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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ファイナルラウンド
57/68

順序逆転

第一段階の目的は、虎杖および鳴神の敗退に関する本人の了承。

これが完了すれば参加者は俺と枯峰、そして千秋の三人だけになる。さらに簡単に言えば、俺と枯峰、その二人のうちのどちらかが勝者となる図が完成する。

千秋は説得すれば負けてくれるだろう。納得しなくても《虚実混交》で大切な物を偽装して敗退させる。

ようは第一段階完了の意味は、枯峰との直接対決の結果がゲームの結果となる図の完成を意味している。

第二段階の目的は二つ。

一つは千秋の携帯を破壊し、枯峰からの連絡を絶つこと。

条件を追加される可能性がある第三段階の下準備のようなものだ。連絡を絶ち、条件追加を封じる。

もう一つは…………枯峰を騙す下準備。枯峰に対する宣戦布告と千秋との会話。

まあ第二段階完了時点ではまだ何の意味もなさない。

第三段階に突入してからその意味を発揮する。

「つーわけで、春永のところに行く」

「なんで《完全干渉》の所にわざわざ行くの?」

「大事な切り札の様子を見るためさ」

鋼凪の問いに対し、俺はわざと伏せた言い方をする。

「大事な切り札? 《絶対規律》を倒すための?」

「あぁ。まあ実を言うと、《絶対規律》を倒すための駒はほとんど揃ってはいるが……まだ一つだけ足りない」

当然嘘で、半分真実だ。

そもそも揃えるべき駒数が少ないため、捉えようによっては全て真実だが、俺の策の要たる駒が揃ってない以上は嘘というべきだろう。

それに実際、それが揃ったところで一つだけまだ足りないものがある。

「武器だ。心臓を一瞬で破壊できるほどの……銃器や爆弾がまだない。今から仕入れることも不可能だろう。問題点はそこなんだが…………」

「銃ならわたし持ってるけど?」

「例えばエアガンでもあれば、俺のコー―――――――――えっ?」

「いや、だから銃ならわたし持ってるけど」

「エアガンか。ならそれを先に取りに行こう」

「だから、本物の回転式拳銃(リボルバー)を一丁持ってんの。弾だってあるし」

「…………えっ? 何言ってんだお前、頭大丈夫か?」

あ、いやでも。ここまで真面目な顔でこんな嘘を吐けるんなら鳴神あたりを使ってコードで現実を歪めてしまうか?

「何? どのモデルか言えば信じるの? それともここに持ってきてぶっ放せば信じる?」

「……え、何この娘、怖い」

この島国、銃刀法っていう法律あるから。戦争放棄したから。銃持つ意味ないから。

本当に、鋼凪の奴、いきなりこんな嘘吐いて頭大丈夫か―――――――――――――あ。

そう言えば、まだ俺がここに来ていない……この家がまだゴミ屋敷だった頃。

《否定定義》と《非観理論》が《完全干渉》を倒した。というか殺した。

その時の殺害方法まで千秋から報告されていないが、銃殺ということもありえないくもない。

どういう経緯で鋼凪が銃器を手に入れたかは知らないが、もしも本当に銃と弾丸があるとするならば……枯峰を殺す道具に使わない他ない。

「おい鋼凪、それマジなんだよな」

「そうだけど。でも、カスは銃なんて撃ったことないだろうから貸したところで意味ないと思うけど」

ある(,,)。親父に海外に連れ回されていた頃になんども裏の危ない人達に海に沈められかけて、そん時に覚えた。この家だってそういう危ない人達を騙したりして掠め取った金で買ったんだよ」

まあ当然、嘘である。『ある。そん時に覚えた。』の二つの言葉はあたりまえのごとく嘘である。

それ以外の言葉はご想像にお任せする。というか言ってしまえば銃をぶっ放してたのは俺じゃなくて親父だし。

「おい一輝。いくらお友達だからってお客さんの前でそういう過ぎた話をしちゃダメだろうが」

親父が俺の言葉に拍車を掛けるように続けさまにそう言った。

というかこれがわざとじゃなくて本心から言ってるから余計、性質悪いんだよな。

実際にそういう金で買っちゃってるし、親子揃って暗い海の底に沈められそうになったこともあるし。

ダメだこの親子。性質的に下衆過ぎる。

「えぇーとそれじゃ……貸す、銃?」

「あぁ。頼む」

「それで一輝先輩。大事な切り札ってなんなんですか?」

危険な話から打って変って、虎杖がそんな事を訊いて来た。

「単純だが、もっとも強力な切り札だ。とくに《絶対規律》に対しては天敵というほどに効果を発する」

「……一体何なの?」

「《禁思用語》だ」

その一言に反応した鳴神に目線を移し、頼み言をする。

「鳴神。お前は先に病院に行って、様子を確かめてきてくれないか?」

「わ、分かった」

言われた途端に、蜘蛛の子を散らすように家を出て行った鳴神。

……さて、これで《禁思用語》が現在死んでいるという事実を知ってるものはこの空間には居なくなった。俺の声が届く場所には。

つまり例えばこの空間、死者を蘇らす事ができる。

方法は簡単。たった一言「《禁思用語》はギリギリ生きていた」という一言を俺が言い二人が信じれば、世界はその通りに塗り替えられてしまう。

人の所業を越えたことを難なく執り行うことができる、神の空間。

問題はその神の代行者である人間。

理性的に塗り固められた論理ではいくらでも人は死を無視できる。

ただ現実は違う。感情的に塗り固められた倫理が先行してしまう。罪悪感、責任感、そう言ったくだらない偽善がどうして常識となって邪魔をする。

狂えばそんなものはなくなるが、ここで重要なのは、いかに平常かということだ。

冷静に冷徹に冷淡にことを言ってはいけない。そんな冷たい嘘では怪しまれる。

ほどよい具合に感情を込め、まるで本当にその通りに世界が動いているかのように思わせるかが重要だ。

自分も、他人も、世界も、全てを同時に騙す。それが《虚実混交》を扱いこなすコツ。

「そもそもだ。枯峰は何故、《禁思用語》と協力関係を結んだ?」

「それは、こっちが集団で自分独りでは勝てないと思ったからじゃ」

「《否定定義》を無効化した奴だぞ。やろうと思えば簡単に参加者全員を倒せたはずだ」

「……でも一輝先輩。《絶対規律》の規制として『使用者の認識していないもの事実には能力使用できない』ってものがあります。だからこそ協力してできるだけ情報を集めようとしたんじゃないんですか?」

「確かに枯峰は、序盤では何も動けない。情報収集に徹する他ないからな。序盤は参加しない」

「だったら」

「でも、中盤までその協力関係を引き摺る必要はない。情報すら揃えばすぐさま行動できた。《禁思用語》や《結論反転》が仕掛けたテロ、鳴神が行った誘拐。それぞれが起こる前に参加者を潰す事はできたはずだ」

「でも実際の枯峰はそんな事はせずに静観してましたね……」

「弱者なら他人が潰し合いをしているのは結構な事だが、強者にとっては時間の無駄だ。自分が手を下した方が何事も早く終わる。静観する意味なんて無いんだ」

「…………その無意味な静観をした理由が《禁思用語》?」

「あぁ。普通に考えろ。《絶対規律》は宣言をしなければいけない。《禁思用語》は言葉を封じる」

「……つまり、コードの相性が最悪ってことですか。天敵と言っても過言じゃない」

「その通り。だからこそ枯峰と協力関係を結べたんだ」

「でもどうしてその協力関係を結んだ奴らを裏切ったんだ?」

「原因は俺たちだ。鋼凪が《禁思用語》のコードを否定した時、あの時すでにコード使用者は気絶していた」

「気絶?」

「そう。どうしてだかは分からない……まあ裏切り行為があったんだろう、ともかく《禁思用語》は気絶し、コードを否定された。結果として何が起こると思う?」

「《絶対規律》を縛っていたコードの鎖が解けた、って事ですか」

「そして、あとは俺たちが知ってることが起きたってわけだ」

「でもそれだと……後々のことを考えて《禁思用語》を殺すんじゃないんですか?」

「実際、そうだったよ。俺が着いた時には《結論反転》と同じように床に倒れ込んで動かなくなった死体があった」

「……だとしたら切り札死んじゃってるじゃん」

「本来ならな。そういえば、お前らって俺のコードが何だか知ってるっけ?」

「そういえば昨日、今までのコードは嘘だってことは分かったけど、濁川先輩攫われちゃって有耶無耶になっちゃってた」

「俺のコードは《虚実混交》。自分の嘘を相手が真実だと思えば、その通りに世界を塗り替えることができるコードなんだ」

「何、そのチート性能!?」

「実際は、相手に信用されなければなんの意味もなさないコードだ。使い難くて仕方ない」

「そのコードがどうしたんですか?」

「《虚実混交》を使って……まあ言い方を変えれば鳴神を騙して、死んでいた《禁思用語》を蘇らせた」

「そんなことまで!? やっぱりチートじゃない!」

「まあ死体にこれと言った外傷がなかったし、顔色もまだ蒼白くなかったからな。気絶だって言い包めて簡単に騙せたよ」

「つまり……本来死んでいたはずの《禁思用語》は…………」

「あぁ。まだ(,,)禁思用語(,,,,)は生きている(,,,,,,)

「本当に凄いコード……」

感心したように鋼凪が呟く。

この嘘、誰が疑う? まさか自分が騙されている側だと誰が疑う?

順序が逆なだけで簡単に騙せてしまう。まるで本当に世界がそう動いているように、騙せてしまう。

実際にこの二人は《結論反転》の外傷のない死体を見ている。だからこそ気絶しているという嘘が通じると思える。

だけど本当は逆。鳴神が信じて蘇らせたのではない。二人が信じて蘇らせた。

鳴神と春永には前もって学校から《禁思用語》の死体を持ち去ってもらっている。現在、彼女の死体は春永の病院にあるはずだ。

そして動かないはずの死体が、まるでゾンビのように動き出し始める。

神に祈れば奇跡が起こるように、言葉を信じれば人すら蘇る。それがコードだ。

「鋼凪、虎杖。今からその《禁思用語》のところに行く。が、その前に寄りたい場所があるんだ」

「どこですか?」

「鋼凪の家。今すぐにでも拳銃を貸してもらいたいからな」

「分かった。それじゃ付いて来て」

その鋼凪の言葉を最後に、俺たちは家を出た。

長い。無駄に長い。クソ長い。

主人公の嘘が長ったらしくて嫌だ。会話文だけってのも案外疲れる。

そもそも、こんな嘘で騙せる人間いるのか? 誰も信じないだろこんなもの。

…………おっと、口が滑った。

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