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心地良い陽気の中、煙草に火を付ける。空気に溶ける紫煙を見ながら、電子煙草への移行を検討する。いやでもあれ、吸った気にならないんだよな。そう思いながら、また煙を吐いた。
「あ、あの、すみません」
ぽこぽこと煙草をふかしていると、申し訳なさそうに隣から声がした。なんだ、邪魔したかな。そう思いながら隣を見ると、ひょろりと背の高い男が立っていた。
いや、まじででかい。
困ったような顔をした男性を見あげながら、天音は口をぽかんと開けた。
「すみません、人を探していて。 赤い髪で、僕と同じくらいの身長の、男性、見ませんでしたか」
「見ませんでしたか!」
困った顔をした男の後ろから、ひょっこりと元気の良い男が顔を出す。こいつもでかい。類は友を呼ぶのだろうか。
「い、いや、見てねえけど」
「そ、そうですよね! ありがとうございました!」
呆気にとられながら言うと、男はがばっと頭を下げた。派手な紫の髪が目に痛い。絶対警察関係の男じゃない。煙草を吸い殻入れに押しつけながら、天音は口を開いた。
「生活安全課はあっちなんだけど」
捜索願ならそっちで出せるよ、と言うと、男達は顔を見合わせた。
「あ、えっと、そういうのは出せなくて」
「俺達、高瀬くんがヘビースモーカーだからもしかしたらいるんじゃないかって思って!」
「あ、高瀬くんっていうのが探してる人の名前で。 すみません、どこでもいいんで、この人なんですけど見たことありますか」
男は携帯電話の画面を見せる。燃えるような赤い髪に、癖のない端正な顔立ちの男が、そこには写っていた。
「いやー、見てはない、と思う……」
恐らく見てはいない。しかしどこかで見たことのあるような気がする、そんな男に天音は目を細める。
画面にずいっと顔を近付けると、男は「あ、やっぱり大丈夫です」と慌てて画面を引いた。
「わ、分からないならそれで! 大丈夫なので、失礼しました」
ぺこりと頭を下げて紫髪の男は元気の良い緑色の髪の男を押しながらその場を去ろうとする。
この二人がでかいということは探し人もでかいのだろうか。
高瀬、という名前。赤髪。高身長。端正でどこかで見たことのある顔。脳内をひっくり返しながら記憶の糸をたどる。
「……高瀬彰人」
思い出した名前を男達の背中に投げると、男達は血の気のない顔で振り向いた。




