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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
38/68

テロ

「………次で降りろ、か」

メールの指示に従い、電車で移動している俺は画面を見ながらぽつりと呟く。

相手も一度注意すればちゃんと出来るじゃないか。さすが鋼凪を誘拐しただけはある。

そんな事を思い、携帯をしまおうとした時にちょうど手の中で振動し始めた。

鋼凪の携帯にはまだ返信していない。誘拐犯も返信を返してきて今まで指示をしてきたのだ。誘拐犯が追加でメールをしてきたとは思えない。

それに着信したのはメールではなく電話だ。今までメールだったものをわざわざ電話での指示に変える必要性は何処にもない。まあ、誘拐犯が文面を打つのが面倒臭くなったなら別だが。

携帯に表示される番号は、登録されている3件ではない。

虎杖か……? でもどうして?

そう思いながらも一応俺は電話に出る。

「もしもし」

『もしもし一輝先輩ですか。ちょっと大変な事態が起きました』

俺の予想通り、電話を掛けてきたのは虎杖だった。

冷淡……というよりはなるべく声を抑えて、伝えられる事を簡潔に伝えようとしているように感じられる。

「……どうした?」

『いきなり放送が入って、学校がどっかの誰かに占拠されてしまいました』

「そりゃ随分、ふざけた放送だな」

『えぇ、僕も同感です。後々流れた放送に教師の悲鳴と銃声を混ぜた辺りが特に』

「……今、お前は?」

『教室です。まだ幸い、酷いセンスをしてるどっかの誰かさんたちには遭ってませんから』

「なら千秋と合流して、そこから■■■」

『えっ? 何て言ったんですか?』

「だから千秋の《異見互換》ならそのテロリストたちと視界を共有して、死角が常に分かる。だからそれをうまく利用して、連れていけるだけ連れて、■■■」

……あ、れ…………?

俺、言えてない…………言葉が?

『一輝先輩? さっきから最後の言葉が聞こえないんですけど』

虎杖の言葉で、確信する。

「……おい虎杖。ちょっとした質問だ。答えてくれ」

『いきなりどうしたんですか?』

「目の前に殺人鬼がいたとする。お前の力じゃ到底敵わない。全力疾走すれば交番に辿り着ける。こんな場合、お前ならどうする?」

『そりゃ……交番に…………』

やっぱり、そうだ。

となるともしかしたら裏で繋がっていた可能性もある。

まあ、何にしろ想定していた中で一番最低最悪の事態が起こってしまった。

「虎杖、率直に言いたいが、俺たちは今それすら出来ない状況に陥った」

『……どういう、ことですか?』

「コードだよ。《■■■■》による妨害……ってそれすら言えないのか……」

『……ともかく、コードによる妨害で言葉が言えなくなってる状況は、分かりました』

そう、虎杖の言う通り。

コード、《禁思用語》による妨害によって今俺たちは上手く言葉を言う事が出来なくなった。

まあ、意味は無いが虎杖の電話のお蔭で《禁思用語》のルールは分かった。

《禁思用語》は書いて字の如く、言葉を封じるコードだ。

多分、その影響範囲はコード使用者に近付けば近付いた分だけ強くなり、果ては封じられた言葉を言う所か思うことすら封じられる。

さっきの殺人鬼やらなんやらの質問。答えは簡単で、交番に逃げ込む、と言えば良かっただけだ。

しかし虎杖はそれを言うどころか、答えまで辿り着けなかった。非常に簡単誰でもわかってしまう様な答えなのに。

だから《禁思用語》の概要が掴めた。

妨害電波のようなそのコード、封じられる言葉の数の制限、変更の有無すら分からないためにかなり強う様に思える。

だがしかし言ってしまえば、それだけである。

言葉を封じられる。ただそれだけ。

確かに思う事すら封じられるのは強みではあるが、遠くからの射撃、人為的ではなく自然発生したちょっとした事故、そう言った事には何の対策にもならない。

まあ、この平和大国日本において遠距離射撃用の銃火器を高校生が持ち運べるわけがないんだが。

近距離で、誤って意図せずに包丁が刺さるという事態には何の対策にもならない。

それは使用者本人が一番分かってて、分かってたが上に今まで動かなかったんだろう。

まあ、その他にも《禁思用語》の対策はある。例えば。

「ともかく、今から俺がそっちに戻ったところで意味が無い。虎杖は千秋と合流してどうにか学校から脱出してくれ」

『分かりました』

こんな風に、言葉を言い換えるという単純な事。それが《禁思用語》への対策になる。

まあ英語だと言い換えようとしたところでその単語を使ってしまったら《禁思用語》に妨害されて意味が無いだろう。

だがまあ、この日本語というものはバカみたいに無駄に表現豊かである。

まあ、大概は簡単簡潔な言葉で済ませるから《禁思用語》の術中に嵌ってしまうが。

「俺は変わらず、鋼凪救出に向かう。間に合えば、そっちに鋼凪やら連れてそのままコード使用者を討つ」

『わかりました、それじゃ』

「ちょっと待て」

『……何ですか?』

「あっちは好き勝手にコードを使えるのに、お前は全然好き勝手にコードを使えないっていうのは不公平だろ?」

『世の中の大半は、不公平、不平等で成り立ってると思いますけど』

「まあ、ともかくただの確認だ。お前は《非観理論》を活用できるか?」

『一輝先輩には出来るんですか?』

「あぁ。だからその方法教えてやる」

皆既月食だぜ! 赤いぜ!

吸血鬼が出るんじゃねーの!? やっほい興奮してきた!

…………というのは半分冗談ですからまあ気にしないでください。

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