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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
エンディング
65/68

自身最低の策

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


俺はここに来るまでに色々と犠牲……というには相応しくないが、本当色々なものを切り捨ててきた。

まず最初に、自分の家族。これは自ら切り捨てたわけじゃなくて他人にぶっ壊された。

次に希望的観測。親が目の前で殺され、姉がブチ壊れ、自分が独りになってしまった瞬間からそんなものは切り捨てた。

自らの良心。通常の倫理観。赤の他人に関する罪悪感。

色々な物を切り捨ててきた……と思う。

それだけ切り捨ててきたんなら千秋もその仲間に入れてやればいい、と心のどこかで囁く自分もいたが、そんなのを無視してまで千秋を助けに来た。

さっきはビルの前で自分の成長していた姉と対峙し、少しばかりこんな感傷に浸りたくなる気分になった。

それでも、自分が切り捨てた者が敵に廻っても千秋を助けたいと思っていた。

思っていたんだが…………。

「ごめん……ごめん…………助けて、一輝……」

なんだか着いた瞬間にこんな事を言いながら泣き崩れていた千秋の姿を見ると……どうもその、選択ミスをしてしまった気分になっちゃった。

何だろうか、この気持ちは?

いやそもそも冷静に冷徹に冷淡に考えてみれば、俺って千秋をそこまで必死になって助けなくてもいい気がしてきた。

だって、勝手に意味分からない事言って俺に向かって銃向けてその上撃って、何があったか知らんが助けてなんてホザきやがる。

助けなくてよくね? っていうか興が醒めた。

だから。

「 い や だっ!」

窓ガラスを割りながら、無理矢理フロアに侵入した俺は、千秋に向かってそう宣言する。

飛散したガラスには何かの映像らしきものが映っているが、それが一体何なのかは分からない。

ガラスの欠片をパズルのピースのように繋ぎ合わせれば分かるかもしれないが、わざわざそんな面倒なことはしたくない。

フロアにいた二人は突然大胆に現れた俺を呆然と見ていたが、そのうち千秋が、

「…………貞子だぁ!?」

「違うわっ!」

訳の分からん変な事を言いだしたので即座に頭を叩いてやった。

「えっ、でも画面から出てきたから……やっぱり貞子じゃんっ!!」

「一体お前が何を見ていたかは知らないが、俺は井戸の底からもテレビの画面からも出てきてねぇ」

「でも出てきてるじゃん!」

「だから出てきてねぇ!!」

もう一発、バカの頭を叩いた後にフロアに居る他の人間に目をやる。

……物覚えは悪い方だし、昔のことなんでまず身長が伸びてあの頃とは目線が違う。それにあの時は暗かった。

が、直観的に分かった。

「お前が主催者だな?」

「そうだが?」

「…………いやぁー、お前には初めて会った気がしないわ」

「こっちもだ。君のような蛆虫うじむしを昔どこかで見た事がある気がする」

「蛆虫とは酷いな。せめて一人のバカに未練があってここまで追いかけてきた、バカのストーカーくらいにはしてくれないか?」

「面白い事を言う。しかしまあ……お前は何故、ここにいる?」

「あぁ?」

「残念ながらこのコードは悲劇を欲する代わりに願いは必ず叶える。それも悲劇は後払い……つまり願いから先に叶える。なのに何故、お前がここにいる?」

「はぁ? 意味分からん。何で俺の存在が否定されなきゃいけないんだよ」

…………おおよそ、検討はついた。予測だが。

仮定として、もし千秋が『一輝を幸せにして』なんて風なバカなことをわざわざ願ったんなら、俺は本来ここにはいないはずである。

なんせ俺を幸せにするってことは、過去改変もどきをやらなければいけない。

つまりは俺は千秋や親父、それどころかこの男にも誰にも一度も会わずに人生を過ごしているはずである。

コードも使えない、ただの一般学生に成り下がる。

そんな男が、何故この場にいるかはそりゃ疑問だろう。俺だって訳分からん。

「でももし、お前のその願いを叶えるコードが『濁川一輝を幸せにする』願いを叶えたんだとしたら、まあ当然俺には効果が及ばないだろうな」

《絶対規律》枯峰を倒す策を実行する際、俺は千秋と自らのコードによって存在を否定された。

よって今ここにいる俺は、濁川一輝としての記憶や人格や意識はあるがそれ以外の何者か、という存在になってしまっているわけである。

それじゃ、コードの力は及ばない。なんせ俺は『濁川一輝』ではなく『濁川一輝っぽい人』だから。

酷似してようが、本人でなければコードの力は及ばない。

まあ、可能性としてはあと一つだけあるのだが…………奴のコードがさっきの千秋の発言を、願いを叶えてしまったというものが。

しかしまあ、それは最初に俺が嫌だとしっかり断っているから無いと思う。

それともそれが千秋にとっては悲劇なのか…………物は考えようというわけだ。

「…………ほ、本当に一輝なの?」

「次、貞子言ったらぶっ叩くから覚悟しろ」

「ごめんなさい! 叩かないで!」

頭を抱えて蹲る千秋。なんだよこれじゃ俺が虐待してるみたいじゃないか。

俺は躾け……じゃなくて教育をわざわざ施しているだけだというのに。

「謝るなら、最初から言うなよ」

「分かったから叩かないで……お願いだから」

「嫌だ。帰ったら説教だ。少しでも視線が他に行ったら一発。寝かけたら二発だ」

「ひ、酷い…………」

半分涙目になってる千秋に目を向けながら思う。覚悟を決めなければと。

分かってる。今、俺は復讐の機会を得た事を。

分かってる。今、俺は圧倒的な戦力不足だという事を。

分かってる。復讐しようが千秋を助ける事に専念しようが、コードが使えなければいけない事を。

分かってる。その為には千秋の信用を得なければいけない事を。

分かってる。千秋が俺の言葉を全て本心から信じるには、あの言葉を言うしかない事を。

分かってる。これは自分の利益のための行動だという事は。

分かってる。他人を騙すにはまず自分からだ、それが人を騙す基本。

だから機械になれ。一時的であれ冷徹に冷静に冷淡に冷血に、動作を行う機械になれ。

今から言う言葉は全部、嘘だ。悪魔的で俺史上最も最低な策を行うだけだ。

「いいか、今から言う言葉は一切何も信じるな。事実無根の大嘘だ」

「ふぇっ? あぁー、うん」

「俺はお前が大好きだ」

主人公がこんな事を言ってしまったら、俺の小説では終わるフラグ。

結局このままじゃコードの説明ができそうにないから次回の後書きとか活動報告とか後々加えます。

非常にすいませんでした。

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