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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
37/68

誘拐

「鋼凪が休み?」

「らしいです。風邪引いたみたいで」

とある事情で千秋にしばらく顔が上がらなくなった俺は、その千秋の命令で虎杖と三人で学校の屋上で食事を摂っていた。

「大変だね。お見舞いとか行ったほうが良いのかな?」

「別にいいだろ。下手に見舞いなんか行って風邪でも引いたら、気が悪くなるだろうしな」

「わっ、一輝がまともなこと言ってる!」

「千秋先輩、いくらなんでも酷いですよ。その言い方は」

「でも虎杖君、あの一輝だよ?」

「確かにそうですけど」

二人して俺のことを残念なものみたいに言いやがって。そんな俺が今まで酷いことを一回でもしたか?

にしても、鋼凪が風邪とは…………。

バカは風邪引かないってのは嘘だったんだな。千秋の体調も気にしとかなきゃいけない。

それにしてもまあ…………。

「平和だな」

「いきなりどうしたの、一輝?」

「いや、平和だなって思ってさ」

「そりゃここは戦争を放棄した国ですからね。拳銃一つ持ってたりしたら犯罪ですよ」

虎杖はそう言ったあと「あ、そういえば鋼凪が持ってたような……」なんて物騒なことを言いつつパンを齧っていた。

ちなみに俺が言ってる平和って言葉はそういう戦争とかが無いって意味じゃなくて、《干渉不可》からの接触以来何も起こってないってことを言ってるんだが。

まだ参加者は俺を含めて7人もいる。なのにここしばらく、何も起こってない。

ここにいる俺を含めた3人と少しばかり行動を起こした《干渉不可》はともかく、ほかの3人……《禁思用語》《結論反転》《絶対規律》はゲームの開始時から何の行動も起こしてない。

たんにゲームに興味が無くて、もう自ら大切な物を壊して辞退してるなら別になんの問題も無いんだが。

暗躍されてると一番困る。裏でこそこそ罠や俺たちへの対策やらを仕掛けられてでもしたら、対峙する時に圧倒的に不利になる。

しかしまあ、その仕掛けがすべてコードによるものだったら《否定定義》があればすべて解除できる。

だが今は体調不良で鋼凪も休み。解除もできない。

こんな時に敵から奇襲なんてあったら、まさしく最悪だ。

「本当、平和だなぁ」

まったく、少しはまともに平和を享受できないものか。そんな最悪なパターンなんか考えてないで。

自分の思考回路を少し恨みつつ、俺も弁当に手をつける。



「………メール?」

昼休みもあと少しで終わるであろう頃。

俺の鳴らずの携帯が、登録アドレス3件の携帯が振動した。

画面にはまったく知らないアドレスが表示されていた。

「あ、これ梓美ちゃんのアドレスだ」

「……はぁ? なんで鋼凪が俺のアドレスを知ってんだよ」

「そういえば前、千秋先輩が教えてくれましたね。一輝先輩ののアドレスやら電話番号やら」

「千秋、お前…………勝手に個人情報バラしやがって」

「でも知ってたほうが便利でしょ?」

「まあ、そうだけど…………」

そのお前のドヤ顔だけはムカつくな。一発ぶん殴ってやりたいくらいに。

大体、教えるにしたって本人に了承得てからにしろよ。俺、今までバレてたの知らなかったんだぞ。

「で、なんて」

「んぁ? 何が?」

「メールだよ」

「あぁ、そういえば」

千秋に促されるようにして、俺は鋼凪からのメールを開く。

メールの内容は、

『鋼凪梓美はあたしが誘拐しました 取り戻したくば、ここに来なさい』

といったくだらない物だった。

「えっ!? 何このメール!?」

「どうしたんですか?」

千秋の反応におかしさを感じた虎杖が携帯の画面を覗いてくる。

「…………場所は?」

冷静沈着な虎杖は、とりあえず場所の確認をしようとする。

いやとても賢い。この賢さは、鋼凪にも千秋にも、そしてこの誘拐犯さんにも見習ってほしいものだ。

「……なあ、虎杖。鋼凪の携帯ってスマートフォンとかだったか?」

「えっ? …………確か退院祝いに買い替えたとか自慢してきましたね」

「そうか。なら解決だ」

俺はさっそく相手に返信し、携帯をしまう。

「いやいやいや! 一輝の人間性がそこまで落ちてるなんてちぃは信じたくないよ!」

「ちょっ一輝先輩、なに返信一つで事を済ませようとしてるんですか!?」

「仕方がないことなんだ」

「仕方なくないよ! 一輝頭大丈夫!?」

「おい、虎杖」

俺の態度に文句を言ってくる二人に対して、俺は冷静に物事を判断できるほうを指定し、携帯を渡す。

数十秒後。

「……仕方がないことですね」

「確かに、一輝の判断は正しいよ……」

二人ともちゃんと、添付ファイルが開けないという現実を受け止めてくれた。

時々あるらしいのだ。スマートフォンで撮った写真などの添付ファイルが普通の携帯じゃ受信できないということが。時々あるらしいのだ。

まあ、どうせ俺には関係のないことだと思っていたが、まさかこんな所でこんな無駄知識が役に立つとは……。

「ともかく、俺は相手の返信が来たらすぐにそこに向かう。お前たちは学校で待機しといてくれ」

「え、でも皆で行ったほうが―――」

「相手は《干渉不可》。狙いは俺だけだ」

「……何で分かるんですか?」

あたし、という女が主に使う一人称。機械に弱そう。鳥頭。

以下の理由から《干渉不可》だと予測できる。

まあ、言ってしまえば鋼凪を浚って、俺の携帯に直接メールしてきたんだ。その時点で狙いは俺の確立が高いだろう。

《干渉不可》は俺に……正確には《無影無綜》に執着している。

それにもしも他の参加者だとしたら、虎杖や千秋にもメールを送っているはずだ。

「だから俺が行く。お前らは普通に授業受けててくれ」

「分かった。ちゃんと梓美ちゃん助けてよ」

「まあ、任せとけよ」

その言葉で千秋たちと俺は自然解散となった。

そろそろセカンドステージ、開幕させますか

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