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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
48/68

陽動と誘導

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「あァ! 本当、なんで学校に監視カメラの一つも置かないのかなぁ!」

応接室にて、ソファに座り足を組んでいる《禁思用語》……宇津木(うつぎ)陽菜(ひな)はそう喚きながら携帯を弄っていた。

「知るか。叫ぶな。うるさいんだよ」

それに対し、《結論反転》……衣笠(いがさ)海翔(かいと)は壁に背をあずけ顔をしかめながらそう返した。

「知るかってね……無線に確保した報告が入ってないの。これ、殺しちゃったか倒されちゃったかのどっちかなの。もしも倒されちゃった場合、もう二度と《非観理論》の姿を拝む事なんて無理。こっちの作戦大失敗になっちゃうの」

「確かもう一人コード使用者もいただろ? そいつを捕まえて人質として使えばいい。それともそいつも姿を隠せるコードなのか?」

「別にそうじゃないけど、相手と視界を共有できるコードなの。そしてここは見知った場所。身長による高低差があるとはいえ、どこにこっちの駒がいるかはバレバレなの。だから遭遇することは無いと思う」

「両方とも厄介だな。いっその事、お前のコードで使用を禁じればどうだ?」

「どう指定するんだボケぇ。このコードは使用者本人にも効果が出るんだぞ」

「ならオレが直接出るしかないか」

そう言って壁から離れ、部屋から出て行こうとする衣笠。

「あ、ちょっと! こっちのシナリオちゃんと覚えてるでしょうね!?」

「覚えてる。最後にオレが反転させればいいんだろ?」

「覚えてるんならいいんだけど……くれぐれも、《非観理論》に隙を突かれない様に」

「お前こそ。《非観理論》ばかりに目が行ってるが、もう一人のコード使用者に隙を突かれない様にな」

「大丈夫だって。《異見互換》はただの覗きのコードだから」

「どうだか」

そう言葉を残し、衣笠は応接室を後にした。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「おい、今度はこっちから銃声がしたぞ!」

テロリストの怒号が静寂しきった廊下に響く。

一応は作戦通りだ。《非観理論》で姿を隠し、その上でアサルトライフルを学校の至るところでぶっ放す。

敵を撹乱させることには成功した。そしてこのまま僕は校外へ逃げて一輝先輩たちの合流を待つだけでいい。

それにしても千秋先輩は勝手にどっか行ってしまったが、平気なんだろうか?

よくよく考えれば敵に遭遇しないことだけを考えれば千秋先輩や僕のコードは最適と言っても良い。

多分、一輝先輩が千秋先輩と一緒に脱出しろと言ったのも、昼寝とかをしていていつの間にか捕まってたなんてバカな事態を起こさない為だろう。

だから僕たちが別々に行動してもテロリストに捕まる心配は無いはずだけど……。

千秋先輩の様子がおかしかったのが気になる。

別にいきなり高笑いを上げて踊りだしたわけではない。別にいきなり容赦なく人を殺し始めたわけじゃない。

でも確実におかしかった。ほんの少しだけだけど、少し口調が変わった。たかがその程度の変化だけども僕には異常としか思えなかった。

そして一番最後の言葉。一輝先輩には言うな。そういう意味を持った言葉。

それが一番気がかりだ。それはどういう意味での言葉なんだろうか。

一輝先輩にバレると怒られるから? それとも、一輝先輩すらあの千秋先輩を知らないから?

千秋先輩は一輝先輩に何かを隠しているから?

「ちくしょう……何処に居やがる」

近くでしたテロリストの声で我に返り、また階を移動して銃声を響かせようとする。

その時、放送が入った。

『あ、あー。テステス。マイクのテスト中、マイクのテスト中』

そこからした妙に緊張感がない声は、あからさまに教職員のものでは無かった。

そもそも、わざわざ二人とテロリストしかいない校舎内に放送を掛ける必要はない。というより誰が二人のために自分の命を犠牲にする。

つまりこれは、テロリストの声。それかもう一人、言葉を封じる以外のコード使用者。

『テロリストの皆さん、および《非観理論》にお知らせします。職員室に来てください。繰り返します、職員室に来てください』

……職員室? 其処に何があるっていうんだ?

…………まさか、教師共を人質にして僕を迎え撃つ気なのか!?

『そこにオレたちが所有する人質のうちから10人を置いて行きます。助けに来たきゃ来い。自分の命が大切なら見殺しにしろ。以上、臨時放送でした』

罠だ。率直に僕はそう思った。職員室には少しだけ何度か入った事がある。

あそこは教師たちのために設置された机やら書類やら半透明の仕切りまである。冬は暖房器具もあるとかないとか。

そんな物がありふれてる場所に僕を連れて行こうとするなんて……完全に相手は何かを仕掛けてきている。

なら、見殺しにするか?

そう問われてしまえば、僕の答えは最初から一つに絞られてしまうのだった。

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