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さすがに1000年は飽きたから。  作者: ボヌ無音
第一章 魔女、外に出る。

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実力を見せる。2

 私はブラムウェルに連れられ、研究室へやって来た。

 研究室と言っても、資料や素材が置いてあるような場所だけではなく、実際に戦闘系の魔法を試せる試験場もあるようだ。

 ブラムウェルにとって、強い冒険者や騎士が集まるこのミ・ノヴィアの地は、宝の宝庫らしい。


 だが私の魔法を撃ってくれ、と言われたら……研究室が全壊してしまう。

 上位の攻撃魔法を頼まれたら、部屋の保護から始めないとな。


「何か見たいのはあるか? 伝説とか神域でも、あれば見せられる」

「……というかどれ程の魔法をご存知なのですか?」

「さあ。私も聞いてみて試したら出来るかもしれない。全ては把握してない」

「なんと……。ではまず、召喚系をお願いしたいです。ええと、上位悪魔などは?」

「出来る。――〈地獄の番人(ヘルズ・ガード)〉」


 これは文字通り、上位悪魔である地獄の番人を呼び出す召喚魔法だ。

 階級は『伝説魔法』にあたる。

 番人は人を選び、命や魂を取ることがある。運良く成功しても、番人が付き従ってくれるとは限らない。


 私の場合は――


『よーう、嬢ちゃん! 久しぶりだな!』

「久しぶり。300年くらい?」

『最近呼んでくれねぇから暇だったぜ。なんだ、誰かを殺したくなったか?』

「いや。試しに魔法を使っただけ」


 ――私の場合は、〝マブダチ〟である。

 番人は死者や悪魔、魔族に詳しい。暇していた頃に召喚成功させたこともあり、いい話し相手になってもらった。

 他にも召喚に成功した者たちもいるが、一番話を分かってくれそうなのは番人くらい。


 突然の召喚で焼け野原にしたり、人を殺されてもたまらないし。

 まだ現世に近い存在のほうが、常識があるのだ。


『俺レベルを試し打ちたぁ、やるねぇ……』

「もう帰ってもいい」

『もう少し居させてくれよ! たまの休みってやつだ』

「分かった」

「り、リサ様……」


 おっと、ブラムウェルを忘れるところだった。


「彼は地獄の番人。友人でもある」

「地獄の番人と友人!?」

「他の悪魔はここで出すのは危ないから、彼にした」

「ホカノアクマ!?」


 キャパオーバーのようだ。何を言ってもオウム返しになっている。

 まだ準備運動の段階なんだけど、この調子で色々魔法を見続けられるのだろうか。


「……分かりました。で、では次は、攻撃魔法を」

「あ、待って」


 ――〈盾の女神の抱擁〉。

 最高位の防御魔法をかければ、私が何をしようがこの研究室は壊れないだろう。

 何を注文されても対処出来る。


『嬢ちゃん、えげつねぇな……』

「壊れたら困る。私はお金が無い」

「え? 今、何かされたのですか?」

『無知な人間風情に教えてやろう。こいつは今、この部屋全体に防御魔法を掛けた。しかも神の領域のものを』

「なっ……!」


 ブラムウェルが言いたげな言葉が、手に取るように分かる。

 『何故言ってくださらないのですか』だ。

 別に見せてやるとは言ったが、逐一報告する義務もないだろうに。


「何故言ってくださらないのですか!?」

「ハイハイ、次から言う言う」


 さてさて、攻撃魔法か。的となる何かはないし、それも生成するべきだろうか。

 どうしようかと視線をうろつかせていると、召喚したばかりの番人と目が合う。

 番人は私を見るなりニタリと笑ってみせた。良い予感はしない。


『俺が相手してやろう』

「そういうと思った」

『……とはいえ、耐えられる攻撃にしてくれよ?』

「はいはい」

「ま、まさか、地獄の番人とリサ様の戦闘が見られるなんて……」


 ま、人間相手にするよりかは、安全で楽だ。

 それに的が相手でも加減は必要だ。調整を失敗すると部屋ごと吹き飛びかねない。

 今は防御魔法を張っているからそれはないとしても、魔法の効果をきちんと発動する前に、的が消滅することだってあり得る。


 ……と、なるとあまり強い魔法は使えないと見た。

 通常の魔法を、少し特殊な使い方で見せてやるとしよう。


「じゃあ行くぞ」

『おう』

「〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉・十重(ディカプル)

『はっ!?』


 〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉・十重(ディカプル)が発動されると、大量の光属性の矢が番人に向けて放たれた。

 雨とは言っているが、結局は雨のような矢を表している。

 もはや雨というよりも機関銃に近く、十倍にもなった大量の矢は神聖という名前すら恥に思える豪快さ。


 これは通常の〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉を十倍にした〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉だ。

 魔法の重ねがけは、魔法研究の際に生み出した自己流。

 書庫の書籍には記載がなかったため、空白の期間に人間が開発しなければ、ある種の私のオリジナル魔法とも言える。


 そしてそもそも、通常の〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉は上級魔法だ。

 威力も十分に戦っていける強さだが、それを十倍にしてみたわけだ。番人なら耐えられるとは思うけど――。

 そう思って見てみると、なんとか耐えているようだ。

 上級魔法とはいえ十倍はやりすぎたか。


『……くっ』

「おっ、耐えた」

『なんだありゃ! 殺す気か!?』

「これくらいでは死なないと思った」

『一回地獄の門が開いたわ!』


 三途の川が見えた、みたいな言葉だろうか。

 とはいえ普通の人間だったら遺体すら残らないほどの豪雨だった。

 私の凄さの少しくらいは披露できただろう。


「リサ様、今のは一体……」

「〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉・十重(ディカプル)。〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉を十倍にしたものだ」

「……十倍!? 同じ魔法で重ねて使えるのですか!?」


 そう。通常の魔法では、『同一の魔法使いからの同じ魔法』は効果は一度まで。

 同名の魔法を何度も使用したい場合、その分人数を集める必要がある。

 例えば防御魔法を何重にもしたい場合、複数の魔法使いにかけてもらわねばならないのだ。


 まぁそもそも、人間程度の魔力で複数の魔法を何度も展開する、という状況はめったに無いだろう。

 それこそ命の危機に陥ったり、もう死んだっていいという決死の覚悟があるときだけだ。


 私が何故この『魔法の重ねがけ』を開発したかと言うと。

 単純明快――楽だから。

 いちいち別の効果の魔法をわざわざ発動するよりも、同じ効果のものを何度も一気に出せれば楽じゃないか。

 そう思ったから、時間と研究を重ねたすえに、この魔法を開発した。


「こ、今度ぜひ教えてください」

「気が向いたらな~」


 人間向きに改良しないと教えられないし、ね……。

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