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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ゲームスタート
18/68

対戦

「虎杖君、事前に確認しておくけど……《完全干渉》の大事な物って何?」

「…………免許証、紙の医師免許証だ」

「何でそんな物が?」

「大切な物なんて人それぞれだろ」

そんな話をしているうちに、僕と鋼凪は《完全干渉》の前に着く。

「……そっちから来るとは、楽で助かる」

そう言うと共に、男医師は片腕を振るう。

それに伴って、無数の氷の針(?)のようなものが現れ、こちらに向かって猛スピードで……ってヤバッ!

鋼凪も僕も、頭を抱えながらしゃがみ込み、どうにか氷の針をかわす。

「鋼凪! 何でコードを使わなかったのさ!?」

「何を否定したらいいか分かんなかったのよ!」

そうだった、鋼凪はそこまで頭の回転が速いわけじゃないんだった。

それに僕も何を否定したらいいか分からない程、テンパっていた。奇襲なんてされるとは思ってなかったから。

これは自分の考えの甘さのせいだな。

「虎杖君、わたしがアイツに突っ込むからサポートよろしく」

「……鋼凪、分かってるとは思うけどこの前の《完全干渉》とは違って―――」

「分かってる。殺す部分を身包み引っぺがして免許証を取るっていう風に変えればいいんでしょ?」

ダメだ、鋼凪は力押しでこの勝負を終わらせる気だ。違いを少ししか分かってない。

しゃがんでいた姿勢からクラウチングスタートのように突撃する鋼凪。

干渉範囲である20メートル圏内に入って2秒後。

「1秒後、両側から氷の壁で押し潰される」

「否定」

鋼凪の声と共に、微かに集まり始めていた水蒸気が元の場所へ霧散する。

「1秒後、左膝を狙って氷柱が地面から突起する」

「否定」

直後、床に凍りそこねた水蒸気が水分となって水溜りをつくりだす。

「2秒後、右肩、左胸、腹部、左脛、右踝を狙っての氷柱と天井が崩落」

「全否定」

水蒸気は元の居場所へ戻り、崩れかけた天井は普段通りのヒビが入っていない状態へ戻った。

これが鋼凪と僕の作戦。

《否定定義》はコードなどを無効化するという強力なものだが、鋼凪自体は、駆け引きや相手の行動を読むことを苦手としている。

得意なものは《否定定義》を使った力押し。ゴリ押し。猪突猛進。

だがまあ、そんなことをすれば半径20メートル以内を自由に干渉できる《完全干渉》にあっさりとやられてしまう。

それを避けるため僕は《非観理論》を使って、《完全干渉》が鋼凪に仕掛ける攻撃を全て先読みし彼女にそれを口頭で伝える。

その攻撃を鋼凪はただ否定するだけ。それだけでコードを使った攻撃全てが無効化される。

ある意味凄く恐ろしい。相手の策略や思惑を全て跳ね飛ばし、相手の元へ辿り着いて止めを刺せるのだから。

この鋼凪の猛進を止める術はただ一つ。僕を口を塞ぐ……ようは僕を潰してしまえばいいのだ。

しかしそれも叶わない。

何故なら《非観理論》には他者から観測されないというルールがあるのだから。

観測できなければ、干渉できない。つまり《完全干渉》は僕個人に攻撃をするどころか、僕がどこに居るかも分からない。

僕が干渉範囲である20メートルに入っても気付かれることは無い。

だから鋼凪への僕の予知が途切れることはない。

この作戦、僕もちょっと走らなきゃいけなくて疲れるけど、確実に《完全干渉》を倒せる。

鋼凪の猛進を止める術はもうどこにもない。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


氷雨はなおも鋼凪へ攻撃を仕掛けながら、冷静に状況を分析していた。

こちらの攻撃はどんな死角や大量に同時に仕掛けても全て無効化されてしまう。

先程から氷雨には鋼凪の「否定」という言葉しか聞こえないが、それは多分、観測されないルールを使用されているからだ。

つまり正確にいえば、こちらのどんな攻撃も全て予知され、全て無効化されているというわけだ。

まったく小賢しい……。

氷雨は苛立ちと忌々しさを感じて少し嘆息を吐く。

鋼凪の聴覚に干渉し、虎杖の声を聞けなくしてしまおうか。

……ダメだ。聞こえなくなった瞬間にすぐさま無効化されてしまう。鋼凪の周りの音に干渉することも無駄な足掻きだ。

虎杖本人に攻撃を仕掛ける事すらできれば、鋼凪を討ち取ることなど容易いのだが……。

本人を観測できなければ、干渉する事も叶わない。

……いや、一つだけ虎杖に干渉する方法がある。

虎杖個人を干渉することが不可能ならば、全てを同時に干渉すればいいだけだ。


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「……?」

鋼凪に対する攻撃が途絶えた。

諦めた……いや、そんな簡単に諦めるわけがない。

……もしかして逃走経路を確保しようとしてるのか?

そう思い、僕はすぐさま《非観理論》を使って相手の行動を未来予知をする。

それを行った事は間違いでは無かった。でもタイミング的には遅かった。

「虎杖君……?」

指示が途絶えたことによって、鋼凪がこちらを向いて僕の姿を確認しようとする。

それと同時に、《完全干渉》が片足で思いっきり床を踏む。

「鋼凪! アイツ、干渉範囲全体に氷柱で攻撃してくる!」

氷雨の考えを補足すると「取り敢えず全部攻撃すれば、当たるだろ」ってことです。

言い換えるなら、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。

周りに迷惑が掛かりますので、皆さんは真似しない様にしてください。

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