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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
ゲームスタート
13/68

意志

「あ、カス」

「…………チッ」

秘蔵DVDが焼かれた2日後。まあようは月曜日。

昼休み、昼食も食い終わったしちょっと食後の運動として廊下をぶらついていたら、鋼凪とエンカウントしてしまった。

よりにもよってコイツかよ。まだ千秋の方が良かった。

「カス、今わたしの事を無視しようとしたよな。おい」

「クソ凪、それは大きな勘違いだ。俺はお前を無視ようとしたんじゃない。お前みたいなゴミクズだと思ったんだ」

「カスの目は節穴ということがよく分かったわ」

「俺の目が節穴なんじゃない。お前のオーラがゴミと同じなだけなんだ」

「え? 何? 無情に残虐にブチ殺して欲しいって? 運が良いわね。丁度護身用に改造スタンガンを持ち歩いていたのよ」

「何だよ? 何ですか? お前、俺に喧嘩で負けたのもう忘れちゃったんですか? もう一度、誰が強いか躾け直して欲しいんですか?」

「上等だよ、コラ。お前ちょっと屋上来いや」

「オォケー、分かった分かったよ。歳上に対する礼儀と作法をもう一度教えてやる」



と言う風に喧嘩を売られ、言われるがままに屋上へ来たはいいとして。

鋼凪が居ない。というか予め遅れて来るからと言われてある。

あの野郎……挑発もほどほどにしないとお兄さんブチ切れちゃうんだよ?

「お待たせ」

ただ変化が無い青空を平然と眺めていたら、鋼凪が片手にビニール袋を引き下げて屋上にやっと来た。

まだ昼食を取っていなかった、というわけなのだろうか?

まあ俺のとっちゃどうでもいい事だ。

なんて思っていると鋼凪が袋の中を漁りだし、そこから一つ、おにぎりを俺へ向けて出してきた。

「一ついります?」

「何を企んでるんだ、お前は?」

鋼凪が俺に向けて何かを分け与えようとしただけでなく敬語で話し掛けて来るなんて。

絶対に何かを企んでいるに違いない。間違いない!

「今から真剣な話をしたいのに、罵倒の仕合になったら会話になりませんもん」

「……なら一つ、貰っておくかな」

差し出されたおにぎりを奪い取り、十秒以内に食べ終えた。

そのな様子を見る気も無い鋼凪は、俺におにぎりを取られてすぐにまた袋を漁り、コロッケパンを取り出し、食べ始めた。

自分はパンで俺にはおにぎりか。まあどっちでも良かったんだが。

「それで、真剣な話ってのは?」

「…………ゲームについてですけど、わたしの為にわざと敗退してください」

「……その話、何で千秋や虎杖にする前に俺に言った?」

返事よりも何よりも、俺はそっちの方が気になったので鋼凪に聞いてみる。

驚いたのか、少しばかり目を見開きながら鋼凪はパンを口に運ぶ。

「よく分かりましたね。何でですか?」

「千秋はアホだから、何かあればすぐに俺に伝えてくる。だがお前の今の話は初耳だ」

ということは千秋には伝えてない事になる。

そこから先は予測だが、おそらく虎杖に先に伝えてるとしたら、鋼凪の中の最低優先度にある俺に話すよりかも前に千秋に話をするだろう。

しかし千秋に話をしていないという事は、もしかしたら虎杖にもしていない可能性が割と高い。

まあ人ってのは無意識に番付通りに動こうとしたりするからな。

もしかしたら、と思って言ったら当たっていた。たったそれだけの話だ。

「なんやかんやで、わたし達のグループでのリーダー格って言ったら貴方じゃないですか」

「そうか? リーダーがいるグループだったらもうちょっと統率性があると思うんだが」

「一番リーダーっぽい人って意味ですよ。濁川先輩が頼ってるからでしょうけど」

「違うな。きっと俺のカリスマ性が自然と溢れ出ている結果だろう」

「……ハァ…………そんなわけで、一番最初に話を付けるべきは貴方と思ったわけですよ」

「んじゃ、一番最初に聞かれた者らしく振る舞うけども。お前は勝者になって何をしたいわけ?」

俺が鋼凪の瞳をしっかり見て聞くと、鋼凪は視線をずらすことなく答える。

「こんな最低なゲームを考えたクソ野郎をぶん殴ってブッ飛ばしてやりたいと思ってます」

「その為に、お前は他の8人の参加者の命と同等に大切にしてる物をブチ壊すと?」

「壊した物は、勝者の権限で全部復元させます。これが悪い事だという事も自覚して、貴方に頼んでるわけです」

「……お前、大切な物を目の前で壊される痛みを知ってるか?」

「知ってますよ。わたし、実は家族を目の前で殺された経験があるんです」

「そうか…………なら、なおさらだ。お前は他の8人にもあの痛みを味あわせる事になるんだぞ?」

「……分かってます。だからこそ、そんな痛みをこれからも多く生み出す可能性があるものを潰すんです」

「その大義名分のためなら、自分がいかに悪魔や下種や鬼と呼ばれても構わないと?」

「…………その覚悟くらいはあります」

最後の言葉を言い切るまでしっかりと俺の瞳を見続けた鋼凪。

ちょっと無駄話をするが、どこかの心理学の本に『異性に嘘を吐くときは、大概の人間が相手の目を見て話をします』なんて物が書いてあった。

まあそんな余計な知識で、バカが考えたバカなりの誠意を無為にするのは可哀想だろう。

だから俺はしっかりと返事を返してやる。

「断る」

「やっぱりですか……」

予期していたのか、鋼凪のショックはあまり大きくなかった。

「まあそんな強い意志があるなら、誰かに頼み込んで負けて貰うんじゃなくて、無理にでも勝てよ。そうじゃなきゃ、敗者がやりきれないだろ」

「そうですか……そうですよね」

心のどこかでは諦めていたんだろう。どうせ交渉相手が俺だしな。

「でもまあ……お前の意志は少しばかり貰っていくよ」

「…………えっ?」

「奇遇な事に、俺も目の前で一度ばかり大切な物がブチ壊れたことがあるんでな。こんなクソつまらないゲームを考えるクズ野郎をぶん殴ってブッ飛ばすっていう意志くらいは、共有してやるよ」

そう言いながら、俺は鋼凪に手を振りながら屋上を後にする。

ダラダラしてるよ、展開が。

つまらん。gdgdは好きではないぞ。俺。

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