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【最初の悪魔】の討伐に、無事成功した。
ファンファーレの音が連続で5回、頭の中で響く。
これでレベル25か。
「二人とも、お疲れ様です!」
「みんな、なかなか上手かったよ。おつおつ~」
「おう、お疲れ」
とはいえ、この石で悪魔をひるませることができたから容易に勝てた訳で……持ってなかったら危なかったかもな。
つーか、ほかのパーティは無事だろうか。豚丸さんたちにもこの石、渡しとけばよかったな。
漆黒の闇が晴れ、祭壇が再び姿を現す。
「ま、あとはNPCに話しかければこのクエストは完了だな。行こう」
道が枝分かれしていたあの場所で、偶然複数の他パーティに遭遇した。
黄金騎士団、銀色同盟の人たち。
……あれ、豚丸さんたち……ミヤと、クウと、ハヤブサは。
まさか……!
そんな訳……ないよな。
「もちろん、俺たちも生きてるっスよ」
「うあ!?」
背後からいきなり声をかけられた。ハヤブサだ。
「一足先に、NPCに報告を終えたぜ。んで、お前らを迎えに来たんだよ」
と言うのは豚丸さん。ミヤもクウも、全員無事なようだ。
ふう、良かった。
そのとき、またもやビービーと警告音が響くのだった。
「またか。この音、トラウマになりそうなんだが……」
「来たわね。今度はいったい何かしら……?」
「良い知らせだと嬉しいけどね」
『プレイヤーの皆さん、こんにちは。ヒーローオンライン管理局です』
あの不気味な声の方じゃないのか。
……つーか、管理局って? 運営じゃないのか?
『先ほど、闇の島においてクエストの成功が確認されました』
ああ、アレか。みんなで1万回ボスを倒すっていう。
『それによって、新たに進入可能となったエリアがございます。それでは、皆さまのご武運をお祈りしております』
新たに進入可能……常闇の塔か!?
などという期待は、すぐに裏切られてしまった。
……まあ、当然といえば当然か。クエストをひとつクリアしただけで最終ボスがいる塔に入れるようになるなんて、虫が良すぎる。
それに、今まで侵入不可だった島は、闇の島を含め6つ存在していた。
普通に考えて、全部の島を攻略しなければ常闇の塔は出現しないんだろうな……。
「それじゃ、ひとまず解散っスね。何か情報が入ったら、また連絡するっス。カナリアさんと銀河さん、よかったらフレンド登録しましょうっス」
「ええ」
「よろしくー」
うお、超有名ギルドのギルマス、サブマスとフレンド登録か。すげえな。
まあ、フレンド登録した相手じゃないと遠距離会話できないし、当然か。
そういう俺も、バニラたちとフレンド登録したしな。
そんなこんなで、俺たちは港町の船着場で解散することにした。
疲労でため息を漏らす、俺と豚丸さんとミヤちゃん。クウちゃんは全然表情変えてないな。
いつだって余裕のある大人なアナタに私、抱かれたい。
「お前ら、お疲れさん。無事に生き残れてよかったな。そんじゃ、ギルドハウスで休まねぇか?」
「……私たちのギルドハウスがあるのは、魔法都市。また半日以上かけて行くの?高位転移アイテムだって、沢山あるわけじゃないし」
「あー、そうか。使うのもったいねえな。仕方ない、港町の宿屋で休むか」
高位転移アイテムなら俺、100個以上持ってるが……まあ、いいか。
「私、もっと良い装備を調達してくるわ。消費系アイテムも補充したいし」
「そうだな。各自準備をして、終わったら宿屋に来てくれや」
ひらひらと手を振りながら、豚丸さんが立ち去る、続いて、ミヤちゃんとクウちゃんも。
俺も……装備をなんとかするか。低レベルでも装備できるボロボロマントに、シンプルな皮の服と靴だもんな。
装備は一般的に、武器屋や防具屋でNPCが販売してるものよりも、プレイヤーが作ったものの方が強くて頑丈だ。
とはいえ、この状況で【商売】スキルをとってのん気に売ってる奴なんかそうそういなさそうだ。
全員がレベル1からのスタートとはいえ、所持していたゴールドやアイテムはそのままなのだから。
低レベルの間の装備なんて、みんな自力で作って装備してそうだ。
俺も自分で作ろうか。しかし、素材アイテムなんて手に入れたらすぐ売ってしまうので、倉庫にほとんどない。
生産なんてほとんど経験ないしな……。うまくやれる自信がない。ゴールドはそれなりに持ってるし、多少高くてもいいから誰か売ってくれないだろうか。
一応、商店街を見て回る。【商売】スキルを持っているプレイヤーたちが、自分の店を構えて装備やら消費アイテムやら、素材やらを売っていた。
ただし、その数は少ない。ざっと見た感じ、100人程度だろうか。商売敵が少ないせいか、みんなやたらと高値だ。
多少高くてもいいと言ったが……こうあからさまだと買いたくなくなるな。
それでも、買っているプレイヤーを多く見かける。みんなゴールドより、時間のほうが惜しいだろうからな……。
「あーもういいや。この店の主が美人だったら、いくらであろうとここで買おう」
俺はそっと入店する。「いらっしゃいませ」と澄んだ女性の声。お、これは期待できるぞ。