表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
43/68

炙り出し

「濁川一輝……どういうつもり…………?」

鋼凪に事情を説明している途中、婆さんを背負った《干渉不可》が話に割って入ってきた。

「どうもこうもない。当然、すべて俺の利益のためにやってるだけだ」

「段階的にやってるってわけ……火事を消したのも自分の逃げ道を確保するため……でも、なんでプールの時、子供を助けたの?」

「簡単なことだ。お前の怒りを買わないためだよ」

「あたしの怒り…………?」

「あの場で子供を殺したら、お前みたいな『良い奴』はブチ切れて直接学校まで乗り組んでくるだろ? それだと少し困るんだよ」

《干渉不可》を止める方法など人質くらいしか思いつかなかった。学校で襲撃される場合、人質になるのは学校にいる生徒や職員。

それじゃ後々、学校封鎖となり、雰囲気的に四人で集合しにくくなる。それに千秋からの信頼度がゼロになってこのゲームを孤独でやり過ごさなければいけなくなる。

それは俺にとって大きな損害だ。だからあの場で子供を助け、《干渉不可》が冷静な判断ができるようにした。

結果、人質は一人だけで済み、千秋からの信頼度を減らすこともなく、《干渉不可》を敗退させられる大きな一手を手に入れられたわけだ。

「……アンタは本当に、自分の利益でしか動かないで…………ッ!!」

怒り狂った山犬のように歯を剥き出しにして俺への嫌悪感を表情一杯に表す《干渉不可》。

しかし幸いなことにコイツは勘違いしている。

ゲームのルール上、敗者は勝ち残っている者を殺す権利がない。

だから《干渉不可》はどんなに俺の行動に憤ろうとも、殺しにかかろうとはしない。

まあ、実際はまだ俺は写真を破いてないから殺しちゃっても平気なんだけどな。

本当にこればっかりは、相手が勘違いしてくれていてよかった。

「カスのクズみたいな行動はいつものことだし、そんな怒ることでもないと思うよ」

事態を傍観していた鋼凪が、俺と《干渉不可》の間に割って入るようにして諭すようにいう。

「……貴女は、そこのゴミみたいな人間を生かしておいてもイイと思ってるんですか?」

「当然、今すぐこの場でぶち殺してただの肉塊に変えた方がいいと思ってるよ。でも、それでも一応誘拐されたわたしを助けに来たっていう恩義があるからね。ここでは見逃してあげなきゃ、いつまでもカスにグダグダ言われそうだから」

ようは『べ、別にアンタのために割って入ったわけじゃないんだからねっ! いつまでもアンタに恩があるなんて屈辱が耐えられないから、し、仕方なく助けてあげるだけなんだからねっ! ほんとっ勘違いしないでよねっ!』という風に鋼凪は言ってるわけか。

そんな現実逃避をしてなきゃ、ともてもこの二人の少女(歳下)からの罵声に耐えられそうにない。

「別に発情した犬のようにそこのゴミを襲い殺しませんから、そこを退いてください」

「そんなこと言って、もう眼が血に飢えた狼のような感じになっちゃってるよ。まったく体は素直だねぇ」

両者睨み合い。どちらとも一歩も引く気はない。

そんな緊張した空気の中、当事者の俺は一人だけのんびりした感じで考え事をしていた。

考えていることは簡単。《干渉不可》に《禁思用語》と協力しているかを問うかどうかだ。

というよりそもそも《禁思用語》の目的が半分ほどわからない。

狙いは《非観理論》である虎杖ただ一人だとして。俺をわざわざ引き離す理由がどこにある?

あの時、テロが起こる前の俺はまだ《無影無綜》だった。だからついでに潰すには少しばかり効率が悪いと考えたのかもしれない。

だけどそれでも、わざわざ協力して引き離す理由はないはずだ。

天敵となるであろう《否定定義》を誘拐させるために《干渉不可》と協力した?

それじゃ理由が不十分だ。そんな誘拐なんてテロを起こすよりも遥かに簡単なことをなんでわざわざ他人にやらせなきゃいけないんだよ。

もしかして協力関係なんか結んでいない? いや、それにしては色々と不自然だ。妙に《禁思用語》が有利になるような出来事ばかり起きている。

だとしたらやはり協力している? でもだとしたら何故、協力した?

《干渉不可》にだって自分のコードは通用しない。むしろ都合の悪い相手だ。

俺たち同士で潰し合わせた方が、一番自分に利があるだろう。…………もしかしてそれが狙いか?

鋼凪を誘拐させたのは後々俺に駒として使わすため。俺がわざわざ一人で救出に向かうのはプールの話を《干渉不可》あたりから聞いた時点で見当がついていた。

だからわざわざ誘拐させるなんて誘き出すなんて面倒な真似をして、俺と虎杖を離れさせ、虎杖は自分が、そして俺が《干渉不可》を討ち取れるような構図を作り出した?

だとしたら必ず俺たちの方に保険として誰かを回してくるはずだ。俺が必ず成功するとは限らないんだからな。

でも、それがもしも本当だとしても確かめる術は……一つだけ。

「なあ《干渉不可》。これ、なーんだ?」

「っ! それ、あたしの……なんでっ!?」

俺が問いかけながらピラピラと振る写真を見て、《干渉不可》は驚きを隠せずに叫んでしまう。

いいねぇ、そういう斬新な反応を俺はまってたよー。

こんな大きな反応をしたら、本人の口から言わずとも、自然とこれが大切な物だと……敗北条件だと気づくだろ。

そしたらコソコソ隠れて様子を見てるような卑怯な輩は、動き出すしかなくなる。

「鋼凪、ともかく否定しろ」

「何いきなり意味分かんない事して、意味分かんない事言ってるの……否定」

異能を打ち消した時になる特有の音が響く…………わけはなく。

実際に相手にコードを使われたのかどうなのかも分らないが、まあ居ようが居まいが関係なしに。

俺の本当のコードで無理にでも炙り出す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ