彦星と織姫の事情
えっと、なんか今回R15を保険としてかけておいて良かった気がします。
叫んだ後、まず姉が起きてきた。そして、父、母の順に起きてきて、早速家族会議。
「で、どちら様?」姉
「僕だよ! 桜だよ!」
「いやいやいや、桜はここまで可愛くないし。そもそも女じゃないし」姉
「そうだよね! でも僕だから!」
「証拠は?」姉
「ないよ、残念なことに! でも、僕だから」
「証拠を取るために質問します。ハイ質問① あなたのお名前は?」姉
「彦根桜」
「質問②一番怖い物は?」姉
「女」
「桜だッ!」
それで分かるのってどうなんだろうー?
まあ事実だけど、事実だからこそ困る。今の僕は、見た目女なのだ。
体が男か女かは確認してない。怖いし。
もし、僕が見た目だけでなく身体的特徴まで女だったらどうする。
自殺したくなる。
ちなみに、この姉の名前は彦根紅葉。
明るく染めたブラウンの髪に、バカみたいにデカイ胸。しかしそれは、170という高身長もあり、とてもバランスがよく整って見える。
しかも大食漢。アレだけ食べてどうやってこの美しすぎるプロポーションを保っているんだろう。と毎回思う。
「で、その格好どうしたの? 女装? 家の弟が実は女装癖でした?」
「違うよ! 朝起きたら勝手にこうなってたんだ」
「ふぅん?」
と、
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「速達でーす!」
父さんが、母さんをチラッと見て出て行った。
母さんは、何を考えているのか、部屋を出て、二階にあがり、箱を持って帰ってきた。
父さんも、箱を持って帰ってくる。
「お前宛だ、桜」
差出人は……? 彦星? 住所はアルタイル??
「開けてみたらどうだい、桜。今このタイミングで来るという事は、桜の今の状況と何か関係があるのかもしれないし、無ければ桜はただの女装癖だ」
うおわ、究極の二者択一。
頼むぞ彦星ー、と、祈りながら箱の包装を解く。
「なんだこれ、ドラ焼き?」
中から出てきたのは、ドラ焼きみたいな形をした、黒い円盤状の何かだった。
「なにこれ? 桜、心当たりは?」
ないない、と首を横に振る。
と。
世界の動きが止まった。
僕以外の全てがストップしている。
ドラ焼きの上部が光り、ホログラムみたいなのが現れる。
『やあ、彦根桜くん。いや、桜ちゃん』
中から現れたのは、和装の少年だった。
そして、その小さな口から(実際は何歳か知らないが)見た目の歳相応の声がする。
「誰が桜ちゃんだよ!?」
『君だよ、桜ちゃん。……そうだね、まずは自己紹介をしようか。ボクの名前は彦星。ほら、七夕の時のあれだよ。で、今更だけど、これは君が書いたもので合ってるね?』
そういって、懐から出したのは、古ぼけた短冊だった。
「これは……?」
『君が16年前に書いたもののはずだよ? 違う?』
そこで、思い出した。
16年前、四才のときに書いたものだ。
当時、僕は確か、こう書いたハズだ。
「女の子になりたい」
『そうだよ、君の願いだ。まずは当選おめでとう。君は七夕のある文化圏の人類の内、本当に願い事が叶う五人に選ばれたんだ」
「ふざけるな、16年立って今更、こんな願い事は無効だ! 僕を元に戻せ!」
『願い事が十六年越しなのはね、ボクと地球の距離が十六光年だからだよ。 あと、桜ちゃんを桜君に戻すのは無理。人間の願いは一人に一つしか叶えられない』
「じゃあ、僕は今女なのか? 体も全部!?」
『そうだよー。それで、君に一つお願いがあるんだよねー。もちろん拒否権はナシ』
「それはお願いではなく脅迫だと思うんだけど、違う?」
『その通りだよー? あはは☆』
「で、具体的には何すればいいのさ?」
『お? 意外と飲み込み早い? 関心関心』
「話を聞くだけだよ。言うなら早く言って」
『了解☆ まずね、―――――――――
――――ボクはね、生まれてから一億年、暗い宇宙で、一人ぼっちだったんだ。一年に一度、織姫と会えるんだけど、年に一回だからね、退屈なんだ。でさ、最近面白い遊びを思いついたんだ。ボクと織姫で、地球の人間の願いを叶えて、その代償に、戦ってもらおう、とね。で、君は、ボク側の当選者だから。織姫側の当選者と戦って、勝って。――――
―――――勝ったら、もう一つお願い事を叶えてあげるよ。だからさ、絶対に織姫側に負けないで? ボクはね、賭けをしてるんだ。もし負けたら、次あったときSMプレイでずっとMなんだ。ボクは、一人の間ずっと織姫の鳴き声を思い出して一人を耐えるんだから、これは絶対に負けられないんだ。――――
――――でも、何もナシで戦えって言われても無理でしょ? 君は非力な女の子(笑)なんだから。だから、織姫との協定で、10の異能力を考え、一人に一つ与える事にしたんだ。君の能力はー、何が良いだろうね? うん、これで良いや――――
――――桜ちゃんの能力は、地球人が言う所謂発火能力だよ。炎を自在に生み出し、操る事ができる。大丈夫、この火は、君は、燃やさないから――――』
ここまで言うと、彦星は消えた。
そして、時が動き出した。
「あれ、桜、ドラ焼きは?」
僕は、家族に、16年前の願いが叶った事だけを、話した。
超能力持ちになって、更に戦う事になったなんていったら、皆が心配する為である。
「そういえば、桜の目の色が変わってる」
「え? 本当? 何色?」
「淡い青。作り物みたい」
消える直前くらいに彦星がこういったのを思い出した。
『それと、目が青いのがボク側、赤いのが織姫側だからね?間違って同士討ちしないように』
それでか。
「でも、私にもう一人妹が出来たのね? 紅葉がこんなにでっかくなっちゃったからもう可愛い服とか着せたりして愛でられないとか思ったけど、桜がいるから大丈夫なのね!?」
ずっとだんまりを決めこんでいた母さんが復活した。
「ずっと、桜が娘だと仮定して買い続けてきた服があるの! さあ、桜の部屋に行きましょう!」
「なんで僕の部屋!?」
僕の部屋まで、拉致連行された。
☆☆☆
「なんで、僕のクローゼットの中身が全部女物になってるの!?」
「さっき、お母さん上に上がったじゃない? その時に桜の服を全部入れ換えておいたの。…あ、これなんかいいんじゃないかしら?」
「いや、それは女物じゃないか、僕は男だ……あ」
「いいえ、桜は女の子なのよ! だからコレ! このワンピースに、コレとコレ。さあ、早く着替えてちょうだい!」
「それよりまず、僕の服はどうしたの?」
「それはね、そこでキャンプファイヤー中よ!」
退路を断たれた!
服はとりあえず受け取り、部屋から出ようとしない母さんを睨みながら、言う。
「どうして出て行かないの!?」
「なにって、そんなの、桜を視姦するために決まってるじゃない」
「出てけ!」
母さんを部屋から追い出した。
ドアの鍵をかける。
そこで、自分がさっき母さんから何を渡されたかを確認した。
真っ白なワンピースに、布面積が少ないパンツに、パンツと同色の白いブラ。
………コレを着ろと?
いきなり難易度が高いのではないでしょうか。
なんでこうなった?
七夕の早朝、頭を抱えながら僕は思った。
☆☆☆
いやいやながらパンツに足を通し、ブラもつけ、ワンピースを着た。
コレを着なければ、ほかに着る服は無いのだ。
いや、女物の服なら大量にクローゼットにあるけど。
反射的に泣きたくなったが、なんとか我慢した。
自室の鍵を開け、外に出る。
と、待ち構えていた母さんに捕まるかと思いきや、母さんは僕の部屋に入っていった。
何してるんだろう? と完全に拍子抜けした僕は、たった今出たばかりの自室を覗いた。
母さんが、僕の男だった時に来ていた衣類をファイヤーしていた。
ギャアァァァァァァア!
なんて用意周到なんだ!
そして母さんは、机の上にあったビデオカメラを取ると、僕の部屋から出てきた。
「あら、桜、似合うわ! とてもよく似合う! 可愛い!」
着替え終わったのー? と、階下から二体目のモンスターも上がってくる。
「うおっ! 本当にコレ桜? 目! 潤んでる! こんな可愛い生物が弟、あ、いや、妹でいいの? バチが当たらない?」
気づけば目が潤んでいた。
さっきやっぱ我慢できてなかったか。
しかし、いくらなんでも褒めすぎなんじゃないだろうか?
羞恥で耳まで赤くする……前に母さんからビデオカメラを取り上げる。
「ああっ! データは消さないで!」
「消すよ! むしろカメラごと消すよ! 今後こんな事がないように!」
流石に窓から投げ捨てるのもアレなので、データの消去だけにとどめておいた。
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