表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ゲームスタート
17/68

説明不足

《完全干渉》…………春永はるなが氷雨ひさめは、未だ保健室にて検診を続けていた。

本来なら、《異見互換》もしくは《否定定義》を捕え、命と同等に大切にしている物を破壊しているはずだった。

しかしそれよりか前に、《無影無綜》と《非観理論》が動き出してしまったため計画は中断。

彼らが保健室を出た時、無理に追いかけることはできかた、それをすれば氷雨の大切な誇りを穢してしまうため、仕方なく検診を続けていた。

保健室にいた女子生徒も女医も《完全干渉》によって記憶を改竄され、四人……正確には、姿を現した三人が保健室に居たことを忘れてしまっている。

無駄に騒がれても困るのは氷雨自身だからだ。

四人に脱出されてしまった今、氷雨の最速で最適な行動は、検診を終えて四人を追うこと、である。

機械的に女子生徒を診ながら、少しばかり氷雨は後悔していた。

検診に来た医師、という設定でなければ氷雨はすぐに彼らを追うことができた。

しかし医師という設定が、今氷雨をこうして保健室に縛り付けている。

最後の女子生徒を診終わると同時に、氷雨は《完全干渉》によってまた記憶を改竄し、すぐさまに保健室を出る。

《完全干渉》のデフォルトでの干渉範囲は20メートル。

おそらく彼ら四人全員がそれよりも離れた場所に移動したはずだ。

しかも《完全干渉》のデフォルトでの干渉時間は5分。

氷雨のコードは最大5分しか使えず、しかもコードの使用を止めたからといってまた5分使えるわけではない。

氷雨本人にもいつコードの制限がリセットされるのかはイマイチ分からないが、夜寝て朝起きたらリセットされていた。

睡眠を取ればリセットされるのか、それとも24時間でリセットされるのか。

それは分らないが、取り敢えず今は関係の無い話だ。

ともかく《完全干渉》を無闇に多大に使用することはできない。

記憶の改竄も一瞬でやってのけたことだ。もう二度と使いたくはない。

…………いや、無闇に多大に使用する必要は無さそうだ。

二人が……《非観理論》と《否定定義》の二人がわざわざ自分の元に来たのだから。



~~~時間は少し前に遡り~~~~~~~~


「あれ? 一輝、土下座しないの?」

「するか、するわけないだろ」

踊り場に残された俺と千秋。まあくだらない雑談をするしかないわけですよ。

「っていうか一輝、どこ行こうとしてるの?」

「戦の地だよ」

「二人の後を追うってこと? 確かにちょっと心配だけど」

「心配の域を超している。危険だ」

俺は断言する。断言するに足りる根拠もある。

「《完全干渉》は俺たち四人のコードをもうすでに知ってるはずだ」

「……知っていてるからこそ、ちぃと梓美ちゃんを狙ったの?」

「鋼凪はコードが発動されてることに気付かなければ《否定定義》を使わない。千秋の《異見互換》は攻撃性が一切ないコードだ。《無影無綜》で隠れられたり《非観理論》で予知されて逃げられるよりか、全然捕え易い」

もしも俺と千秋、鋼凪と虎杖のコードが逆だったら、女子ではなく男子の検診になってただろう。

あくまで俺の予測ではあるが。

「でも、今は梓美ちゃんだって警戒してるわけだから《否定定義》も使える。さっきよりか安全だと思うよ」

「どうだか」

千秋の言った言葉は半分正しい。でも半分は間違ってる。

「さっきまでは気付かれずにコードを発動して二人を捕えなきゃいけなかったが、今は違う。ド派手にコードを使ってくる。《完全干渉》は時間制限のあるコードだ、ド派手にコードを使えた方がやり易いに決まってる」

「でも二人は、一度《完全干渉》を倒したことがあるんだよ?」

「それが油断に繋がる」

というか、多分もう鋼凪と虎杖は油断している。

さっきの《完全干渉》の説明の時に、言い忘れた事が多分あるからだ。

「《完全干渉》は自分を中心とした半径20メートルの範囲を5分間、干渉できるってルール。それは分かった。だけどその干渉範囲は常にそうなのか? 干渉時間は常に5分なのか?」

「……あ」

そんな事は鋼凪は言っていなかった。俺にそんなことは説明しなかった。

まあ、元々俺を戦いに参加させる気が無かったからかもしれないが。

「多分、鋼凪はそれぞれ最大範囲、最少時間で答えたんだと思うが…………そこら辺が油断の元だ」

「なんで?」

「その情報は《非観理論》で調べた信憑性が高い情報ではない可能性がある」

「……? どうしてそう思うの?」

首を傾げながら千秋が問うてくる。

「俺が鋼凪に《完全干渉》のルールについて聞いた時、鋼凪は一切虎杖に確認を得なかった」

「それは、梓美ちゃんが《完全干渉》のことを虎杖君より知ってるからじゃ?」

「虎杖より詳しいわけないだろ。《非観理論》は全ての事象を観測できる、言ってしまえば辞書のようなものなんだから」

辞書よりも、ネットよりも、パソコンよりも、人間の脳が記憶という概念で勝るわけがない。

「鋼凪は虎杖に一度も確認を得なかった。そして虎杖は一度も説明の時に口を挟まなかった。だからもしかしたら……《非観理論》で《完全干渉》のルールを調べてないかもしれない」

「それって…………考え方によってはピンチじゃ」

「ピンチかもじゃなくて、ピンチなんだよ」

鋼凪は最大干渉範囲が20メートルだと思っている。

しかし、もしかしたら、場合によっては、その情報は偽である可能性がある。

いや、偽であろうが真であろうが、このままだと鋼凪たちは負ける。

「千秋、あの二人は今どこにいる?」

「…………保健室近くの廊下……もう《完全干渉》と対峙しちゃってる」

もう対峙しちゃってる、か。

……チャンス、良い機会かもしれない。

《非観理論》も《否定定義》もいずれ敵に回ってしまうコードだ。

もしここで《完全干渉》によって大切な物を壊され、敗退してしまったとしても、殺されない限りは二人の協力を後々も得られる。

つまりここは、序盤戦の山場かもしれない。案外早いものだ。

この戦いで、最低限二人のコード使用者が敗退する。

未確定のこの結果を確定させるには、俺の援助は少し遅らさせなければいけないかもしれない。

考えがまとまると共に、俺の進路を邪魔するものを《無影無綜》で消し去り始める。

最低ですよねこの主人公。ホントマジ最低。

クソってくらい最低、外道、下種のカス主人公ですよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ