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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ファイナルラウンド
61/68

勝者決定

「千秋か……」

てっきり、枯峰に拘束されてるものだと思っていたが違うようだ。

「ごめん、一輝じゃないなんて言って……」

「別にいい。お蔭で助かったからな。それより覚えてたんだな、アレ」

「当たり前だよ……もしかして、わざと言ったの?」

「まあな」

俺は千秋に【信じて】やら【信じろ】やらの言葉は言わないと約束した。随分、昔に。

まあ、だからわざと言って千秋を本気で疑わせたんだけどな。

「《絶対規律》は……死んだの?」

「あぁ。敗退した」

残るは俺と千秋の二人だけ。

千秋は少し俯きながら立っていたが、何かを見つけたのかそれを取りに移動する。

「この銃……どうしたの?」

「鋼凪から借りた。まさかアイツがそんな物を持ってるとは思わなかったよ」

「梓美ちゃんの…………」

銃を手に取りながら、眺める千秋。

さっきからなんとなく語句の歯切れが悪いっていうか……。

何かを企んでる。そんな感じがする。

「……一輝はさ、何で《絶対規律》が大切な物をコードで変えなかったか分かる?」

「さあな。よく分からん」

「そっか……やっぱり」

「……さっきから、何が言いたい?」

「コードってさ、簡単に現実を変えるものばかりなんだよね。普通じゃ在り得ない……超能力や超常現象なんて言い訳をしてしまう力なんだよ」

「そんなの知ってるさ。それがどうした?」

「でもね、人には変えられたくないものが絶対にあるんだよ。性格や関係や環境や信念や思い出や」

「だから……それがどうした?」

「例え、それを変えない事によって自分が死ぬことになったとしても変えたくない何かが人にはあるんだよ。きっと一輝には分からないよね」

「当たり前だ。命が優先だろ。死んだら全ては無意味になる」

「無意味になったって良いんだよ。むしろそれに意味がなくなる時が、死ぬときなんだから」

「意味が分からん。そんな感情論みたいなもので」

「このゲームって残酷だよね。大切なものの壊し合いなんだよ? それぞれにとって大事な意味があるものを壊し合うんだよ? それは人によってはくだらない事かもしれないけど人によっては万死に値するんだよ」

「死にたい奴は死ねばいい。死にたくない奴は抗えばいい。それがこのゲームだろ? 人生ってもんだろ」

「……本当、一輝は嘘吐きで影も形もない霧みたいな人だよね。私利私欲のために動いてるように見せて、実は何の意味もなくただ流されるように動いてる。そんな人間」

「無意味で無価値な人間っていいたいのか、俺の事を?」

「別にそういうわけじゃないよ。ただ……ちぃには理解できないだけ。一輝の行動原理の中心にある秤が」

「別に俺は自分の為に動いてるだけだ」

「嘘だよ。ちぃ分かるもん。一輝は他人であれ自分自身であれ、誰にどんな損害が起こったとしても構わない。ただ何かを庇えればそれでいい。そんな風に考えてる」

「……確かに。本当に俺がそんな人間なら、俺もその行動原理は理解できない」

「一輝はそこまでして何を庇いたいの? ちぃはそれが理解できない」

「さぁ? 俺はそんな人間じゃないからな。間違ったお前の予測に正しい答えを示すことはできない」

「嘘吐き」

千秋は悲しそうな顔をしながらも、手に持っていた拳銃を俺に向けた。

俺に、拳銃を、千秋が。

「俺を殺しでもするのか?」

「最悪、そうしようかなとも思ってるよ」

その二言だけを交わし、余分な言葉は一切言わない。ただ沈黙が流れた。

正直な話をしてしまえば、俺はどちらになっても構わない。

俺を撃とうとしようとも、逃げればいいだけだ。千秋は拳銃を初めて握った初心者。

当たるわけがない。だから逃げれる時間は必ずできる。

だから千秋がどちらの気持ちであれ、構わない。

「一輝。ちぃのコードは《異見互換》。だから一輝の行動原理も一応は分かってるんだよ。それでも否定するの?」

「否定するね。俺からもお前に一つ聞きたい、どうしてそんな事を訊く?」

「…………最後に、一輝の真意ってものを聞いてみたかったんだよ」

最後? ちょっと待て、どういう事だ? どっちの意味だ?

どっちの事を指している?

「千秋お前は、何をしようとしてる?」

「一輝って絶対に鈍いタイプだから言うけど、ちぃは一輝のこと好きだったんだよ?」

「過去形とはまた、しんみりした別れを演出するような言葉を言うな。お前ってそんなに賢かったっけ?」

「途端にどうしたの一輝? 焦ってるの?」

「焦ってる? 俺が? どうして?」

「一輝の特徴を言ってあげようか。一輝はね、自分に不都合なことが起こったりさっき言った秤が悪い方に傾くと途端にお喋りになるんだよ」

「俺はいっつもお喋りだ」

「天邪鬼」

そう言った後、千秋は銃口を俺の頭に定める。本気で撃つ気だ、俺に向かって。

……それなら良い。そういう意味なら別に構わない。

まさか千秋が自殺するんじゃとも思ったが、気苦労だった。

「別に今までの言葉、すべてが戯言だったんだけどさ。一輝」

「無駄に長い戯言だな」

「最後に一つだけ質問があるんだけど」

「その答え次第では俺が撃たれちゃうのか。おそろしい質問だな」

「この後、一輝はどうやって勝つつもり?」

「お前が攻撃しないんなら、そのまま皆の所に戻って、お前の大切な物を偽装して勝つつもりだ」

「そう。なら――――」

そう言いながら銃口を下げ、


「―――さようならだね」


手に提げていたペンダントに発砲し、それが見事に命中する。

笑っちゃうくらいに見事に。偶然に。命中する。コードで歪めた俺の大切な物へと。

まあ皆様の予想通りに、千秋が勝ちましたね。実に平坦なストーリー。

大体、最初の時に大方の人が予想ついてた結果ですよね。まあ仕方ないよ。

っていう事でお気に入り登録がさらにこれで減るはず……ぐへへへ…………。

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