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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ファイナルラウンド
56/68

無規制通話

「鳴神、ちょっといいか?」

「ん? 何?」

そのまま鳴神を廊下に呼び出した俺は、声を小さくしながらしおりを見せる。

「これ、なんだか分かるか?」

「ただのしおりじゃ…………もしかして《非観理論》の?」

「あぁ。このしおり(,,,,,)()非観理論(,,,,)の大切な物(,,,,,)()。本人には壊す許可を貰ってある」

当然、嘘だ。このしおりは鋼凪に俺がやったただのしおりで虎杖の人生上、一度たりとも関わったことのない物だ。

しかしそれを捻じ曲げ、真実にしてしまう力を俺はもっている。相手に信じて貰わなければ効果を発揮しないが。

まあそれでも、最初から鳴神の鈍い勘が間違った正解を導きだしてくれて助かった。

信じさせる為に考えた適当な理由も言わなくてすむ。シンプルで楽だ。

これで第一段階クリア。《絶対規律》が出した条件の一つをいつでも実行できる。

「それで鳴神。俺はこれを壊すと同時にお前の大切なあの写真も破き去ろうと思ってる。構わないか?」

「…………わざわざ許可を取らなくたって勝手にすればいい。獲られた時からもう無い物だと思ってるから」

「そうか……ごめんな、一時的であれ協力してもらったのに」

「……なんかお前、不気味。許可貰おうとしたり謝ったり。あの外道っぷりはどうした?」

「道化になるにも仮面やら化粧やらの準備があるだろ? それと同じでいつもの性格を今は一時封印中なんだ」

「………? 意味分からん」

「まあ、別に分かられたくて言ったわけじゃないしな。用件はそれだけだ。引き続き親父殿と愉快にお喋りしててくれ」

そう言って、鳴神と別れ……と言っても同じリビングでちょっと離れるだけなんだが……虎杖たちの所へと戻る。

「紙に書いておいてくれたか?」

「名前と過去の経歴を簡単にまとめたもの、それと一応大切な物までは書いておきましたよ」

そう言って虎杖は一枚の紙を渡してくる。紙にはびっしりと文字があり、軽く目を通しておく。

…………第二段階の下準備は完了。あとは仕掛けて、第三段階へと移行するだけだ。

「そんじゃまあ、敵さんに正式にご挨拶をしますか」

「「…………えっ?」」

鋼凪と虎杖が二人そろって聞き返してくる。こいつら耳が悪いのか?

「だから、敵ともう一度電話する」

「何考えてるの!? バカなの!?」

「条件を呑むとか宣告して騙すんですか?」

「あぁ、まあそんな感じ」

冷静に対応した虎杖だけに言葉を返し、携帯を開く。

「っていうか、そもそもどうやって連絡を取るの?」

「相手と同じ方法。相手が千秋の電話からこっちに掛けてきたんだから、今度はそれの逆をやるだけの話」

鋼凪の疑問に答えながら、携帯のキーを押し、千秋の携帯に電話をかける。

正直言って、相手がわざわざ出るかどうか分からない。まあ出るんだろうけど。

狡猾な人間であれ、バカであれ、こちらが連絡を取ろうとして拒否するわけが無い。

この前の電話だって、検討してみると一応は言っておいたからその返答だと思って出る可能性が高い。

問題は、千秋の携帯の着信に気付くかどうかという初歩的なこと。

たまたま居なくて、千秋が出ようものなら…………まあそれでも計画は成立する。

何回かのコールの後、応答があった。

『《虚実混交》。検討した結果はどうだった?』

男の声。《絶対規律》の声。それが携帯のスピーカーから聞こえてきた。

さて、まずは交渉からか。

「結果から聞くのか? ちょっとは過程も聞いてくれよ」

『お前が悩んでいようが、即決断したかなど、興味は無い。結果はたった二つだけなのだからな』

「つまんねぇー人間。昨日は『動揺しているのか?』とか聞いてきたくせに」

『そちらこそ、つまらない話は止めろ。呑むのか蹴るのか。どちらだ?』

「呑むよ。案外俺の仲間は良い奴らばっかりだからな。快く承諾してくれた」

『そうか。まあ、どちらを先に済ませるのかはお前の自由だ。私に先に会うか―――』

「なあ《絶対規律》。ちょっとボーナスを付けないか?」

『…………どういう意味だ?』

「《干渉不可》も俺が敗退させる。その代り、千秋を電話に出させてくれないか?」

『また随分おかしな事を言うのだな。もしも人質が本当に攫われているという確信がないのなら、昨日のうちに言ってくれればいいものを』

「お前のコードがあれば、攫おうが放っておこうがたった一言で殺せるだろ? なあ枯峰(かれみね)

『……《非観理論》を使って、私の名前を調べたか』

「それだけじゃないぜ。お前……過去に心臓の移植手術を受けてるそうで、しかもその移植された心臓は恋人のものだとか」

『…………つまり、大切な物の検討もついていると』

「別にお前に条件として出されなくても、独りでお前に会う気はあるんだよ。そしてそのままお前を敗退させて俺がこのゲームの勝者となる」

『大した自信だな。独りでは何の効力も発揮しないコードというのに』

「ありゃりゃ。俺のコードのこともよくご存知でいらっしゃって、それで独りで来いって条件を付けたわけね」

別にそんな事は検討づいている。分からないのは二つ目の条件だけだ。

『お前がどんな自信を持とうとも、勝つのは私だ。そこの所をよく自覚しておけ』

「お前は負けるんだよ。そこんところ、よく自覚しておけ」

『…………先程、お前が言ったボーナス。そんな事をしなくても別に私は妹と会話させてやるぞ』

「あぁ? 随分強気だな。言っておくけどこのチャンス逃したら、俺が小細工して《干渉不可》の物を変更しちゃうかもよ?」

『別にそれでも構わないよ。こちらには変えようのない、《干渉不可》の命より大切なものを知っているからな』

「…………あのボロアパートの大家か」

別に鳴神は命懸けで大家を助けたわけじゃない。コードで自分の安全の保障はあった。

それでも火の海の中を飛び込んでまで助けにいった。多分、コードがなくても同じ行動を鳴神はしただろう。

つまりは、虎杖が《結論反転》にされた事と同じものが成立してしまっている。

「なら、《干渉不可》はこっちで勝手に敗退させておくしかないな」

『人命を守るためか?』

「自分の利益のためだよ。強力な駒に戦意喪失してもらっては困るからな」

『あぁお前、今でいうツンデレというやつか』

「うわっ気色悪。これでも俺は男の子なんでね、そういう属性とか勝手につけないでくれる?」

『それは済まなかった。それでは、お前の妹と電話を代わるとしよう』

……《干渉不可》の件はただ千秋を電話に出すことを目的としていった意味などほとんど無い言葉だ。

枯峰の言った通り、普通の誘拐犯に対する対応と同じく、確認作業の一環として千秋を電話に出せれば良い話だ。

でもわざわざ俺はボーナスなんて回りくどいやり方で交渉しようとした。

猜疑心旺盛な小賢しい人間なら疑うだろう。そこまでして千秋を電話に出したがるなんて何かおかしいと。

でも枯峰は疑わなかった。それどころか人を殺して間に合うから別にしなくていいなんて言ってきた。

多分こいつは本当に、俺が条件の一つでも破れば千秋を瞬殺するんだろう。

…………まあ、そんな事はどうでもいい。今までのは序章。序曲。

本題はこれから。一瞬で終わるかもしれないし、長く続くかもしれない。

ともかく俺はどうにかして千秋を騙さなければいけない。

『……一輝…………ごめん』

長い間を置いて、ようやく千秋が喋り始めた。

「別に。お前みたいなドジで間抜けな奴が敵に捕まるなんて、よくあることだ」

『本当に……ごめん…………ッ』

「気にするな。謝るな。そうした所で状況は変わるわけじゃない」

『…………《絶対規律》は自分が分からない事には力が使えない。《絶対規律》は一輝の声はしってるけど、容姿は知らないの。だからまだ一輝には能力が使えない』

「……それで、俺に直接会いたいわけか」

てっきりあのボロアパートの時点で見られてると思ってたが、どうやら違かったらしい。

これで相手の条件の意味のすべてが分かった。

『だから一輝はここに来ないで。ちぃは自分でどうにかするから』

「大丈夫、気にするな。お前は俺が絶対に(、、、、、)助けに行くから(、、、、、、、)

『…………えっ……今、なんて……?』

「お前は何があっても助ける。例え俺が死ぬことになっても。だからそこで待ってろ」

『…………な、何言ってるの……一輝……?』

「安心して待ってろ……なんて言えるほど俺、信用されてないと思うけど絶対に助けるから」

『……一輝、どうしちゃったの…………?』

「だからさ、信じられないかもしれないけど俺は千秋、お前を絶対に助け―――」

『誰、お前?』

「……誰って、俺は俺だよ。濁川一輝だ」

『違う。だって一輝はそんな人間じゃない。例え本心で誰かを助けたいとか思っていてもそんな事は口に出さない。そんなに何かに執着しない。自分の利益のためだけ動く。それが一輝だ。お前は違う。一輝じゃない』

「な、何言ってんだよ。千秋。確かにいつもの俺じゃないから信じられないかもしれないけど、絶対に助けるから、その言葉だけは信じて―――」

『一輝はちぃに【信じて】なんていう言葉は絶対に使わない! お前は一輝じゃない!』

「落ち着けよ! 俺は濁川一輝だ!!」

『違う! 黙れ、偽者!!』

その言葉の後、破壊音が鳴り響き、通話が強制終了させられた。

…………ったく、道化は疲れる。枯峰と対峙する前に体力切れになりそうだ。

「……な、何が会ったの?」

「最後の方、叫んでましたけど千秋先輩がどうかしたんですか?」

「別に。計画通りだよ…………はぁ」

問い掛けてくる二人に、ただそんな曖昧な言葉を返すだけしかできない。

……第二段階終了。第三段階に移行する。

物凄く読み辛いし、俺も書き辛い。

っていうかヒロインに外道という認識をされてる主人公って……。

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