない。じつは農家の娘。最近、オカンと呼ばれるようになった。


小坂慎太郎 (係長) 年頃の娘と妻を持つ係長。娘から一緒の洗濯機で下着洗いたくないと言われたのがショックだったのか、家に居場所がないと感じて家に帰りたがらない。娘の名前はモトコ。


黒崎サナエ (ビッチ) 大学生のクソビッチ。イケメンを好きになったために家に帰りたがらない。ビッチに効く足ツボを刺激されると身も心も美少女のヴィッチさんに転生する。


鬼塚ケイ (犯罪者) 犯罪を犯し、警察に追われていたところを拉致された。シャバにいるより島の方が安全と判断して家に帰りたがらない。


石川哲也 (おじいちゃん)89歳のおじいちゃん。昨年ひ孫の顔も見れたのでもう現世に思い残すこともなく、少なくとも人を殺してまで家に帰ろうとはしない。覗きに失敗してこの世を去っていった。前回のデスゲームのゲームマスターだった。


エンジェル プレイヤー達の殺し合いを阻止すべく動く謎の人物。何かしらの形で前回のデスゲームに携わっていた者と思われる。






満天の星空に覆われたこの暗闇の島に、小さな点のような火の手が上がる。


それを皮切りに、さらにそこから幾つかの小さな点のような火が上がり、ほんの少しの間だけ激しく輝いては燃え尽き、また新しい火が上がり、輝いては燃え尽きることを繰り返す。


それは生産性もなければ、なにかを享受しているわけでもない不毛な作業。


単純で、無意味で、無意義で…そして虚しさだけがそこに残る。


それでも彼らがその火を燃やすのは、過ぎ行く夏の季節を清算するためか、あるいは残酷な時の流れに逆らい、少しでも長く、この時を過ごすためか…。


どちらにしても、不毛なことには変わりない。


それでも…。


JK「それでも…みんなどうして花火をするんだろうね?」


懸命に命を燃やし、光り輝く花火を片手にJKは呟いた。


アパレル「綺麗だし、楽しいからじゃないのかしら?」


JK「うん、それはそうなんだけどね。…でも、花火ってそれ以上に寂しくならない?」


ヴィッチ「わかりますわ。花火をやる前や、やってる最中は楽しいんですけど、それが終わってしまった瞬間、楽しい夏の終わりを感じてしまいますわ」


JK「そう、花火をしたって夏は終わるし、しなくたって夏は終わる。だからと言って、なにか生産性があるわけでもないし、なにかを享受しているわけじゃない。単純で、無意味で、無意義で…後に残るのは虚しさだけ。それが分かってるのに、なんで花火なんてやりたくなるのかな?」


イケメン「少しでも、夏の終わりを先延ばしにしたいんじゃないのかな?。花火が終わるまでは、気分だけでもまだ夏でいられるからね」


JK「でも、そう考えたら…花火ってただの無駄は悪あがきに見えてちゃうなぁ…」


係長「そんなことないよ。毎年、一年に一回、花火をやってみてごらん。それが5年、10年、何十年と積み重なった時、ようやくわかるだろうけど、それをやってて良かったと思えるよ。一年一年、少しずつ違った花火の景色は僕自身の変化と、そして成長の表れであることが見えてくるよ。だから、いまは意味が分からなくても続けてみればいい。その燃え尽きて積み重なった花火一本一本が、この星空のようにずっと、心で輝き続けているからさ」


係長は空を仰いでJKに説いてみた。


犯罪者「へぇ、いいこと言うじゃん。…ちなみに、それって花火じゃなくてタバコで代用できないの?」


係長「タバコの場合だと、燃え尽きて積み重なった吸い殻一本一本が、身体を蝕み続けることになるから…」


JK「一本一本が心で輝き続けてるなら、たくさん花火をやっておいた方がいいかな?」


そう言うとJKは花火を10本くらい持ち出して、一斉に火をつけた。


アパレル「ちょっとJK、数をこなせばいいってもんじゃないでしょ?」


ヴィッチ「きっと、毎年やることが大切なんでしょうね…」


JK「でも…やっぱり…こっちの方が楽しいよ!!」


10本くらいの花火に一斉に火をつけて、放火魔と化したJKは器用にその10本を指に挟みながら、謎の舞を踊った。


係長「はははっ、いいよいいよ、その調子」


イケメン「かっこいいよ」


アパレル「でも、火傷には気を付けてね」


花火に盛り上がる一方で1人、どういうわけかショタは涙を流していた。


JK「あれ?ショタ君、泣いてるの?」


犯罪者「どうした?火傷でもしたか?」


ショタ「違うよ…泣いてるのは…嬉しいからだよ」


ボロボロと涙を流す目頭を腕で覆うショタは涙ながらにそう話した。


イケメン「嬉しいって?」


ショタ「だって…こんなに楽しい花火、二度と出来ないと思ってたから…。でも、今日はみんなでこんなにも楽しく花火が出来てね…嬉しくて嬉しくて…涙が止まらないの」


係長「そっか…ショタ君にもいろいろあったんだね」


アパレル「じゃあ、今日は今まで出来なかった分、楽しまないとね」


ショタ「うん!」


その小さなショタの心からの笑顔は、空を照らす星よりも、激しく燃える花火よりも輝いて見えた。


だが、次第に花火は無くなっていき、花火の終わりが…夏の終わりが近づいて来た。


ショタ「花火、終わっちゃうね」


イケメン「何事も、いずれは終わるものだからね」


ショタ「花火…もっとやりたいな…」


JK「じゃあ…来年もやろうよ、花火。毎年、みんなで、この島で、花火をやろうよ」


係長「そうだね、またやればいいもんね」


ヴィッチ「その通りですね。またみんなでやりましょう」


イケメン「うん、僕も付き合うよ」


犯罪者「一年に一回くらいは花火をやりたいもんな」


アパレル「またみんなで楽しい花火をやりましょう」


ショタ「うん!そのために僕も頑張るよ!」


JK「じゃあ、決まりね!。約束だよ!?。この島で、みんなで花火をやろう!!」


いずれは終わるこの夏と、私達はまたいつか巡り会うために、この約束を星と花火とこの島に誓った。


例えそれが…決して報われない約束だとしても…。
























と、まぁ…本来ならばここで終わらせたいところだが、一応この小説はギャグなので、蛇足ではあるが、ニートの話をしよう。


花火の最中、一切会話に入らなかったニート。


その理由は…内心、花火どころではなかったからだ。


JKとの関係を煽りに煽られたニートはめちゃくちゃ焦っていたのだ。


告白した方がいいのか?。告白しなきゃダメなのか?。


いやいやいや!!まだ早い!。もっと外堀を埋めて確実に…でもいつ他の男に取られるのか…だったらいま告白するか?。…いや、まだ告白は早い!。


考えが堂々巡りし続けて、何の行動に踏み出せないニートを余所に、花火の数が少なくなったので打ち上げ花火が始まろうとしていた。


JK「ニート、どうしたの?。さっきからずっと燃え尽きた花火を握り続けてるけど?」


もはや花火どころではなくて、持っていた花火が燃え尽きたことにも気が付かなかったニートは、JKの指摘した通り、燃え尽きた花火を終始握り続けていただけだった。


ニート「え?あ?え?、い、いや、べ、べべべべ別にこれは何でもないんだからね!!」


顔を真っ赤に染めて、何でもない言葉に吃るのは二次元の女の子の特権にも関わらず、ニートはそれを行使する。


JK「なにか悩みでもあるの?」


ニート「ない!ない!ない!。悩みも仕事も職も何もないよ!ニート元気だよ!」


JK「とりあえず、いまから打ち上げ花火をするから、もっと見やすいところに行こうよ」


そう言うとJKはニートの手を握り、打ち上げ花火の場所まで引っ張った。


させるがままのニートはもはや何の言葉も出せなかった。


可愛い女の子がするなら萌えるだろうが…改めて考えると、こいつがやっても誰も得することはないことだが、御構い無しにニートは顔を赤く染める。


『冷静になって考えてみると、本当に需要がない。それなのになんでこいつのこんな姿をこと細かく描写しなきゃいけないだ?』と、自問自答しつつも、ここまで描いたので致し方ないのでこのまま描写するが、JKに連れられたニートはJKに振り回されるがまま、JKの真横に座り、顔が赤いのを悟られないように下を向きながらも、横目で何度もJKの姿を捉える。


普段とは違い、浴衣によって艶やかに彩られ、いつもは見れない髪型とうなじがニートの鼓動をさらに速くする。


もういっそ、速くこの場を離れてしまいたいと思いつつも、それでも離れられないニートの目の前の空に大きな花火が打ち上げられた。


爽快な破裂音と共にさざ波の上の星空に輝き、舞い散る一瞬の閃光のような花火…だが、もやはそんなものはニートにとってはどうでもよかった。


JK「タマヤーーーー!!!」


花火の光に照らされた彼女の姿から目が離せず、ただただ見惚れてしまっていた。


もはや何も考えることも、話すことも出来なくなったニートの方に振り向き、彼女は少し照れ臭そうに笑いかけた。


それはおそらく一瞬の気の緩みが招いた油断なのだろう。ニートの口から滑り落ちるようにこんな言葉が溢れた。


ニート「好きだ…」


再び空に、大きな花火が輝いた。


花火に照らされた彼女は、ニートの顔をまっすぐに見ながら、顔をポカンとさせていた。


『あれ?いま俺…なんて言った?』


ニートは心の中で自問自答し、そして自分が言った言葉をハッキリと思い出した。


その瞬間、かつてないほど顔を真っ赤に染めて、その場から逃げるように叫び声をあげながら誰もいない夜の砂浜を駆け出した。


そしてその日、ニートが帰ってくることは無かった。







一方、所変わってとあるビルの最上階のオフィスにて、助手はボスに話を持ちかけていた。


助手「エンジェルを捕獲、無力化するために…島に兵隊を派遣することを許可してください」


ボス「やはり…エンジェルを排除することにしたのですね?」


助手「はい。彼女にはもはや一刻の猶予も残されていません。ですから、早急にデスゲームを再開するために、エンジェルを捕獲…場合によっては殺害するための兵隊を貸していただきたいのです」


ボス「エンジェルの正体の目星はついたのですか?」


助手「はい…はやり、状況から考えてエンジェルは…萩山レンジであると思われます」


ボス「よろしい。では…エンジェルの排除をあなたに命令します、Mr.X」


助手「はい、必ずエンジェルを排除してみせます。…人類のため…彼女のためにも」

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