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さすがに1000年は飽きたから。  作者: ボヌ無音
第一章 魔女、外に出る。

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実力を見せる。1

 それから、アレックスから現在の世界常識に関してを簡単にレクチャーしてもらった。

 魔法に関する常識はあまり変化がないようで、私が本で得た知識がそのまま活きるらしく、有難い限りだ。


 それと、書庫の本が出来てから既に千年以上が経過しているようだ。当たり前である。

 その間に新たな勢力や、国、貴族、文化が生まれている。

 知識はゆっくりとアップデートしていくとして、問題は手段だろうか。

 図書館などがあればいいが、また十年単位で入り浸りそうで恐ろしい。


 時間が無限にあると気付いてからは、人間の価値観から離れたように感じる。


「副団長。お時間よろしいでしょうか」

「ああ。そんな時間か。リサ殿、すまないが続きはブラムウェルに引き継ぐ」


 細かく説明するには時間が足りないようで、アレックスは惜しみながらも客室を去っていった。


「お忙しい副団長に代わりまして、続きは私が」

「不安しかない」


 アレックスから引き継いだのは、ずっと黙っていたブラムウェルだ。

 最初のアレに比べると、大人しくなり過ぎていて心配になる。


「ご安心ください。リサ様をご不快にさせるような行動は慎みますよ」

「……何があった?」

「彼との会話中、あなた様を〝視させて〟もらいましたから」


 血を吐いて倒れていないあたり、別の手段で調べたのか。

 スキルの方が便利そうなのに、それを上回る力があるのだろうか。


「他者の情報を見られる魔法はご存知ですか」

「幾つか知っている」


 そう、分かりやすく言うと『ステータスを見られる魔法』だ。

 階級ごとに精度は異なるが、ステータス閲覧系の魔法は幾つも存在する。


 私は神域魔法も知っているが、ブラムウェルは普通の人間。

 可能性があるならば上級魔法。となると閲覧出来る情報はごくごく僅かだ。

 私の情報の一割も見れないだろう。


「私が扱えるのは、超級の魔法です」

「超級!?」


 これは想定外だった。

 確かに文献には『通常では到達できない、英雄や神童、天才の領域』との記載があるだけ。

 何も、人間では辿り着けないとは書かれていない。


「じゃあブラムウェルは凄いんだな」

「滅相もありません! リサ様に比べたら、私なんて道端の石です!」


 どうしてこの人は――自分を貶しているのに、ニコニコと満面の笑みを浮かべているのだろう。

 超級さえ使える天才すら、狂ってしまうのか。


 まぁ、狂ったブラムウェルは置いといて。

 超級を扱えるともなると、幅が広がる。


 ――魔法の階級は、ざっくりと8つ。場合によっては9つに区分される。


 最も弱く、そして最も基本でもある『基礎魔法』。

 人によっては『生活魔法』と称するものもおり、その名の通り一般人や魔力の弱い人間でも扱える基本的な魔法だ。

 煙草に火をつけたり、ちょろっと水を出したり。些細な日常を、便利にするための魔法。


 その次が、『下級魔法』と呼ばれる。

 ここから必要最低限の戦闘が可能になる。

 戦闘と言っても、子供の喧嘩に毛が生えたようなもの。使い方によっては大怪我を生むが、世間一般では強いとはされない魔法だ。

 よくあるだろう。ペン一本で数人もの精鋭を殺した、なんてストーリー。

 どんなに弱いものだとしても、使い方や、その術者によっては脅威にもなりえる。


 それに、戦闘が主となる人間――冒険者は『中級魔法』以上を求められるとのことだ。

 この階級を一つは覚えていないと、渡り歩くのは難しいとされる。

 また、『上級魔法』を一つでも使えれば、安泰とも言われる。


 そして『超級魔法』はごく一部の天才のみが使える。

 目の前のブラムウェルが、そのごく一部というわけだ。


 更にその上、『英雄級』『伝説級』『神域』――これらは、人類では到達は不可能だろう。

 長命の種族や、魔族、人外であれば習得は可能とも言えるが、間違いなく人間では無理だ。

 私の読んでいた書物が出た千数百年以上前から、人間が変わって、化物波の魔法を扱えるようになったとは思えない。


 そして最後に――『禁忌』。

 これは人によっては、階級に含めないものもいるらしい。

 その名の通り、禁じられた魔法、禁術だ。

 これを階級に含めないのは、至ってシンプル。禁じられているから、あってはならないから。


 ――そんなわけで、超級ともなると情報の読み取りがもっと深く追求できることだろう。

 とはいえ超級でもステータス閲覧系は多くあるからな……。


「何を使ったと思いますか?」


 うわ、だるい女みたいなこと言ってきた。

 異世界で。男が。魔法を気付いてもらうために。


 残念だが私は怠け者なので、ここで脳みその情報を掻き回して思考するということはしない。


 ――〈神のみぞ知る〉。

 こっそり発動した神域魔法で、過去に発生した魔法を視る。


「……んん?」

「どうされました?」

「お前、魔法を使ったって言ったよな?」

「ええ」

「〈超級・開示(ディスクロージャー)〉じゃ、私を視れないはずだぞ」


 〈神のみぞ知る〉で視た過去。

 ブラムウェルの過去に使用した魔法を視たが、そこで使われていたのはあろうことか、〈超級・開示(ディスクロージャー)〉。

 閲覧系の魔法で、基礎とも言える。

 もちろん、下位である〈下級・開示(ディスクロージャー)〉、〈上級・開示(ディスクロージャー)〉なども存在するが――階級が上がって閲覧が可能になる範囲が増えただけで、基礎には変わりない。


 超級ともなればもっと別の派生した、ステータス閲覧魔法があるはず。

 習得方法が難しいということなのだろうか。

 私は既に魔法を〝知っていた〟し、習得方法に関してはわからないからな……。


「ええ。視れませんでした」

「はあ?」

「今まで誰でも視れていたものが、視れなかったんです」

「……ああ」


 なるほど、理解した。

 閲覧系の魔法は、上の存在を視れない。

 特に弱い魔法だと、弾かれたり拒否されたり、場合によっては相手に呪われたり攻撃されたりしかねない。

 上位存在でも防げない魔法を用いれば視れるが、そもそもそんな『上位存在でも防げない魔法』は人間でも使えないわけで。


 ブラムウェルを養護するわけじゃないが、〈超級・開示(ディスクロージャー)〉というのも人類においては高みにある魔法だ。

 ま、視た相手が悪かったというわけだ。


「なので、ギルドへ行く前にご相談――いえ、お願いがあります」

「なに?」

「あなた様の実力を、見せては頂けませんでしょうか」


 厄介なことになった――とは思わなかった。

 魔法の専門家に、現在の常識において私の力はどうなのか、はっきりしたかった。


 もちろん、規格外なのは理解している。

 文献と一部の常識は同じようだ。だがもし、この旅をもっと続けるのならば。

 気をつけるべき力を理解していても、良いのではないか。

 面倒事を避けるためにも。

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