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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ファイナルラウンド
55/68

下準備

「千秋先輩が攫われた!?」

救急車やパトカーなどのサイレンがうるさく鳴り響く中、鋼凪は声を荒げて聞き返してきた。

春永と鳴神にはある物を持ってすでに校舎を出てもらっている。

俺たち二人も学校を欠席、早退している身なので本来は居てはいけないため学校から離れている最中だ。

虎杖はそのまま警察の事情聴取やらを受けている。適当に嘘で誤魔化しておけとは言っておいたが、どうなるかは分からない。

そんな事よりも問題は、先程、鋼凪が言ったように千秋が攫われたという事実だ。

完全に俺の考慮が足りなかったせいだ。俺の考えなら、虎杖と千秋は学校外に出ているはずだったのに……体育館に虎杖が居た時点で、春永に頼んで探してもらっていればよかった。

いや、そもそも《非観理論》を使って全参加者のコードの詳細を知っておけば、こんな事態にはならずに済んだはずだ。

何もかも……千秋が攫われたのは俺の考えの甘さのせいだ。

「どうするの!? 《絶対規律》のコードの詳細だって分からないんだし―――」

「いや検討はついてる。あとは《非観理論》を使って確かめるだけだ。とにかく今は条件を呑まなきゃ」

学校からかなり離れてきたからか、それとも考えに没頭しているためか。サイレンの音は一切聞こえなくなっていた。

条件は三つ。そのうちの一つである虎杖の敗退は、俺としても理由がつけられて都合がいい。

だからこの条件を呑むことに対しては問題は無い。

次に、直接俺が《絶対規律》に会うという条件。これによって相手に生まれるメリットは……なんだ?

もしも俺のコードが《無影無綜》と知っているのならばこの条件を出す理由も分かる。俺が姿を消して逃げ隠れしないためのものとして理解できる。

だが、奴は俺のコードが《無影無綜》から《虚実混交》に変わったことを知っていた。

それなのに何故、直接会う必要がある? コードで俺を殺せばいいじゃないか。

理由がある。俺と一対一で対面する必要が、《絶対規律》にはある。だから千秋をわざわざ攫った。

出会ってすぐに殺しはせずに、わざわざ人質として利用した。

結局、起因はすべて俺にあるってわけか。悪い子は人気者で辛いねぇ。

「明日、俺の家に来るように虎杖に伝えといてくれ。鋼凪もちゃんと来いよ」

「分かったけど……何をするの?」

「色々だ。物壊したり、写真破いたり、オレオレ詐欺に挑戦してみたり」

「オレオレ詐欺……? おいカスちゃんと真面目に話を―――」

「あぁ、真面目だよ。俺は罵声や冗談を考える余裕がないくらいには真面目だ」

「…………分かった。一番わたしたちの中で頭がキレるのはカスゴミだけだから、信じるよ」

「別に俺は頭がキレるわけじゃない。他人より醜悪な事をするのに躊躇いが無いだけだ」



翌日。

昼過ぎに虎杖と鋼凪は、俺の家に来てくれた。

「あれって……鳴神茜だっけ?」

先に俺の家に来て、親父とコーヒーを飲みながら話している赤い瞳の少女を見て鋼凪が呟く。

「別に必要な人員ではないけど、協力関係中だから本人の了承を得てから壊したいから呼んだんだ」

もっとも玄関に入ってきた鳴神が親父を指差して『あ、バイ〇ンマンだ』とか言った時は驚いたが。

さらに言えば、むかし鳴神が《無影無綜》の本来の使用者にストーカーされていたことも驚いたし、さらにそのストーカーを親父が退治したというのがさらに驚きだった。

一体俺が知らぬ間に何をやってたんだよアンタは。というか何歳でストーカーされてんだよ鳴神は。

……そんな事は当然、どうでもいい。

今は昔話よりも重要な現在進行形の問題がある。

二人をソファに座らせて、俺はまず手先の問題から片付ける。

「まず《絶対規律》の能力だが……おそらく『自らの発言を世界の事実にする』といったものだと思うんだが、どうだ?」

「……合ってるみたいですね」

虎杖の言葉で、自分の推測の大方は肯定された。

だが、その大方も《絶対規律》が《禁思用語》に協力した背景でしかない。

今は相手の力の全てを理解する必要がある。そうでなければ仕掛け方が色々変わってきてしまう。

「虎杖、《絶対規律》は制限とかはあるのか?」

「……一度能力で指定した事実は変えられない、使用者が認識していない事実には能力使用ができない。その二つだけみたいです」

「そうか……」

……コードによる制限でもない。一体、《絶対規律》は俺に直接会って何がしたいんだ?

…………分からない事は後回し。ともかく仕掛ける罠は決まった。

まずはその下準備から始めなければ。

「《絶対規律》が千秋を解放するために出してきた条件は三つ。そのうちの一つに、虎杖。お前の敗退が含まれているんだ」

「僕の……大切な物を壊すっていうことですか?」

「《結論反転》のような派手なマネはしない。だから俺に任せてくれないか?」

「……分かりました」

「ありがとう。あ、そういえば鋼凪」

「何?」

「お前、俺がやったしおりって今持ってるか?」

「あるけど?」

「返せ」

「えっ?」

「必要なんだよ、返せ」

「まあ、別にいいけど」

そう言って鋼凪はポケットからしおりを取り出し、俺に手渡す。

このしおり、鋼凪が入院している時に千秋に無理矢理プレゼントを作れっていわれて《虚実混交》ででっち上げた物なんだよな。

「虎杖、俺は今から鳴神と話をしてくるからその間に紙に《絶対規律》の情報を書き記しておいてくれ」

「一体何の情報を?」

「とにかく書けるだけ。名前とか身長とかそういう基本的なことから過去の履歴までなんでも紙に書けるだけ書いておいてくれ」

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