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まさかとんぼ返りするなんて思わなかったな、と天音は出された紅茶を啜る。
大きめの長四角の机は、古いながらも綺麗に拭き上げられていた。大きめのクッキーを頬張ると、素朴な味が口の中で広がった。
「もう一度聞いていいですか」
真っ白な牧師、華岡麗は難しい顔をしながら天音に人差し指を立てた。
「だから、なんか影から女が出てきて、過去を変えてやるって言うから、いらねえって地面に叩きつけた。 そしたらなんか変化して蔦みたいなん絡まって、やべーなって思ったら鐘の音聞こえていなくなった」
紅茶おかわりある? と天音が聞くと、華岡は苦い顔をしながらカップに紅茶を注いだ。 喋ると喉が渇くなー、と天音は紅茶をまた啜る。
「……これまでに今回みたいなモノに会ったことは」
「あるわけねえだろ、あんな化物」
「はぁー、まあただ、貴女にはもう来ないでしょう」
華岡はそう言って自分も紅茶を啜った。呆れた顔がカップ内の水面に映る。ええ、呆れた顔の、僕。僕も同じことを思っていますよ。こいつ頭イカれてんじゃねえかってね。
「そんで、神父さん。 アレは一体なんだったんだ」
天音は机に肘をつき、カップを回しながらそう言った。
「アレは化物です。 貴女の言っていたとおりね」
あと僕は牧師です、と華岡は付け足した。
「元々は高瀬彰人に憑いていたものです。 才能を与えて、その生気を吸う。 そういった生き物です」




