表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

下水道の罠。

 台所にあった階段を降りると、下水道に繋がっていた。

 流石はスラムの下水道だ。通常の下水道でも鼻を塞ぎたくなるが、それを遥かに凌駕する。

 たとえ死体があったとしても、隠せるほどの悪臭だ。

 流れる水も非常に濁っており、時折何か得体のしれない物体まで流れてくる。

 ゴミ箱代わりに下水に色々と投げ捨てているのだろう。

 それにホームレスが居着いていると思ったが、ホームレスすら住みたくない場所のようだ。

 人の気配もない。あるのは虫や鼠の類ばかり。


 ……いや、住まないように言っているのかもしれない。

 あの男の家から逃げ込んだ先がここなのだ。

 男の庭として利用されていたのであれば、ここを使うなと命令されている可能性もある。


 様々な憶測を考えながら、地下通路を歩く。

 非常に広いようで、私の足音が都度響いていた。

 これは相手にも気付かれているだろうし、私もこれを逆手に取れる。


 少しだけ立ち止まり、耳を澄ませた。

 流れる水音、虫や鼠の音。細かな音が耳に届く。

 その中で一つ、小さく反響しているパタパタという音。足音だ。

 それこそもちろん、ホームレスという可能性もあるだろう。

 だがこの逃げるような駆け足は、まるで追われて急いでいるようだ。


「方向はこっちで合っているはず」


 私も足音に向かって、進み出す。

 その瞬間、足元でカコンと小さく音がした。何かを踏んだようだ。

 下を見ればタイルの一つが沈んでおり、明らかに何かの罠だ。


 すると普通の床だったそのタイルから、針が出てくる。

 全てのタイルが針付きというわけではなく、不規則に通常のタイルと針付きタイルが存在している。

 罠に変な遊び心を入れなくてもいいというのに。

 運動神経が良いものは、うまく梁を避けて跳躍していけば、無事に切り抜けられるだろう。


「まぁ、私は面倒なことは嫌いだからな」


 針に意識を集中させ、一気に引き抜く。

 魔法を使うまでもない。魔力のみを応用させた、サイコキネシスのようなものだ。

 するとタイルから、針のみがズボズボと抜けていく。


 針からは何かしらの液体が滴っていた。

 先程の毒矢の件もある。恐らく仕込んであるのは毒だろう。

 この場で捨てていくのもいいが、これからここに来る連中が誤って触れてしまったら困る。

 テナは場を収拾したら合流を選ぶだろうから。


「ふむ。だが、このままだと邪魔だな」


 持って歩くのはいいが、如何せん針の量が多すぎる。

 ざっと数十、百以上はあるかもしれない。

 確実に追手をまくための対策なのだから仕方ないとも言えるが。


 少々強引だが、このまま押し固めて小さくしてみるとしよう。

 針を一点に集めて、ぎゅうぎゅうと押し固める。あり得ないほどの力で固めれば、針ですら圧縮されていく。

 最終的には1センチほどの玉にまで、圧縮ができた。


「これは取っておこう」


 さて、捜索を再開しよう。


 暫く歩くと、今度は鼠の大群が押し寄せてきた。

 歩ける場所を全て埋め尽くすような勢いで、こんな下水のどこに居たのだというほどの量。

 壁にまで及ぶほどだ。おぞましさに寒気がする。

 燃やし尽くせればスッキリするだろうが、何が有るのか分からない地下通路。

 ここは――


「〈冗長たる凝固(レングシー・フリーズ)〉」


 〈冗長たる凝固(レングシー・フリーズ)〉を発動すると、地下通路が一気に凍りつく。

 鼠を包み込み、私の周囲数メートルが氷の世界へと変化した。

 この魔法の効果は長いから、テナが来て帰るまでは持つだろう。

 鼠の取りこぼしもないようだし、このまま進むとしよう。


「しかし……あれも毒鼠とかだったりするのか?」


 毒矢、毒針と続いてきたからな。

 あれも罠か、本当に地下水路に住んでいる鼠なのかが分からない。


 気を取り直して進もうと思えば、今度は地鳴りがした。

 それだけではなく、地下通路全体が揺れている気がした。

 暫くして前方から、巨大な丸い岩石が流れてくる。よくフィクションで見る、トラップだ。

 ここまで来ると、笑えてくる。


「何でもありだな……」


 もうまともに対応するのが、面倒に思えた。

 あれだけの高度な魔法を人間に渡していた割には、こういった罠が人間的すぎる。

 禁忌魔法に手を出すくらいならば、もっと上位の存在を考えた罠を張り巡らせるべきだ。


 苛立っていても仕方がない。まずは、目の前の岩石をどうにかしなければ。

 頭の中にある魔法を探って壊すことすら、煩わしい。

 毒針のときと同じようにしよう。魔力を適当に操れば、岩程度ならば破壊できる。


 案の定、岩石は私の前にやってくることなく、無事に破壊された。

 本当に種も仕掛けもない、ただの丸くよく転がる岩だった。


「はあ……」


 つまらない。くだらない。

 ため息が出てしまう。ソーマに作らせたほうが、もっと凝った遊びがいの有る罠が出来るというのに。

 もっとも、あいつはそんなことしないのだが。

 むしろ私の作った罠を破壊する側だったな。


 粉々になった岩を見下ろしていると、また足音が反響して届く。

 どうにも近い。

 それに今度は、水の上を走る音まで聞こえる。

 少しすれば私の足元にある水が、ゆらゆらと揺れた。


「……近い。まさか、視認できる距離で、手動で罠を発動させていたりしないよな?」


 この期に及んで、そんな滑稽なトラップだったら。

 暇を持て余して外に出た、私に謝ってほしいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ