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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
セカンドステージ
27/68

交錯

「貴女が《干渉不可》ね?」

「………誰?」

夕方の電車内にて、とある少女が誰からか呼びかけられた。

席に座る事なく、外を向いて乗車している少女の視界には絶対に声の主が映るはずもない。

だから問いかけた。

「《禁思用語》って言葉だけで分かってもらえると嬉しいんだけど」

「……ゲーム参加者、ってわけね」

声の主……《禁思用語》の姿も見ずに少女は会話を進めてしまう。

その少女の態度に少し苛立ちながらも、《禁思用語》は少女にある話を持ち掛け始める。

「ねぇ、ちょっと協力しない?」

「協力?」

「そう協力。今ちょっと勢力を集めているの」

「……何で?」

「先日、《否定定義》が《完全干渉》に、《完全干渉》が《非観理論》に負けたの。知ってる?」

「初耳ね」

少女が集めている情報は、ゲームの進行状況ではない。

だからその情報は本当に初耳だったし、別にどうでもいい情報でもあった。

「それで分かったんだけど《非観理論》《否定定義》《異見互換》《無影無綜》の四人が手を組んでるの」

「…………」

「こっちも《結論反転》とは手を組んでるんだけど、それでも二人。《否定定義》が抜けたからといって、三人には勝てそうもないわ」

「……あたしに頼るより《完全干渉》に頼った方が可能性があるかもよ?」

そう提案する少女に対し、《禁思用語》は少し溜息を吐きながらこう答える。

「アイツはダメ。完全に一匹狼っていう性格してるし、誰かと協力なんて考える性質じゃない」

「へぇ……」

「で、貴女はどう? こっちに協力しない? できれば強制的に協力してもらいたいんだけど」

「するわけないでしょ、バーカ」

少女がそう言うと共に、停車し、車両のドアが開く。

「あ、ちょっと」

そのまま自然と電車を降りようとする少女の肩を掴み止めようとするが《禁思用語》が伸ばした手は、少女に触れる事無く、空を切る。

「じゃあね《禁思用語》。次遭う時がないことを祈るわ」

ドアが閉まり、そのまましばらく少女は行ってしまった電車の方向を見る。

(……どんな形であれ、これでやっと《無影無綜》に辿り着けるか………………)

そう思いながら、少女はホームを降りたって行った。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「べぇくしょんっ!!」

うぅ……なんか寒気がする…………。

鋼凪か? 鋼凪あたりが俺の悪口を言ってるのか?

まあ、それでもいいから鋼凪にはさっさと怪我を直してもらいたい。

でなければ《非観理論》が使えないからだ。

別に鋼凪に無理をさせれば使えない事も無いんだろうけど、千秋が『梓美ちゃんはまだ怪我人なんだよ!』とかうるさく文句を言ってくる。

あぁ本当、さっさと鋼凪の怪我なおんねぇかなぁー。

溜息を吐きながら天井を見上げる。

現在は家の中に独り。千秋はどっかに買い物に行った。ついでに頼んだ食材をしっかり買ってきてくれるだろうか?

色んな事が詰みに詰んで、家の中でただ静かに待つだけでも気が詰まる。

《無影無綜》は窃盗にも奇襲にも隠蔽にもスパイにも向いてるが、なんせ、相手が何処の誰だか分からない状況だとコソコソと動くことも出来ない。

だから今は《異見互換》の視界を共有できるルールを使って、映像のみの情報を千秋に集めてもらっている。

《非観理論》が居るのに、こんな効率の悪い方法でしか情報を集められないなんて…………。

状況的には最悪。こちらから仕掛ける事が困難過ぎる。

まあ、こんな状況を作り出したのは他でもない《完全干渉》と俺である。

自業自得とはこの事か。まったくもって笑えない。

「遅いなぁ…………」

千秋は一体どこで何を買っているのだろうか? 帰ってくるのが遅く感じる。

まあ俺の体内時計が焦りと共に異常な早さで進んでいるだけかもしれないが。

やりたい事があっても、やれる状況ではない。

この前のように呆然と漫然と天井を眺めていたら寝ていたというオチも嫌だ。

さて、どうするか…………。

一人オセロでもするか? いや、俺がしたくない。

そんな風に、適当に思考を回していたら千秋からのメールがあった。

もしかして……買い物の途中で何かあったのか!?

『ちぃ、くじ引きで3等当たった!!』

おめでとさん、と短く返信をし、俺は携帯を放置する。

そもそも何かあった後にメールなんてしてこれるのか? そういう冷静な考えが足りなかった。

本当、この前から思考が絶不調だ。別に平和ボケをしたわけでもないのに。

悪夢ボケという新種のボケ型だろうか?

まあ、そんなのどうでもいい。まったくクダラナイ事を考えることだけはいつも通りだ。

いつの間にか放置していた携帯電話がまた振動している。また千秋からのメールだろう。

『梓美ちゃん、明日退院だって!』

「………ハァ」

思わず安堵の溜息を吐いてしまう。これで明日から動き出せる、色々と。

詰んでいた状況が一気に切り開けてきた。

返信はせずに、そのまま携帯の電源を切る。

この勢いだと多分、千秋がくだらないメールをいくつもしてくるんだろうなと思ったからだ。

またgdgdだよ…………ほんと、まったく。


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