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 「生憎本日はもう見学時間は終わっているんですが、ここまで来てくださったんですし、特別ですよ」

真っ白な服の神父はそう言って自らの唇に人差し指を当てる。

 「他の人には言わないでくださいね」

そう言って小首を傾げる。淡い茶色の髪が、夕焼けにキラキラと光っていた。欧米の顔つきのその神父から、すらすらと日本語が発されているちぐはぐさに、天音は少し混乱する。

 「ええと、ここの神父?」

 「神父、ではなくて牧師ですよ、刑事さん」

笑みを湛えたまま神父、ではなく、牧師は教会の中へと入っていく。続くように天音も教会へと入った。

コツコツと足音が木造の教会内に響く。扉の閉まる音を背中で聞いた。牧師は振り向いてさて、と口を開いた。

 「よく結婚式などで見かける教会は真っ白でステンドグラスが輝いているイメージがあると思いますが、それはキリスト教の中でもカトリック、という宗派の教会なんですね。 シスターや神父が居るのもカトリックです。 ここはプロテスタントという宗派の教会で、質素な造りになっているのが特徴的です。 シスターや神父は居らず、代わりに牧師が務めています」

牧師はそう言って言葉を切り、胸に手を当てて頭を下げる。

 「僕はここの牧師の華岡麗(はなおかれい)と申します。 なにかお尋ね事があれば、お答えしますよ」

そう言って華岡は顔を上げる。薄い空のような瞳が、少しだけ歪んだ。吸い寄せられる。目を反らせない、ということが本当にあるんだと思った。


 「……ここに、高瀬彰人は居るか」


 「……居ますよ」



静寂も束の間、バタバタと忙しない音と扉が乱暴に叩かれる音が響く。

 「ああ全く。だから逆ですって」

そう言いながら華岡が扉に駆け寄り、ドアノブを押すと、でかい男がなだれ込んできた。

 「刑事さん、いました高瀬くん!」

 「いましたー!」

そう言って手を両サイドから持ち上げられた高瀬彰人は、紛れもなく困惑した顔をしていた。


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