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じゃあまた! と言いながら刑事は教会を後にした。
疲れた、とても。 華岡麗は余所行きの笑みを剥がしながら宿舎へと向かう。 窮屈な仕事着を脱ぎ捨てると、そのままベッドへとダイブした。
一週間、他人と過ごした総仕上げがこれだ。 心身共にヘトヘトだ。
カチ、カチ、と、近くで何かの当たる音と洋服の擦れる音がする。
「……ミニスター」
呟きながら脱いだ仕事着の方に視線を向けると、しゃれこうべと目が合った。
しゃれこうべはずいっと華岡に近付いて顎をカタカタと鳴らす。
「Mr。 いけませんよそんなにだらしがなくて。 子羊たちが見たらどう思うか」
「見てないから問題ないし、今日くらい赦して」
「いけません。 日頃の習慣は所作に出ます」
「わかった、パジャマ取って」
「いけません、体を清潔にされてください」
「ぁー……」
頭をかきながら、華岡は起き上がる。 しゃんと背筋、いや、背骨を伸ばし、華岡の服をハンガーに掛ける骸骨がそこにはいた。 白いワンピースを着た骸骨、ミニスターの横を、気怠げに歩いてシャワールームへと向かった。
本当に、盛り沢山だったな。と、シャワーを浴びながら思う。
明日からまた、静かな日々だ。 そう思うと少し気持ちが軽くなった。
天井の埃を隅まで払い、庭の花のひとつひとつから花殻を摘もう。幼稚園の説教内容も考えなければ。
いつもの単調な仕事がご褒美のように感じる。
シャワーから戻り、ミニスターに「素晴らしい」と褒められた後、ベッドに横になる。
華岡麗は、まだ知らない。
天音香子の、警察官を志したきっかけも。
「じゃあまた」という言葉の本当の意味も。




