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「白い花の咲く教会?」
時は少し戻り、寿司を頬張っていた頃。
聞いたことのない話に、天音は首を傾げる。
「ええ、幽霊がいるって噂の」
「何もないのに鐘が鳴るってのも噂で」
「丘の上の教会なんですけど」
そういう二人に、天音はふぅん、と相槌を打ちながら残りの寿司を頬張る。なんだ、幽霊だのなんだの、話をちゃんと聞いてやろうと思ったのに、オカルトなんてふざけたもんか。
「その教会に、撮影に行ったんですよ僕達」
「めちゃくちゃ綺麗で、神父さんも優しくて、幽霊なんて絶対嘘だねーって話してて」
でも、と二人は続ける。
「撮影終わったあとに、神父さんに高瀬くんだけ呼び止められてて、二人で話してたんです」
「その翌日から、高瀬くんが、一週間くらい休むって言い出して。 それで、連絡は取れてるんですけど」
「いる場所は教えてくれなくて」
二人は言葉を切って天音を見た。
「どう、思います?」
「いや、どうって言われても」
「僕達、神父さんが怪しいんじゃないかって思ってるんです」
二人はそう言って天音を見つめる。真剣な眼差しに、天音は少したじろいだ。イケメンというのは、顔の圧が強い。そんなことを初めて知った。
「どこに行っても見当たらないし、この辺りの喫煙所も、さっきのところが最後で」
「最近行ってて、見に行ってない場所、あの教会しかないんです」
「僕達、あそこの神父さんが、高瀬くんを変にしちゃったんじゃないかって思うんです」
「洗脳とか、そういうので」
真剣な顔で、二人はそう言った。断定した言葉は使っていないが、恐らく二人の中ではもう決まっているのだろう。
高瀬彰人は、花咲く教会に居る、と。
そして恐らく二人は、このあと教会に行くのだろうと。
そんな可能性のあるところに、一般人二人だけでは行かせられない。天音は息を吐いて眉間を揉んだ。
「分かった、お前らの主張は、分かった。 いつ行くんだ。 私もついていくから」
そう言う天音に二人はブンブンと手を横に振った。
「いや、そんな! 自分達で行きますから大丈夫です! 」
「ただ、連絡先教えるんで、もし僕達が連絡してこなかったら、その可能性があるってことで、警察に動いてもらえればって」
「そこまで聞いといて二人だけで行かせられるか」
恐縮しきってる二人に天音はもう一度ため息を吐いた。
「近々だと私が今日仕事終わってからだ。 待てるか」
煙草を出そうとして、仕舞う。飯屋は大体禁煙になったことを思い出した。本当に世の中生き辛くなったものだ。
二人はこくこくと頷いた。穢れのない瞳が、天音を見つめる。
イケメンの瞳も、やはり圧が強い。
目線を反らしながら、天音はない煙を吐き出した。




