表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

聞き込み。2

「どうした」

「探してるの?」

「何を」

「……あの、んと……」


 子供は口での説明はせず、ジェスチャーのみで説明しようとしている。

 その行動に、どうにも怪しさを覚えた。


 年齢的に、10歳にも満たない子供だろう。

 だがそこまでの年齢ともなれば、ある程度の会話が可能なはず。

 教育を受けておらずとも、彼女の少ない知識のなかで説明ができるはずだ。


 だがどうだろう。少女は、一言も説明となり得る言葉を発していない。

 故に私はそのジェスチャーを、じっくりと観察する。


 両方の肩の上で何かをつかみ、それを頭上にまで引っ張っている。

 何かを――フードを被るような動作だ。

 何度かそれを繰り返し、分かってくれと言わんばかりに瞳で訴える。


「……言えないのか」


 少女は頷かなかった。

 涙が溢れそうな大きな瞳が、ただじっと見ているだけだ。

 ……それで十分だ。


 それから、私に通じたと分かった少女は、幾つかジェスチャーを見せてくれた。

 苦しそうにする姿。首を切るような動作。

 まるで寸劇が始まったようだった。

 演技経験のない少女が、ここまでリアルな芝居をしている。

 ――いや、芝居ではなく、実際に見てきた光景を説明しているだけ、か。


 ここまで来てようやっと分かった。

 言葉に呪いがかかっている。発動条件は――


「男に関連することを言うと、死ぬ呪いだな」


 またも少女は、頷かなかった。

 真っ直ぐな瞳が助けを求めている、それが答えだ。


「分かった。いることだけ分かるならば、それでいい」


 私は少女の前に、手を差し出した。


「手を」


 少女は一切の警戒心を抱かず、その上に小さな手を乗せてくる。

 ……少しは考えるべきだな。呪われた原因が、少しわかったような気もする。


 さて、乗せてもらえれば、あとは中を覗き見るあれだ。


 ……確かに呪いが染み付いている。

 呪力が魔力に混ざり込んでいるようだ。臓器にまとわりついている。

 確実に殺すための術式だろう。

 生憎呪いには明るくないため、この魔法も知らない。


 だが、そうだな――面白そうだ。


「これは貰ってもいいか」

「?」

「そうだな、意味がわからないよな」


 だが貰ってしまおう。

 呪いを奪い取ると、体の中に異質な空気が流れ込む。本来あるべきではない、異物だ。

 ぶるりと震えを覚えた。気味の悪い寒気だ。

 呪われているという確信を、私に抱かせてくれる。


「……よし。これで大丈夫だ。お前にかかっていた呪いは、私が引き継いだ」

「え……!?」

「だが念の為、全てが解決するまで黙っていろ。今まで通り、話題に出すな」


 子供は首がちぎれんばかりに、頭を縦に振った。

 何度も何度も頭を下げ、体全体で感謝を表している。

 幾度もの礼を経て、彼女はスラムの街へとまた戻って行った。


「せ、先生、呪いを引き継いだって……!」

「ああ。見たことのない術だったからな、勉強も兼ねて」

「そうじゃなくって……!!」

「では何だ?」


 まったく、よく分からん弟子だ。何を心配しているのか。

 そもそも私は魔法はそれなりに得意だが、呪いは専門外。

 魔法と似ているが、その邪悪さは果てしない。


 どれ、試してみるか。


「禁忌魔法の使い手の、黒いフード男を探して、い、ル゛ッ」


 言葉を発した瞬間、口から血が出た。

 否、中身か弾けたのだ。その反動で血反吐が出た。

 心臓が、肺がぎゅうぎゅうと痛い。攻撃魔法で肉体を切られ、焼かれ、千切られるような痛みとは違う。

 内部の痛みだ。毒薬に近いのだろうか。


 それだけじゃない。身体中が痛む。

 節々も、骨も、肉も皮も、何もかもが痛い。

 死の痛みとはこんなものだろうか。


「あだだだだっ、しぬっ、しぬしぬっ、イデデデ!!!」

「何しているんですか!?」

「呪い゛……、の、効果を、う、あぁあぁっ、確かめる……」

「本当に何しているんですか!?」




 しばらくのたうち回った末に、私の回復力が上回り始めた。

 呪力の効果が切れたのだろう。

 じわじわと回復が広がり、潰れた内部も、折れたような手足の感覚も消え去っていく。


「……げほっ、ふう……。どうやら呪いよりも、私の方が強かったようだ。持続性も短く、つまらないな」

「……はあ……頭が痛いです……」

「どうした? 寝不足か?」

「…………」


 なんだ、凄く睨んできて。怖いぞ。うら若い乙女がする顔じゃない。

 テナは今日は表情が豊かで良いな。うむ。

 私はふぅと息を整え、また再び口を開く。


「禁忌魔法の使い手の、黒いフード男を探してる」

「ちょ、ちょっと!」

「……ふむ、発動しないな」

「あれ?」


 つまり、呪いの効果は一度きりということ。

 つまらない、詰めが甘いな。

 いや、むしろ――


「――何か、条件が? 一度きりなのか、一度死ねば終わるのか。相手の耐性や、蘇生を考慮されていないのか? 或いは私へ効果が移ったことで、効力が薄れている? そもそも持続時間も決まっているかもしれない。ふむ……」

「先生、釘を刺すようですが人間は基本的に一度しか死にません」

「おお」


 目からウロコとはこういうことか。

 いや、違うか。テナには死に慣れるなと言っておきながら、私は死なないことに慣れている。

 人間はもろく死にやすいことを、思い出した。


「確かに言われてみればそうだ。今の痛みの箇所と持続時間を考慮すれば、人が死に至るには十二分だな」

「この前の貴族みたいに、呪いを返せば良かったのでは……」

「あれは知っている呪いだったからな。それにこの効果を返してしまえば、色々と尋ねる前に死んでしまうだろう」


 まあ、死者の蘇生なんぞ容易いのだが――それ以前の問題がある。

 倫理という問題もあるが――


「――スラムで死者を探すのは骨が折れる」

「それもそうでした……」

「しかし、これで追うことが出来るはずだ」


 私の体には呪いの〝匂い〟が残っている。

 あとは精霊の犬を呼びつけて、匂いから探してもらえばいいだけだ。

 さて、魔法を使おうか――そう思った時だった。


 ガタンッ、と激しい物音がする。道の隅に置かれていた荷物がガタガタと崩れ落ち、道端に広がった。

 何事かとそちらを見遣れば、物陰には何者かが立っている。

 フードを被った、青年が立っていたのだ。


「な、なんで生きて……」


 私と青年の視線がかち合った。

 互いに一瞬で顔色を変え、青年は一目散に走り出した。

 ――まずい、このまま逃走を許す訳にはいかない。


「待て!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ