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つまり養ってくれるってことですか?  作者: なおほゆよ
無人島編
10/52

これもタケシの物語

前回のあらすじ


ネズミーマウス「ガハッ!!」(吐血)


ネズミ退治に成功した。








人物紹介


ゲームマスター側


Mr.X 殺し合いサバイバルゲームのゲームマスター、本名は田中。機械音痴。


助手 Mr.Xの助手。Mr.Xの部下だがときどきMr.Xを呼び捨てで呼ぶ。


ボス ボスはボスでボス以外の何者でもない




プレイヤー


萩山レンジ (ニート)高校を中卒後、就職が決まらずそのままニートになった。家に帰っても居場所がないため家に帰りたがらない。行方不明と記憶喪失の経歴がある。


月宮カグヤ (JK) 女子高生。Mr.Xから支給された携帯を即行で無くしたドジっ子。レンジとは旧知の仲らしい


天城ショウタ (ショタ)7歳のショタ。虐待を受けて育って来たために家に帰りたがらない。


平間和也 (イケメン) 24歳のイケメン。島が気に入ったので家に帰りたがらない。


西谷マキ (アパレル) アパレルショップで働いていたが、親が残した借金が返せず、日々取り立てに追われていたので家に帰りたがらない。じつは農家の娘。


小坂慎太郎 (係長) 年頃の娘と妻を持つ係長。娘から一緒の洗濯機で下着洗いたくないと言われたのがショックだったのか、家に居場所がないと感じて家に帰りたがらない。娘の名前はトモコ。


黒崎サナエ (ビッチ) 大学生のクソビッチ。イケメンを好きになったために家に帰りたがらない。ビッチに効く足ツボを刺激されると身も心も美少女のヴィッチさんに転生する。


鬼塚ケイ (犯罪者) 犯罪を犯し、警察に追われていたところを拉致された。シャバにいるより島の方が安全と判断して家に帰りたがらない。


石川哲也 (おじいちゃん)89歳のおじいちゃん。昨年ひ孫の顔も見れたのでもう現世に思い残すこともなく、少なくとも人を殺してまで家に帰ろうとはしない。


エンジェル プレイヤー達の殺し合いを阻止すべく動く謎の人物





その他


タケシ 黒崎サナエ(ビッチ)の彼氏と思われる人物。頑張れ、タケシ。


兄貴 タケシが襲ったヤクザの舎弟頭的な存在のインテリヤクザ。鬼塚ケイを探し出し、殺すことを目的としている。





助手「はぁ…」


助手は浮かない顔でため息を吐いていた。


それもそのはず、ボスから3週間以内に『成果』を出すように言われてからもう2週間経っていた。


だが、エンジェルの策略のせいなのか、未だにデスゲームは犠牲者がゼロであった。


上司の田中は頼りにならないので自分でなんとかせねばと考えていたが、具体的な案は出なかった。


そんな助手の元に一人の白衣を着た女性が近づいて来た。


女性「浮かない顔ね…」


そう言う女性の声に力はなく、表情も無表情であった。


助手「お前に言われなくないね」


女性「私はようやく溜まっていた仕事が終わったところで疲れてるの。表情を作る元気もないの。それと…」


助手「なに?」


女性「『お前』はやめて。ここでは『Q』と呼んでって言ったでしょ?」


助手「そうだったな、Q。それで、Qの仕事って…確か偽造書の作成だったっけ?」


Q「そう。デスゲームのプレイヤーの親しい人間がプレイヤーの行方を捜索しないようにするための偽造した手紙を出す仕事」


助手「手紙出すだけの仕事なんて楽そうでいいな」


Q「楽なんかじゃない。プレイヤーの筆跡を完全にマスターしたり、プレイヤーの身分や境遇を調べ上げて違和感のない内容にする必要もあるの」


助手「へぇ…身分や境遇で内容も変えるのね。ちなみに例えばニート…萩山レンジの偽造手紙の内容はどんなのなの?」


Q「マグロ漁船で働き始めたからしばらく帰らないという内容の手紙を家族に送った」


助手「ははっ、それはご家族も大喜びだな」


Q「他にも郵便局のハンコの偽造とか、いろいろやることがあるの」


助手「なかなか凝ってる手紙だな。でも偽造ってバレたらどうするんだ?」


Q「完璧な偽造だもの。バレるはずはない。ホームズ顔負けの名探偵でもいない限り…」


助手「そのセリフ、フラグにならなければいいけどな…」


助手はそれだけ言うと、その場を後にした。











俺の名前はタケシ。


突然だが、俺には彼女がいる。


彼女の名前は黒崎サナエ。


自分で言うのもなんだが、可愛い彼女だ。


パッチリとした瞳に愛くるしい顔、そして甘美な声で俺に甘えてくるじつに可愛い彼女だ。


周りの友人は『黒崎サナエがお前のこと予備の予備って言ってたぞ』とか言っていたが、彼女は勘違いされやすいだけで、じつは清楚で可憐な女性であることを俺だけが知っている。


そんな彼女が悪の組織に誘拐されたので、手がかりを探すべく俺はヤクザと手を組んだ。


普通なら関わることが出来ないアウトローな人物との繋がりが出来たせいか、やたら一般人が矮小に見えて、自分が大きくなった気がして、調子に乗って友人に『お前昔ちょっとヤンチャしてたらしいけど、所詮は悪ガキのお遊戯だな。俺はもっと悪いやつを知ってるぜ』的なことを言ってみたが…


友人「はいはい、タケシタケシ」


この一言で流されてしまった。


そんなタケシの元にとある情報が流れて来た。


それは、黒崎サナエからカナダから送られた家族に当てた手紙が来たということだった。


手紙の内容は『どこか遠くの国で暮らすことにしたのであとはよろぴく』的なことが書いてあった。


サナエの家族は奔放な彼女のことだからこういうこともあると思い、特に疑問に思わなかったが、俺はこの手紙に違和感を覚えたのだ。


これはサナエが書いた物でなく、サナエを誘拐した悪の組織がでっち上げた手紙であると直感を根拠とした名推理をした俺は、とりあえずこの手紙を先日会ったインテリヤクザの兄貴に見せてみることにした。


タケシ「これが俺の彼女を名乗って送られてきた手紙です」


兄貴「………」


タケシから重要な手がかりを見つけたと連絡を受けて、ヤクザの事務所に兄貴は呼び出されたのだ。


兄貴はタケシからやる気のなさそうな手つきで手紙を受け取り、ぼんやりと眺めた。


ヤクザ「…特に違和感を感じるような内容では無いですね」


兄貴の後ろで手紙を覗き見たヤクザがそんなことを言った。


兄貴「…とりあえずお前、そこに直れ」


ヤクザ「…へい?」


兄貴はヤクザを目の前に立たせると容赦の無い回し蹴りをヤクザにぶちかました。


ヤクザは2,3メートル吹き飛び、壁に打ち付けられ倒れた。


突然の出来事にヤクザは困惑しながら起き上がろうとしたが、そこを兄貴がヤクザの胸ぐらを掴み無理やり立たせた。


兄貴「お前はこんなくだらない用事のために俺を呼んだのか?」


鬼のような形相で下っ端ヤクザを睨みつける様にタケシは恐怖を覚え、震えながら黙って見守っていた。


ヤクザ「こ、こいつが重要な手がかりを見つけたっていうからまず兄貴に連絡するべきだと思って…」


兄貴「これのどこが重要な手がかりだぁ!?お前はこれで鬼塚ケイを見つけられるのかぁ!?。重要な手がかりになるかどうかも判断できねえのか!?お前はよ!!」


ヤクザ「す、すみません!!」


兄貴「バカが重要だと言って、お前はそれを信じて疑わず、俺を呼び出して俺の時間を無駄に削ってんだぞぉ!?わかってんのか!?」


ヤクザ「すみませんでした!!」


兄貴「この世で一番愚かなやつっていうのを教えてやろうか!?。それはバカの言葉を鵜呑みにするバカのことだよ!!」


そのまま兄貴はヤクザを引っ張り近くにあった机の角にヤクザの顔面を思いっきり叩きつけた。


しかも一度ではなく、なんども叩きつけた。


さすがに見ていられなくなったタケシは震えた声で呼びかける。


タケシ「あ、あの…その辺で止めた方が…」


タケシの言葉を聞いた途端、兄貴は鬼の形相を止め、いつもの笑顔で言葉を返した。


兄貴「これは失礼いたしました。お客人の前でこのような無礼を働くべきではありませんね」


兄貴は掴んでいたヤクザの胸ぐらをゴミのように投げ捨て、タケシの方に向き合った。


兄貴「それで、タケシさんはどうしてこの手紙に違和感を覚えたのですか?」


先ほどの狂気に満ちた様子とは裏腹に穏やかに尋ねてくる兄貴にタケシは失禁しそうなくらい恐怖を抱いていた。


タケシ「や、その、か、彼女はよろぴくとか、そんな汚い言葉、つ、使うような人じゃ無いので…」


兄貴「ではあなたは言葉使いがおかしいからこの手紙は偽造されたものだとお思いで?」


タケシ「は、はい」


兄貴「でもご家族や友人はこの言葉使いに違和感を感じなかったのでしょう?」


タケシ「そうですね…」


兄貴「それは彼女は普段このような言葉使いだけど、あなたの前でだけ綺麗な言葉使いをしているということでは無いのですか?」


タケシ「そんなことは…」


兄貴「もしかしてあなた、彼女によく高い物をねだられてプレゼントとかしてますか?」


タケシ「は、はい、彼女は甘えん坊なので…」


兄貴「なるほど」


ここで兄貴はタケシと黒崎サナエの関係を見抜いたのか、こんなことを話し出した。


兄貴「もしかしてあなたは彼女にとって、ただのATMではないのでしょうか?」


タケシ「そんなはずない!!。彼女はそんな人じゃない!!。彼女は清楚で可憐で心優しい人だって俺は知ってる!!。俺だけが知ってるんだ!!」


兄貴「あぁ…はいはい…」


兄貴はため息まじりの返答をした。


兄貴「まぁ、あなたとサナエさんの関係はとりあえず置いておきましょう。一つお聞きしたいのですが、サナエさんが行方不明になったのはいつ頃ですか?」


タケシ「だいたい2週間前です」


兄貴「なるほどなるほど、一応この手紙を差し出した日付けは一週間前なので時間的には問題ないようですね」


タケシ「サナエはよく海外に行くので家族や友人はその手紙に違和感を感じなかったそうです」


兄貴「ふむ…サナエさんは国際郵便をよく利用する方ですか?」


タケシ「海外の友人によく手紙を書くと言っていたので、国際郵便は慣れているかと…」


兄貴「ほうほう…」


タケシ「とにかく彼女は悪の組織に囚われ、今も助けを求めているんです!!。その手紙だけが手がかりなんです!!どうか力を貸してください!!」


兄貴「わかりました、あなたの熱意に心打たれました!。任せてください。サナエさんの安否は我々が探している人物につながる情報ですから、我々も最善を尽くしますよ」


タケシ「本当ですか!?ありがとうございます!!」


こうして2人はガッシリと再び握手をし、タケシは去っていった。






ヤクザ2「やっぱりあの男は余程のバカのようですね」


タケシと兄貴が話し合ってる間、裏でこっそり兄貴にボコボコにされたヤクザを介抱していたヤクザ2が言った。


兄貴「そうですね、まっすぐで良いバカです」


ヤクザ2「自分が騙されてるのも知らずにその手紙がでっち上げられた物だなんて言い貼って…」


兄貴「いえいえ、彼が言ってるのもあながち間違いでは無いかもしれないですよ」


ヤクザ2「え?」


兄貴「通常、国際郵便には航空便と船便の2種類あるのですが…航空便は手紙が届くのに長くて一週間、船便は短くて一ヶ月かかります」


ヤクザ2「…となると、差し出した日付けが1週間ほど前のその手紙は航空便で送られて来たってことですか?」


兄貴「そうなりますね。そして航空便で送る場合、通常なら手紙に『VIA AIR MAIL』と書くことになってます。しかしこの手紙にはそれが書かれていません」


ヤクザ2「それは書かなきゃ届かない物なんですか?」


兄貴「いえ、そんなことはありません。ただ国際郵便を使い慣れている人がそのことを知らないとは思えません」


ヤクザ2「そういえば国際郵便をよく利用すると言ってましたね。それなのにその手紙にはその一文は印されていないとなると…」


兄貴「これは偽造された手紙、という可能性があります」


ヤクザ2「流石は兄貴ですね!!。そんな少ない情報からその手紙が偽造されたものって見抜くなんて!!」


兄貴「いえいえ、この情報だけでは黒崎サナエがただ単にその一文を書き忘れたという可能性があります。それよりももっと確かな情報があります」


ヤクザ2「確かな情報?」


兄貴「この手紙の差出人の住所を見れば、この手紙がカナダから送られて来たことがわかります」


ヤクザ2「そうですね…それがどうかしましたか?」


兄貴「実は今カナダでは3週間前から郵便局は大規模なストライキを起こしているんです」


ヤクザ2「それってつまり…」


兄貴「この3週間の間、カナダからの郵便物は全てストップしてるはずなんです」


ヤクザ2「この手紙が差し出し日付けは1週間前…つまり…」


兄貴「少なくともこの手紙はカナダから送られたものでは無い、となりますね」


ヤクザ2「兄貴すげえええええ!!!」


兄貴「あまり大声を出さないでください、うるさいです」


ヤクザ2「いや、あまりに兄貴が凄くて…。このギャグ小説で一人だけミステリーやってる兄貴が凄くて…」


兄貴「そういう発言も控えなさい。そういうわけで、その手紙を詳しく調べるように組に伝えておいてください」


ヤクザ2「え?本当にこの手紙を調べるんですか?。確かにこの手紙を調べれば黒崎サナエの手がかりは見つかるでしょうけど…」


タケシが探してる黒崎サナエと兄貴達が探している鬼塚ケイは今の所なんの因果関係も見られないため、黒崎サナエの手がかりは調べても鬼塚ケイの情報は出てこないはずなのに、兄貴が手紙を調べるように言ったことに疑問を覚えたヤクザ2はそんなことを口にした。


兄貴「いま鬼塚ケイに関する情報はなにもないですからね…。暇つぶしに黒崎サナエについて調べてみようと思いまして」


ヤクザ2「暇つぶしですか…」


兄貴「それに黒崎サナエの情報が掴めれば、よりあのバカを利用しやすくなりますし、無駄足ということはありません」


ヤクザ2「あのバカを利用するためにわざわざ調べるのですか?」


兄貴「確かに彼はただのまっすぐで無能なバカ。ですが私の経験上、幸運の女神様はああいうバカがタイプなんですよね」


兄貴はそう言ってニッコリと笑っていた。


兄貴「そしてなにより、この手紙に押された郵便局のハンコの完成度、家族にすら違和感を感じさせない内容と筆跡…とても素人の腕とは思えません」


ヤクザ2「それはつまり?」


兄貴「もしかしたら、背景になにか巨悪が潜んでいるのかもしれませんね。彼の言う通り悪の組織のような…。そう思うと興味が湧きませんか?」


ヤクザ2「確かに、興味が出てきましたね」


兄貴「調べる理由なんてそれで十分ですよ。どうせ暇つぶしなんですから…」


こうして、タケシと兄貴は事件に首を突っ込んで行くこととなる。


果たして本当に幸運の女神はタケシに微笑むのか?


それともただのバカなのか?。


愛する人のためなら、例えバカでも立ち上がれ!!


頑張れ、タケシ!負けるな、タケシ!


例え彼女が、ビッチでも!!。


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