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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
39/68

探索

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


一輝先輩は、ただ言葉を思えなくするだけのコードだと言っていたけども、そのただが一番怖いのだ。

《無影無綜》のようにただ姿を消すだけのコードに《否定定義》は負けた。

それと同じ事が《非観理論》でも起こるかもしれない。

いや、それどころかこっちは圧倒的に不利だ。

《非観理論》のルールは二つ。全ての事象を観測することと全ての者から観測されないこと。

そして制限として、事象を観測した場合に、その事象について行動、言動などのあらゆる手段での干渉を禁じられる。

この制限のせいで、そう簡単に事象観測は出来ない。《否定定義》がいれば別だが、鋼凪は誘拐されて今すぐにこっちに来るのは不可能だ。

つまり僕は今、ただ全員から見れないだけの存在だ。

しかもただ見れないだけで、《無影無綜》とは違いそこに姿はあるのだ。

最悪なことにテロリストは銃を持っている。流れ弾などは僕に当たってしまうのだ。

ただ見えないだけの存在に対し、テロリストが銃を適当に乱射でもしたら即ゲームオーバー。

一輝先輩は事象観測について、工夫をすれば制限を受けないと言っていたが、それも確証が無いものだからあまり試せない。

その手順が失敗すれば、すぐさまに制限を受けて僕は動けなくなるかもしれないからだ。

こんな普通のテロリストに対しても負けてしまいそうな弱々しいコードなのに、さらに敵からのコードによる妨害を受けている。

全くなんなんだよ、この圧倒的な不利な状況は。

ゲームの性質上、参加者である僕が死ぬ確率は少ないだろうけど、それでも最悪、流れ弾に当たって死んでしまうことだってあるかもしれない。

コードが迂闊に使えない。本当に最悪な状況だ。

それなのに……この人は…………。

「千秋先輩、起きてください」

「……ほぇ?」

何でこのおかしな容姿の先輩は学校が危ない人達に占拠されて、もうクラスの全員が教室から逃げてるのに、机に突っ伏して寝てるんだよ……。

…………あれ? 何か違和感が…………。

「あれ……何で、虎杖君がここに…………?」

「ただいま学校がテロリストさんたちに占拠されていてピンチな状況だと思って一輝先輩に電話掛けたらコード使用者による奇襲だと言われまして『取り敢えず千秋と合流して脱出してくれ』と言われたので2年生のクラスに来たらなんか皆逃げ出してきてそれでガラガラになった教室を一応探していたら机の上で寝ていた千秋先輩を見つけたから今ココにこうしているわけです分かりましたか?」

「凄いね、虎杖君。息継ぎなしで言い切ったよ」

「そこじゃないですよ。っていうか何で先輩は悠々と昼寝なんてものしてたんですか?」

「いや、一輝がちゃんと梓美ちゃんを助けるか心配になってコードを使って覗き見してたらいつの間にか寝ちゃってた」

「はぁ……まあ気持ちは分からなくないですけど」

「だよねぇ」

そんな風に千秋先輩とくだらない雑談をしていると、先輩の携帯電話のバイブレーションが鳴った。

メールは一輝先輩からで、

『虎杖のアドを知らないからお前にメールする。相手のコードは《禁思用語》。言えなくなる方の対処法はあるが、思えなくなる方の対処法はほぼない。偶然に身を任せろ。それと時間的な関係からして他のコード使用者とも繋がり、協力している可能性がある。とりあえず学校から脱出して、距離を取れ』

といった風な今後の僕たちの行動を指示する内容だった。

にしても丁度いいタイミングだ。千秋先輩の話題が脱線しかけたところを狙って送ってきたような気すらする。

「ともかく、一輝先輩の指示に従いましょう。《■■■■》の対処法としては取り敢えず距離を取るしかないみたいですし」

「そうだね。でも《■■■■》の対処法……って、あれ? 私、何言おうとしてたんだっけ?」

…………そうだった。距離を取っている一輝先輩からしたらそれを考えるのは造作も無い。

でも距離が近い僕たちでは相手のコードの名前を知ってもそれを思うことはできない。だからそれを口にする事も、文字として書くことも出来ない。

「……ともかく、相手のコードの対処法は距離を取る事です。さっさと学校から脱出しましょう」

今の僕たちがそれをどうにか思う手段は、こうやって曖昧にすることしかない。

それでも伝えられれば問題は無いんだ。

「そうだね。ちょっと待ってて、今から盗視するから」

そう言って、千秋先輩は目を瞑ってしまった。

相手がどこに居るかが分かったとしても逃走経路を立てるとしたら地図が居るだろう。

そう思って、教室の壁に貼ってあった校舎内の地図を剥がして持ってきた。

「先輩、筆記用具借りますね」

そう言って机の端にあった筆箱から適当なシャーペンを取り出して、いつでも書き込める状態を作りだす。

……それにしても、何か違和感が残る。

ちょっとした違和感……なんかどうでも良い様な、気にしなくてもいいような、そんな細かい事。それが引っ掛かる。

…………何で、一輝先輩は普通に逃げろって言わずに脱出しろって言ったんだ?

それは、多分……相手のコードの妨害によって言えなかったからだ。

でも確か、僕の記憶が正しければ、さっき、僕は思えたはずだ。言えたはずだ。

『逃げる』その言葉を。

言葉の活用形は例外、という特殊な制限が無ければオカシイ事態だ。

何で、わざわざ封じた言葉を解放した? ……それは、教室から動かない生徒たちが邪魔だったから。

何故、生徒たちが邪魔だったんだ? ……それは……例えば何かを捜す時、人が居ると邪魔だから。

何かを捜すって、何を捜しているんだ? ……それは考えるまでもなく、僕たちだ。

ゲームの参加者である僕たちを捕える……最悪、殺すことを目的として捜しているんだ。

そしてコード使用者の仕業だと知っている僕たちは、こうやって教室に残って、逃走ルートを探している。

そもそも、コード使用者でも無い一般人なら、普通に『逃げる』という言葉が思えるようになった時点で教室を抜け出している。

もしもがら空きになった教室に生徒が残っていれば、それは、千秋先輩みたいな昼寝をしてて誰からか声を掛けられても起きなかった人物か、僕らコード使用者のどちらかだ。

もしも相手がコード使用者の顔が分からなかったら、そういった探索方法が一番効率的。

最初にテロが起こったのに教室から動こうとしない生徒たちを見せ、違和感を感じさせる。

そしてコードによる仕業であると気付いたら何らかの行動を起こすはずだ。でも……違和感を感じる一般人だっているだろうし、違和感を感じても様子見をするという選択をとるコード使用者もいるはずだ。

……いや、相手は様子見しようと思う事を封じる事もできるんだ。様子を窺うという選択肢を潰す事すらできるんだ。

違和感を感じて、これがコードによる仕業だと気付いてしまったのなら、行動を起こすしかなくなる。

そしてもしも、この僕の考えが全て正しかったとしたら。

あともう少しで、ここに銃器を持ったテロリストたちがやってきてしまう。

「……ッ!」

「……ふぇ!? 虎杖君、いきなりどうしたの!?」

いきなり腕を引っ張ってきた僕に対して、驚き問いかける千秋先輩。

でも危機を言葉にしている暇などない。早めに千秋先輩を隠さなければ。

やだ、虎杖君、大胆

……いや、ちょっとふざけただけじゃないですか。

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