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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
エンディング
62/68

敗者の嘘吐き

「なん……で?」

なんで、俺を撃たなかった?

「何で、ちぃが一輝を殺さなきゃいけないの?」

「あぁ?」

「分からなくていいよ。もう全て終わらせるから」

何言ってんだ、千秋は。

一体、何を終わらせるんだよ。何が終わるんだよ。

呆然としていた俺に誰かがメールを送ってきて、携帯が虚しく振動し続ける。

『ゲーム終了のお知らせ』

『参加者9名のうち、《異見互換》が最後の一人となってこのゲームを勝ち残りました』

『よって、勝者は《異見互換》濁川千秋様となります』

『勝者である濁川千秋様には今すぐに迎えの者を使わせます』

『これにてゲームは終了となります』

『参加者の皆様、お疲れ様でした』

携帯の振動音が夕日が差し込む廊下に響き渡るなか、千秋は一通のメールを俺に見せてきた。

「一輝、見えるよね」

それは勝者を知らせる先程のメール。おそらく生きている参加者全員に送られているであろうメール。

つまりそれは、鋼凪も虎杖などもこのメールを受けとってしまっているということ。

俺の知り合いの大半がこのメールを見てしまっているという《虚実混交》が封じられた状況だということ。

俺の負け。それは決定事項。コードでも変える事ができないこと。

「…………一つだけ訊きたい事ができた」

「何?」

「お前は勝って、何を復元するつもりだ?」

「一輝は知らなくていいよ」

「知りたい。お前がどう言おうとも」

「…………」

千秋は俺に背を向け、どこか虚しそうに言う。

「一輝、ゲーム内容のメールが送られた時に《絶対規律》って呟いたでしょ? その後、笑い出して」

「あぁ。それがどうした」

「ずっとその意味を考えてた。どういう意味があって、どこに一輝を嬉しくさせるものがあるのか」

「それで」

「ちぃはずっと《絶対規律》が結論だと思ってた。けど本当は逆で、《絶対規律》は条件の一つに過ぎなかったんでしょ?」

千秋は語る。

《絶対規律》は宣言したものを事実にするコードだ。だが、そのコードにも制限が有る。認識していない事実には能力使用ができないという制限が。

もしもそんなコードも参加者に組み込むのならば、それ以上の力、もしくはコードを持ったものが主催者なのだろう。

つまりそれは、本人が正確には知らない物であっても復元できる。

「例えば、一輝が今まで少ししか話してくれなかった一輝の本当の家族を蘇らす事ができる、とか」

「千秋……お前」

「大丈夫。こんな事を中途半端に教えて一輝を苦しめる気はないから。きっちり幸せにするから」

何言ってんだよ……こいつは。

自分が勝ったのに、なんでその賞品を自分の為に使わないんだよ。

「それじゃあね、ちぃの大切なもの(にじかわかずき)君」

そのまま千秋は夕日の光に呑みこまれるように、瞬く間に消えていた。

……………………なんだよ、この結果。

ふざけやがって…………ただでさえ俺が勝っていないってだけでふざけてるのに……。

その上、千秋にあんなことを言われた。この俺が。

今まで人として外れた行為ばかりしてきたこの俺が、何でよりにもよって千秋にそんな余計なことをされなきゃいけないんだよ。

ふざけやがって…………………なんだよ、この結果…………。



「ん? 一輝、帰ってきたのか。どうしたそんなにしょぼくれて」

俺は皆とは会わずに、家へ帰ってきた……いや逃げ込んできた。

とても人と会話する気力がない。全身が怠い。

「あぁ、さてはあのゲームで千秋に負けたか」

「…………何で、知って」

「偶然、言い当てただけだ。でもまあ俺の言った通り、いつまでも偽って保身に走ってるからそうなるんだ」

「……知ったような口を」

ソファに座り込みながら、親父の顔も見ずにそう言う。

「そりゃ俺はこれでもお前たちを小さな時から知ってるからな。奥手なお前には呆れるばかりだったが」

「…………なら聞くけどさ、千秋が大切にしてる物って何?」

「お前」

席を立ちながら、自然とそう親父は言う。

「………………意味分からねぇ」

「意味ってなぁ……お前自身と大して変わらないんじゃないか。うわっ、冷蔵庫の中身何もねぇ」

「俺と……?」

「だってお前も好きな人が大切なものだろ? なっ、買っておいたカップラーメンまでねぇ」

好きな人が、大切なもの…………という事は、千秋は俺が好きだった?

まさか、ありえない。

……という風に言うには、余計な事を聞き過ぎた。

「しかしまあ、残念だったな一輝。念願の夢は叶いそうになくて」

「別に念願でも無いし、コードがあれば叶えられることだ」

「男同士なんだから、別に偽んなくたっていいんだぜ一輝君よ。千秋自身が居なくなっちゃったら、お前の『千秋の家族を元に戻して、幸せに暮らさせる』って夢が叶わなくなっちゃったんだから」

「……まあ、それもそうだな」

いい加減、俺も嘘を吐き続けるのは疲れた。

どうせ家には俺と親父の二人しかいないし、親父はどうやら俺の本心の全部を知ってるようだし、嘘を吐き続ける必要もないか。

「本当、叶わなくなって残念だ」

「うわ本当に偽らずに自分の気持ち言ったよ、このガキ」

「あぁーあ、何でこうなっちゃったかなぁ。俺が初めから嘘吐きじゃなかったらこうならなかったのかなぁ」

「無理だろ。嘘以外にお前に何の取柄があるんだよ」

「家事全般とゴミ片付け……やっぱ後は嘘と下衆さだけかな。俺の取柄は」

「ほれみろ。お前を完全に歪ませた俺が言うんだ、間違えない。よっしゃっ有った、カップ焼きそば」

こんな卑怯な俺には大きすぎる夢だったのかな。

今まで過ぎた時間を全て無かったことにして、千秋が家族と一緒に幸せに暮らしてるような生活を過ごさせることは。

もう少しだけ俺に自己犠牲の精神があれば、千秋から家族の話を聞き出してそれで誰かに《虚実混交》で現実に変えて貰うことができたかもしれないのに。

臆病で、卑怯な俺は千秋といる生活に浸りきって甘えきって逃げていて、それでこのザマ。

まったく、どうしようもないくらいにクズだ。俺は。

「あっ、そう言えば一つだけ聞き忘れたことがあるんだけど」

「何だよ親父。俺にも半分焼きそば分けろ」

「千秋がゲームの勝者になったってことは主催者と直接会うんだろうけど、大丈夫なのか?」

「…………えっ?」

「えっ、じゃねぇーよ。主催者潰しは大事なことなんだろ? それを千秋が一人で出来るのか? それどころか、お前の予測だとお前の家族を壊した奴が主催者じゃないのか?」

あれはただの勘だ。

主催者が俺の探しているコード使用者という予測は、俺の勘にしか過ぎない……はずだ。

でももし、そうなら…………千秋の心は徹底的に壊される。

えっ、文章にそうとう矛盾が無いかって?

多分ないはずですよ。あるならどことどこが矛盾してるか持ち出してください。

後で直しますから。


……つか誰だよ。お気に入り登録数がまた増えてるじゃねぇーか。クソ。

あ、マイク切り忘れてた。

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