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クローバー:コード  作者: 坂津狂鬼
序章
10/68

s10

「………………メール?」

食器も全て洗い終わり、三人がボードゲームやらトランプなどをして鋼凪が大惨敗している様を優雅に眺めていると、ポケットの中で何かが振動した。

当然、振動したのは携帯なのだが……メールのやり取りをする友達を作った覚えがなければ、俺の携帯のアドレスを知ってるのは義父と千秋と外国に住んでる知り合いの程度だ。

千秋がメールをしてくるわけが無いし、義父が俺にメールをする事なんて無いし、外国の知り合いはゴミ屋敷を掃除している時にしばらくメールしないという連絡が来たし、迷惑メール対策もしているし。

俺の携帯がメールを受信するはずが無いのだ。

一応メールかどうかを確かめる為に、ポケットから携帯を出す。

確かにメールを受信していた。だが内容は、

『〈このメールに本文はございません〉』

何とも奇怪な物だった。

アドレスも俺が知るものでは無いし、タイトルも無い。そして本文も無い。

迷惑メールでも無いだろう。ある意味迷惑なんだが。

「おいカス」

「いきなりなんだ、クソ凪」

「これって、貴方のアドレスなの?」

そう言って鋼凪は携帯画面を俺に差し出してきた。

画面に映されていたのは題名も本文も無い、俺に送られてきたのと同じアドレスのメール。

「千秋、虎杖。お前らも今メール受信したか?」

確認を取ると、二人とも頷いた。

……という事は考えられるのは三つ。

一つはこの市内の全員に同じメールが行き届いているという可能性。

一つは俺たちが通う学校の全員にメールが送られた可能性。

一つはコード使用者にのみこのメールが行き届いてる可能性。

多分、これしか俺たち四人の共通点は無いはずだ。

「……ッ!」

俺が思考に耽っていると、またメールを受信した。

『おめでとうございます! 貴方は参加者に選ばれました!』

本文に書いてある文章を読んだ瞬間、直感的に俺の中で答えは一つに絞られた。

これはコード使用者にのみ送られてきたメール。

参加者……ということは何か面倒事が起こるってわけか。

そして続けて俺の携帯がメールを受信する。

『ゲームの概要説明 参加者9名のうち一人の勝者を決めるゲームです』

『参加者全員、コード、と呼ばれる不思議な力を持っています』

『参加者9名にはそれぞれの命と同等に大切にしている物を壊し合ってもらいます』

『参加者が死亡した場合でも、物が破壊されなければ敗退にはなりません』

『敗退条件は、ものの破壊です』

『敗者は参加者の命、それと同等の物の破壊を禁じます』

『勝者は失ってしまった大切なものを復元する事が出来ます』

『例えそれが命であっても』

『なお参加者それぞれのコードは』

『《無影無綜》』『《非観理論》』『《否定定義》』『《完全干渉》』『《干渉不可》』

『《禁思用語》』『《異見互換》』『《結論反転》』『《絶対規律》』

『となっております』

『ゲーム開始時刻は明日の0:00からでございます』

『くれぐれも殺し合いと勘違いなさらないように。これはあくまで壊し合いです』

『それではご検討を祈ります』

そのメールを最後に携帯は静かになった。

しばらく誰も喋らない沈黙が広がる。何が起こっているかを理解する時間である。

パニックを起こして騒ぎ出すか、冷静に判断し落ち着きを掃うかの二つに別れる時間である。

正直、鋼凪がパニックを起こしてほしい。そうすればいくらでもバカに出来るから。

「一輝、どう思う?」

最初に声を出したのは千秋だった。案外、皆冷静なんだな。

「どうもクソも無いな。まず最初に狙われるのは千秋と虎杖だ」

誰もパニックを起こしそうにないので、パニックになりそうな事を言ってみたが結局誰もパニクらなくて俺は物凄く残念だ。

「《非観理論》を使ったら、何を壊せばいいかバレますもんね」

「こっちには《否定定義》がいるからな。そう言う事だ」

自分が狙われているというのに冷静過ぎる虎杖が少し心配になりながらも、一応答える。

「まあ良かったのは参加者9名のうち、ここに約半数が集まっていることだ。それだけでも相当有利だ」

「……つまり他の奴らを潰せば後は争う必要は無いっていうわけ?」

口を挟んでくる鋼凪。だがまあ言ってる事は正しい。

「そう言う事。だけど不用意には動かない方がいい」

「派手に余計に動いたら、他の5人が協力する可能性があるから?」

「あぁ。そうすれば不利になるのはこっちだ」

姿を隠すコード。ルールを無効化するコード。全ての事象を観測できるコード。それと千秋のコード。

これだけで他のコード一気に相手するのは無理だ。

「一人ずつ、確実に潰していくってわけね」

鋼凪。何かお前は人を殺すとか潰すとかそういう面では頭が冴えるんだな。

何だ? 野生の勘ってやつか?

「でも一輝。まだ一つ疑問に残るんだけど」

「分かってる。賞品のことだろ」

喪失した物の復元。これはコードで行うのだろう。

だが、命まで復元できるのか? 精神まで復元できるというのか?

復元できるとした一体、どういうルールのコードなんだ?

人や物を復元できる、それだけのコード…………。

復元……元に戻す……壊れる前に……壊れる…………壊して直してまた壊す…………。

壊し過ぎて、物が無くなって、壊すために直す……元に戻す……復元する。また壊すために。

…………あぁ、そういう事か。

「参加者《絶対規律》か…………」

「……?」

俺に呟きに、千秋が怪訝そうな顔をして俺を覗き見る。

そんなに心配せずとも、俺は正気だ。まだ正気だ。まだ堕ちてない。

「あひゃ」

正気だ。正気に決まってる。正気じゃなきゃいけない。

自分が誰で何処に居て如何しているかも分かっている。

まだ堕ちてない。溺れてない。嵌り込んではいない。

自分がどういう奴だかしっかり分かって、演じてる。

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

「一輝…………?」

だから千秋、心配するなって。まだ俺は正常だ。ただ嬉しいだけだ。

嬉しくて嬉しく嬉しくてうれしくてうれしくてウレシクテウレシクテ、

とてつもなく気分が高揚しているだけなんだ。

「みぃーつけた」

探してた者がやっと見つかって、嬉しいだけなんだ。

主人公発狂www

いや嬉しいだけらしいですけど、

探し物一つ見つかっただけでここまで笑わなくても、ねぇ?

これでやっとゲームに進めるよ……ハァ。

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