表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希望の物語  作者: よむよみ
第一部 私の地球(ほし)が消えちゃった

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

第九話 外れる予言という日常

「あれっ?ドラゴンが光らない」私は思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。

 いつもなら、ドラゴンが光りだし、地球が消滅してしまうはずだった。

 ドラゴンはかわいらしく与えられた培養液を次から次へと飲み始めた。


「本当にこんな小さなドラゴンが、地球を消していたんでしょうか」

「さあ、どうかな。ただ、我々は科学者だ。仮説を立てて検証するのが仕事だ。

 今はこの現実を受け入れるしかないだろう」

 生物学者とその助手たちはそんな会話をしていた。


 あれだけ、破壊しようとしていた卵。

 ホープ様だって、寄生虫を使ってメルトドラゴンを退治しようとしていた。

 そのドラゴンと、この生物学者は共生しようとしている。

 私には、全く無かった発想だった。天界からの情報だけで退治が必要と思っていた。


「新しい発明や発見の多くは予想外のところにあるものよ」

 ホープ様との会話を思い出す。実際にその通りになった。

 ホープ様はもしかして、こうなることを予想していたのかな……。

 いやいや、まさかね……。でもいつか似たようなことが起こることを期待していたのだろう。

 奇跡のような発明や発見は、いつ、どこから生まれるかわからない。

 ホープ様は、そのことを地球を観察することによって知ったんだ。


 だから、どの文明にも等しく機会を与えようとした……。

 あのだらしなかったホープ様。いつの間にこんな立派に……。


 私はそれから、ドラゴンによる地球消滅の可能性は低いと判断し、地上の様子を見ることにした。

 大きなモニターに都市の様子を次々に映し出す。


「地球がそんな簡単に消滅するわけないだろ。

 滅びる日は未来ということにして、今は安全と思い込みたかっただけさ。

 いつもの迷惑な話さ」

「でも何か起きているかもしれないじゃない」

「まだ、びびってるのか。どこもかしこもいつも通りじゃないか」


「ほらな、古文書の予言なんてあてにならないのさ。

 古文書の予言なんか信じていたら地球が何個あっても足りないよ。

 そもそも、未来の技術が本当にあったかどうかだって疑わしい」

「わかった、わかったから、早く仕事に戻りな」


 予言の日が何事もなく過ぎると、星は急速に落ち着きを取り戻しはじめた。

 その雰囲気を感じ取ったのか、逃げていた人たちも、「休暇していただけ」と言い訳しながら、そそくさと仕事に戻った。

 ひと月前に行われた打ち合わせの情報も、まるで最初から存在しなかったかのように、議事録ごと消されていた。

 古文書の予言が外れたことで、予言に惑わされていた特権階級の人たちは、関連するすべてのことをなかったことにしたようだ。


 自室のモニターで星の様子を確認していたホープ様が、静かに部屋から顔を出す。

 私と目が合うと、ゆっくり執務室へ入ってきた。両手を胸の前で強く握り、まだ半信半疑の様子。

「これって……うまくいったってことよね?」

「ええ。大成功です。おめでとうございます、ホープ様!」


「そうよね……これって成功よね。いまいち実感がわかないのだけど」

「メルトドラゴンは周囲の環境に合わせて爆発、中和していたようです。

 どちらも必要ないと判断すると、ただ食べるだけのかわいい子ドラゴンになるみたいですね。

 それと、この生物学者もすごいですよ。すでにこの子ドラゴンを利用して一つ新しい中和剤を見つけたみたいです」


 ホープ様は、うれし涙に満面の笑顔で、様々な星の様子をモニターで見ては「すごーい」と、繰り返しはしゃいでいた。

 こんなに喜んでいるホープ様を見るのは、初めてだった。


「ちょっと疲れたから、長めに休む……ふぁ~」

 ホープ様は、メルトドラゴンに関する追加情報をまとめ天界に送ると、そう言い残して、再び自室へ戻った。


 古文書の予言が外れたという事実の裏に、過去何度も繰り返してきたホープ様と人々の挑戦があったこと、そして、

 過去の歴史の中では生まれなかった唯一の閃きがあったこと、地上の人々が気づくことは、きっとない。


「ホープ様。本当にお疲れさまでした。ゆっくりとおやすみなさい」


 私は、これから先、永遠に続くであろう日常をモニターで眺めながら、

 ホープ様と人の試行錯誤について静かに振り返り、余韻に浸っていた。


「ホープ様はいつも人をほめたたえているけれど……ホープ様も、十分すごいですよ」

 気づかないうちに、私は独り言をつぶやいていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ