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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
51/68

取り引き

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「なんだよ、これ……」

体育館に着いた僕は、目の前に晒された光景に思わずそう呟いた。

赤かった。床が、壁が、所々疎らに赤く染まっていた。人の血だ。人の。

「早かったなぁー、想定外だ」

ステージの方から聞こえる声に目を向けると、一人の男が立っていた。

聞き覚えのある声。さっきの放送の声の主。

「お前……ッ!」

怒りのあまり思わず拳を握りながら僕はそう吼えていた。

「怒るなよ。時にはこういう演出が必要だろ?」

悠々と平然と何事も無い様に、冷やかすような口調で男は僕に言う。

おかしいだろ。大勢の人が血を流してるんだぞ。何でそんな冷静でいられるんだよ。

こいつは、人を何だと思ってるんだ。

「まあ、そこまで純情な心の持ち主だとオレも心が痛んじまうよな。仕方が無い、一つ良い事を教えてやろう」

そう言って男はステージから降り、僕へと近付きながらこう語る。

「オレのコードは《結論反転》。決定した出来事を引っくり返す事ができるコードなんだ。つまりそれは死者を生き返らせることができるって意味なんだが……取り引きと行かないか?」

「取り引き……?」

「あぁ。オレのコードでここにいる全員を助ける。その代りお前はこのゲームから手を引く……ようは敗退する」

「…………あぁ、分かった」

敗退するには僕の大切な物を破壊しなければいけない。

でも僕自身にすら大切な物は分からない。だから相手にも壊せるわけがない。

大丈夫だ……話を上手く持っていけば、全て成功するはずだ。

「そうか。ならお前の命以上に大切にしてる物を――――」

「それより先ず、ここにいる人たちを助けろ」

「おいおい、そう焦るなよ。今からこのテロのタネを明かすんだから」

…………このテロのタネ?

そんなもの、僕や千秋先輩を捕まえてゲームから敗退させるために…………。

いや、それだけだったらこんな回りくどい手を使う必要は無いんじゃないか?

鋼凪を誘拐したように《干渉不可》に僕らを誘拐させればそれだけで事済んだはずだ。

わざわざ学校を占拠するような回りくどい手を使う必要はまったくない。

なら、どうしてこのテロを行った?

「まず最初に《非観理論》、お前自身が自分の敗北条件を理解していない……ようは物がどれなのかを把握していない事はこっちだって気付いてる」

…………バレてた……のに、何故取り引きなんて持ち掛けた?

初めから成立しないことを知ってたのに何で?

「だからオレたちは考えた。自身すら分かってないものをどうやって破壊するかを。物凄く悩んだぜ。なんせ《非観理論》を使われればこちらの命よりも大切な物が何なのかバレちまうからな。他の参加者のことなんて忘れて考えた。そしてある発想に辿り着いた」

「ある発想…………?」

「敗北条件だよ。命と同等に大切にしているものの破壊。それを逆に利用しようと考えた」

どういう事だ……? どう考えた? 命と同等に大切にしているものの破壊のどこに利用性がある?

「まあ人間性によるから一か八かの賭けだったんだけどな。オレたちはこう考えたんだよ。もしも自分の命の危険性を顧みずに人を助けようとしたらそれはソイツにとって大切な物になるんじゃないかって」

自分の命と他人の命を天秤にかけ、その結果、他人の命を優先した場合。それはある意味、命と同等かそれ以上に大切にしたことになるのではないか。

それがコイツの言ってる事。そして僕は人間として正しい方に、コイツの思惑通りに動いてしまった。

よりにもよって、僕は。

もしもコイツの言っている事が正しいとなれば、今現在僕の正しいものは……テロリストたちの人質の命になる。

でも……だとしたら……別に僕に取り引きを持ち掛けなくてもいいはずだ。

だってここに居る人たちがこんな状態になっている時点で僕は敗北しているはずだから。

コイツは一体、誰を殺して僕を敗退させる気だ?

「さて、そこでオレは2度ほどそのチャンスを設定したわけだが……意味分かるか?」

…………職員室と体育館。まさか。

もう僕が到着していた時には全員が死んでいた体育館は対象外にされて、職員室で助けた10人が対象とされているのなら……。

コイツのコードを使って、死んでたものを生き返らせ、助かったものを助からなかったことに……殺されたことにしてしまえば。

「やめろっ!」

最後まで、その結末まで考えるよりも先に口が動いた。

その一言は、相手に言ったのか自分に言ったのかすら分からない。

「おいおいどうした。多を救うために少を切り捨てる。常識だろ? それともお前は少を救うために多を切り捨てるのか?」

「とにかく止めろって言ってんだろ!」

「お前に考える時間をやったって、オレの結論は変わらない。諦めろよ」

その時だった。

僕に近付いて来ていた男が途中にあった死体を踏んだ。道端に落ちてるゴミを踏むように、気付かなかったように。

そして死体が悲鳴を上げた。

死体が悲鳴を上げた。それが意味する事は、今の僕に思いつくとしたらただ一つ。

まだ、ここにいる人間たちは生きているかもしれない。

まだ、全員を助けられるかもしれない。

まあ、俺がそんな主人公っぽい行動を誰かにさせるわけないですよね。

まったく虎杖君は甘いんだから。

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