自己紹介、考えてなかった……。
どこかでみたことがあるような二人が出現。
どこで見たんでしたっけ?
七月八日月曜日。
せっかく、と言うわけではないが、家にいたら延々と母さんにいじられそうだし、姉さんも仕事休むとか言い出しそうだったので、高校に逃げることに。行く、では無く、逃げる、ということがポイント。
どうしても一緒に行くと言い張る母さんと姉さんを言いくるめ、一人で剣崎高校に登校する事に。
姉さんは仕事に。母さんは家でなんかしてる。
カメラはとりあげたから大丈夫。だい…じょうぶ。だい……丈夫なのかな?
登校初日なのだ。
頭の隅に追いやることにする。(追い出す事はできなかった。クッ。しつこい奴らめ…!)
「お、おはようございまーす」
となりの家の、明野さんに挨拶。
確か黒羽さんと行ったような……。
あまりお隣さんと話す機会は無いので、名前はうろ覚え…。
「あ、おはようございます。えっと、彦根さんの……娘さん?」
「あ、そうです、始めまして。最近日本に帰ってきてこっちに住む事になりまして……」
「ああ、何? 外国に住んでたの?」
「はい、僕一人だけちょっと向こうに用事残してて、残ってたんです」
これは、昨日家族会議の結果考え出された虚言である。
微妙に嘘ではないので、信憑性がかなりある、という結論に。
「ああ、そう。その制服は、剣崎高校だよな? 俺も一年なんだ。よろしく」
話の流れのまま、一緒に学校に行くことになりました。
「お? なんだ、黒羽? その娘は誰だ? ワイフ?」
「違えよ、馬鹿!」
「うん、まあいいや。黒羽、お前ちょっとこっち来い。来月発売の『Treasure online』についての新情報だ」
「なに!? ……ごめん、彦根。ちょっと用事が出来たから、またな」
そのまま、明野君は馬鹿と呼ばれた男について言った。
……トレジャーオンラインって何?
それから五分ほど歩いた時だろうか(家から高校まで15分ほど)。
背筋に、ゾワリ、と悪寒が走る。
とっさに体が勝手に動き、そこから飛びのいた。
「ッチ。避けないで下さいよ!」
「何!? どういう状況? なんで朝からお嬢様っぽいのに襲われてるの僕!?」
見た感じ、お嬢様に僕は攻撃された。
あれは――――念動力!?
お嬢様は、そこらへんにあるものを僕に向かって投げつけてくる。
触らずに。
そしてよく見ると、瞳が青い。
「君も当選者か!?」
「そうです!」
「だとしたら、僕も彦星側だから! 攻撃をやめて!」
「ふざけないで下さい。瞳が赤いじゃないですか。あと、髪も。」
はぃぃ?
自分を見る。
本当だ、髪が赤、と言うよりは、ピンク? 薄桃色みたいに変色してる。
スクールバッグから鏡を取り出し(母さんに無理やり持たされた)、瞳の色も確認。
確かに、瞳も赤かった。赤、と言うよりは、髪と同じ感じの桃色。かろうじて赤と言えるかな、ってとこ。
「いや、僕は本当に彦星側の当選者だ!」
「いいえ、彦星側の当選者は、瞳は青いと教わりました! あなたはどちらかと言えば赤です!」
「信じてくれ、僕は本当に彦星側なんだ!」
「戯言はもういいです。死にやがれ、です」
ぅぉわ!
道端に不法駐車されてあった車が僕に向かって突っ込んでくる。
瞬間。
紅蓮の炎が車を包み、車を消した。
爆発すらせずに、跡形も無く。
そして、この炎を発生させたのが、僕だと気付く。
『――――桜ちゃんの能力は、地球人が言う所謂発火能力だよ。炎を自在に生み出し、操る事ができる。大丈夫、この火は、君は、燃やさないから―――』
と、彦星が言っていた事を思い出す。
そうか、コレが僕の能力なのか。ということは、依然燃え盛る炎も僕の意思で消せるんだな?
よし、消えろ。
そう念じると、火が消える。
ワー凄く便利。(棒読み)
それと同時に、髪の色も元に戻った。恐らく、瞳も元に(淡い青)戻っていることだと思う。
「あれ? 本当に青い目です? ってことは、すいません、間違えました。私は彦星側の当選者ですが、あなたもそのようです。ごめんなさい、です」
謝るなり、彼女は走り去ってしまった。
うん、彦星に今度会ったら文句言おう。
『――――なんだよー、そんなんあったほうが「ぽい」だろー? 魔法少女「ぽい」だろー?』
彦星が、オタク趣味であったことも露見した。
☆☆☆
学校に着いた。
「ここがあなたの教室です。それでは、私はこれにて」
校長先生だと自己紹介した男の先生に連れられて、僕は教室に来た。
思えば、日本の学校に通うのは(大学を除き)初めてなので、ちょっとドキドキする。
今更すぎる気がしなくも無いが。
「桜ちゃん、入っておいでー」
なんでだろう、今僕はこの教室からさっき車をぶつけられそうになった時より恐怖を感じる。
まるで、本能がこの教室を、ひいては担任の先生を拒んでいるこのようだ……!
「おーい、桜ちゃん?」
ガロリ。
ドアが開く。
「ほら、こっちへおいで? 今日からあなたの担任になった、彦根紅葉よ、よろしく」
逃げ帰りたくなった。(しかしまわりこまれてしまった!)
やっぱり姉さんだったか……。
声からして分かっていたさ。
はぁ。
教室に入る。
すると、なぜか一切の音がしなくなった。
普通、女子が転校してきたら逆の反応をするんじゃないだろうか、と半ば自棄になった脳内で思った。
そして、
「ほら、私の妹に何を見惚れてるの、しっかりしなさい。 桜ちゃんが困ってるでしょう」
え? 妹?
と、だれかがつぶやくのを皮切りに、皆が叫びだした。
「うおおおぉぉぉぉぉお! 可愛ええええぇぇぇぇぇぇえ!」
「一目ぼれしました! 僕と付き合ってください!」(抜け駆けは許さん、と、他の男子にボこられた)
「きゃああぁぁぁあ! あたしの妹になってぇぇぇえ!」(女子の人です)
「hぢyrんfcそp@@@@@@@!」(保険の先生に連行された)
「うるさぁぁぁぁぁぁい!」(姉さん)
自分で見惚れるな、とか言っておいて、そんな殺生な。
ん? 見惚れる? 誰に? 僕に? 困った……。そんなに見た目が良いってか!? 褒められても嬉しくなんかないんだからねッ!
シン、と静まり返った教室を見回してから、姉さんが言う。
「はい、今日からみんなのお友達になります、彦根桜ちゃんです。私の自慢の妹です。可愛がってあげてください。なお、調子に乗った輩は始末します。はい、桜ちゃん、自己紹介してね?」
うお、殺気が半端無い。
って、え? 自己紹介?
やばい、なにも考えてなかった……。
何の心構えもしていなかった僕に、朝から合計二度目のピンチ。
うわあぁぁぁぁん、急に波乱万丈の人生になっちゃったよう…!
まあ、今更な気がしないでもないが。
はぁ。
感想、誤字脱字、欠点、変な言い回し等、ありましたら書き込んでください。
よろしくお願いします。




