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希望の物語  作者: よむよみ
第一部 私の地球(ほし)が消えちゃった

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第一話 私の地球(ほし)がきえちゃった

 雲一つない青い空。

 どこまでも続く青い海。

 どっしり構える広大な大地。

 そして、ゆったり日々の暮らしを重ねる人々。


「朝日や夕日も素敵だけど、快晴の青い空はやっぱり一番ね!」

 私は今、自室のベッドの上からモニターを見ている。

 モニターはとても高性能で、遠い地球ほしの様子を映し出している。


 今は村人が映し出されている。

「こら、お団子食べたでしょ」

「ううん、僕、食べてない」

「嘘はダメ。さっき置いたばかりなのに」

「だから、食べてないって」

 そんな母親と子供のやりとりを見ながら、さっきくすねたお団子を食べる。

 子供がかわいそうって思うかもしれないが、問題ない。

 なぜなら、このお団子は“神”へのお供え物であり、そして私は神。

 私こそが全知全能の神、名前はホープ。だから問題ない、よね。


 もしかして、ベッドの上にお皿をのっけるなんて、はしたないって思ってる?

 とんでもない。これはお仕事なのよ。

 地球ほしの観察っていう立派なお仕事なんだから。

 今は、たまたまベッドの上でお団子を食べながら仕事しているだけなの。


 こんこんこん。自室のドアを叩く音がする。

 私は、お団子の置かれたお皿を軽く隠し、モニターを机に戻し、椅子に座った。

「はい、何かしら?」


「ホープ様。失礼します」と言って、メイド服を着た女神が入ってくる。

 彼女はミカエル。私のお使いの天使だ。


 お皿も隠したし、観察しているふりできているわよね、と思っていたんだけれど……。

「お茶をお持ちしました。お団子にはお茶ですよね」

「お団子?何の事かしら?」もしかして、ばれている?私は知らないふりをした。

「あら、口元にあんこがついてますよ」

「えっ」私は急いで口元をふいた。

「口元のあんこは嘘です。ホープ様はいつもきれいなお顔ですよ」

 やられた……。こうなった時のミカエルは少し怖い。

 口調はいつも通りなのに、顔には怒りマークが見える。

 さらに、ミカエルはベッドの上に視線を落とし、また寝ていたのかと小さくつぶやいている。

 全てばれていた。やっぱりお団子もベッドの上での仕事もだめみたい。


「最近、たるみすぎではないですか?

 お供え物だからと言って、ほどほどにしてください。

 彼らにとっては大切な食料なのですよ。

 それに神たるもの、もう少し生命の規範となるべきではございませんか?」

 怒られた。ミカエルはこの頃、私のことをゴミを見る目で見ている気がする。

「はあい」気のない言葉を返した。


 こんな感じで、素敵な私の仕事――地球ほしの観察は続くと思っていた。

 はずだったのだけれど――



 それは唐突に訪れた。モニターが突然、白い光を発した。

 いや、地球ほしが白い光に包まれていた。

 そして、地割れが発生し、地面が崩壊し、大地が消し飛んだ。

 地球ほしが消えた。


「あれっ?えっ?

 何、何が起きたの?

 さっきまで普通にのんびり星を眺めていたのに……」

「星が、消えました」

「わっ、私の地球ほしがきえちゃった」


 私の戸惑いに、的確に一言で状況を表現してくれたのは、ミカエルだった。

 わかっていることだったけれど、あまりにも急で理解ができなくて、言葉に出来なかった一言をあっさり口にした。

 私は衝撃的な一言を、ただ繰り返すだけだった。


 今まで、洪水、噴火、飢饉、寒冷、多くの災害は経験してきたけれど、星の消滅はもちろん一度もない。


 落ち着け……。落ち着くのよ、私。

 この程度の事……、は今まで経験してこなかったけれど、しっかりと対処しなくてはならない……。

 だって、私は、神。全知全能の神なのだから。


 静かに深呼吸を繰り返し落ち着きを取り戻し、執務室に移動し、椅子に座る。

 ミカエルは早々に執務室に戻って席に着き、モニターを高速に操作しているようだ。


「なぜ消えたの?」私はできるだけ冷静を装いながら、向かいの席に座るミカエルに尋ねた。


「どうやら、メルトドラゴンに寄生されていたようですね。映像をご覧になりますか?」

 ミカエルはとても優秀で、早速、地球ほしの消滅の瞬間、および原因となる場所を特定し、大きなモニターに映し出していた。


 私は椅子を大きなモニターの前に移動し、おそるおそる確認した。少し大きめの卵が映っていた。

 その卵からちっちゃなドラゴンが孵化すると同時に、光を放ち地球ほしを消していた。


 メルトドラゴン……、聞いたことがある。

 星を破壊する寄生生物だ。最近、天界で噂をよく聞くようになってきた。

 神になって初めて買った星だったのに、まさかそんな寄生生物に寄生されていただなんて――。


 ミカエルはとても落ち着いた表情で、おそらく一番効率的な解決方法を口にした。

「どうなさいますか?また、新しく別の星を購入されますか?」


 でも…、私はこの星が気に入っている。

 それは見た目の美しさだけではない。いつもの穏やかさだけではない。

 今までだって、多くの問題が起きてきた。

 そしてそのたびに立ち向かい解決してきた。

 神の力を持つ私ではなく、神の力を持たない人々が解決してきた。

 そんな人々の姿に、私は、魅力を感じている。

 こんな素敵な地球ほしを簡単には忘れられない。

 無かったことになんてできない。


 星が消えてからわかる。

 さっき私が食べたお団子だって、彼らの必死の祈りだったのだ。

 一年頑張ってようやく用意できた神への感謝だったのだ。

 そう思うと、気軽に食べてしまったことに少し罪悪感を覚えた。

 お団子の味を思い出す。私がなんとかしなければならない。


 私は、ミカエルの問いに答えた。

「いいえ、私はこの地球ほしが気に入っているの。なんとかする。

 私は神、全知全能なんだから」


「ですが、今、天界でも解決策がないと話題になっていますよ」


 そう、ミカエルの言う通りだ。

 神は全知全能といっても、星の時間をもどしたり、災害を起こしたりはできるが、星の生命に対する直接的な干渉はできない。

 以前は、生命に対して多くの干渉が認められていたらしい。

 しかし、生物に対しあまりにもひどい扱いをする神がいたため、それ以降生物への干渉は封じられ許可制となっている。

 今となってはそんな経緯は忘れ去られ、「生物へは干渉できない」と思っている神がほとんどだった。

 それに、仮に干渉の許可が下りたとしても、神様は全ての生命に公平で平等。

 メルトドラゴンだけを駆除する方法は取りたくない……。


 結局、メルトドラゴンの星消滅に対する解決策は無かった。

 星なんて無限にあるからと放置した結果、今では天界でも大きな問題になってきている。

 新しい星の感染率は、ついに1%程度まで上昇してしまったらしい。


「とりあえず、時間を戻します」

 私は神の力を使って、地球ほしを買ったばかりの頃まで戻すことにした。

 私はうやうやしく手を挙げて指を鳴らすと、地球ほしは静かに元の美しい姿へと戻り始めた。



 地球ほしが元に戻るまでの時間に、私はミカエルが用意してくれた地球ほし消滅の映像を見返していた。


 仕事として初めて手に入れた星。

 青くて美しい星。

 勤勉な人々が暮らす星。

 他の動物たちだって自然と共生し豊かな星を彩っていた。


 もちろんいい事ばかりではなかった。

 寒冷による寒さだってあった。

 大きな地震による津波だって押し寄せた。


 でも、人も動物も一生懸命生きていた。

 精一杯、生命を未来につなげていた。

 そうして順調に文明が育っていった。


 そんな美しい星が、一瞬で消えてしまった。


 もっと未来があると思っていた。

 どんな未来があるか楽しみにしていた。

 きっと素敵な未来があると待ち望んでいた。


 私は、地球ほしの未来がみたかった。

 人々や生命がここまでつないできたバトン。

 必ず未来につなげよう、私はそう決意した。


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