第十四話 星での生活 一日目
「よいしょっ、よいしょっ」
私は今、雪山を登っている。
今日は、星での生活一日目。絶対にやりたいことがあった。そのために登っている。
手がかじかみ、足先の感覚がなくなってきた。
どんなに体を動かしても体が温まることは無い。
本来なら、全ての理を司る神である私、歩く必要なんて全くない。
だけど、せっかく人間の体が許されているのだ。
人と同じ視線で生活の全てを味わいたい。
それに、この苦行こそが後の喜びにつながるんだ、と多くの人々が言っていた。
「せっかくだから、神の力は使わないって決めたんだから」
そうつぶやいて私は自分の力で一歩一歩雪山を登る。
普段運動なんてしない体には、なかなか大変な作業だ。
「こんなことしようって思う人もいるのよね……、つくづく尊敬するわ」
歩いていると段々と、体の芯まで冷えてきた。
「私は、神様だし……。寒さなんかでは死なないよね……」
神様の体はとても丈夫。それに神様のローブはとても温かい。
だから人の体より、ずっとずっと寒さに耐えられるはず。
そもそも体の構成を物理から精神体へ切り替えることのできる神様。
凍死なんて事故は聞いたことない。寒かったら体の構成を精神体に切り替えればいい。
寒さという原因を物理的に遮断することができる。
「あれっ?だとすると、今、人と同じ体の私は危険なのかな……?
まあいいか。なんとかなるよね」
神様は宇宙空間をさまよう事もある。
その分、人間より丈夫に作られているはずだ、と信じることにした。
時折、何か聞こえた気がして振り返る。
振り返っても、雪がふぶいているだけで何も見えない。
一応、真昼のはずなのだが、空は厚い雲が雪を降らしており、真っ白い銀世界だ。
見えるのは、今私が通ってきた雪をかき分けた跡だけだ。
その私の通った跡も雪で少しずつ消えてきた。
「おかしいな……雪女だぁって叫び声が聞こえた気がするんだけどな……」
気のせいかと思って、私はまた、正面を向いて、一歩一歩雪山を登る。
◇
「あったまる~~」
私は、温泉にたどり着いていた。
星での生活、一日目。季節は真冬だった。
私は星についてすぐ、周辺の状況を確認し、秘湯を見つけた。
冬にやりたいことなんですか?神様に聞いてみたランキング1位。
「雪の降る景色を眺め、お酒を飲みながらの温泉」
本当に神様に聞いてみたの?と思われるかもしれない。
もちろん、ちゃんと聞いてみた。
通りすがりのホ〇プさん
「やっぱり冬といえば、雪。温泉につかりながらの雪は最高だと思う!」
お仕事中のホ〇プさん
「露天風呂で飲むお酒……。いいと思う……」
ゆったり気分のホ〇プさん
「あまり知られていない秘湯って、なんか神秘的よね……」
雪だるま、かまくら、スキー、雪遊びを押さえつけての圧倒的一位だった。
みんな雪景色の温泉だって言っていた。
全部、同じ神様じゃないの?
みんな「ホ」で始まって「プ」で終わる3文字の名前なんだけど!
大丈夫。目元は黒く隠しているからきっとばれないはずだ。
そもそも、ほとんどの神様は星での生活なんかに興味ない。
おそらく「フユ?何それ。おいしいの?」こんな回答ばかりでがっかりすることになる。
「苦労したからこそ、この楽しみがある。確かにその通りだわ」
「神様ももう少し、人間の苦労を感じた方がいいのだわ」
そんなことつぶやきながら景色に酒にと、私は冬を堪能してた。
「ふぅっ」と一息つきながら疲れた体を休ませる。
他にも、やりたいことが山ほどある。
考え始めただけで、ワクワクが止まらない。
それにもちろん、コンテストもある。
気まぐれとは言え、参加を決めたコンテスト。私は絶対に手は抜かない。
さっき調べたところ、この星は中世のようだ。
地球の中世の頃を文明の流れを思いだす。
「うん。大丈夫だ。うまくいく。
でも今日だけは、お休み」私は温泉で一息ついた。




