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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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再び館へ。

 翌日。私達は改めて、昨日の貴族の家に来ていた。


「ほほほほ、ほん、本日はお日柄もよよよくくくく……」


 目の前にいる貴族の主人は、ブルブルと震え脂汗をかいている。

 顔色は青、いや、紫とでも言えるだろうか。とにかく顔色が悪すぎる。

 視線も定まらず、笑顔すら作れていない。


 主人は手招きをして私を近くに呼ぶ。耳打ちするように顔を近づければ、私にのみ聞こえるトーンで尋ねた。


「……あ、あの、冒険者様……。なぜ大魔法使い様が……?」

「あれが私の弟子だぞ」

「ハイィ!?」


 ……耳がイカれるかと思った。

 いや、実際イカれたかもしれない。軽度な傷だったおかげで、私の認識する間に回復している可能性もある。

 少なくとも、こんな至近距離で叫ばれれば、耳がおかしくなるのは必然だ。


「大魔法使イ様ノ……師匠……ガ……私ノ家ニ……無礼ニ振ル舞イ……アア……」

「大丈夫か」

「……」


 ついには喋らなくなってしまった。ブラムウェルという存在は、有名過ぎるが故に劇薬にもなり得るのだな。

 というか、この男は大貴族だろうに。

 もしや、自分よりも高い地位の相手があまりおらず、自分を脅かせる存在が現れたことによる恐怖――なのか?

 別に脅かすつもりもないのだが。


「夫人。旧館を見る」

「はい、お願いします……」


 使い物にならなくなった主人の代わりに、夫人へ許可を試みる。

 やはり肝が据わっている。私にあれだけ怒鳴っていただけはある。

 畏怖の念を感じるものの、主人のように明らかな動揺は見られなかった。




 無事に許可を得たため、私はブラムウェル、テナを連れて例の古い屋敷へと向かう。


「これから見せるのは、禁忌の魔法陣だ」

「禁忌……!」


 ブラムウェルの目が輝いた。単純な男だ。禁忌魔法につられて、子供のように期待している。

 本来であれば禁忌魔法に喜ぶなど、言語道断なのだが――私が狂わせてしまったのだろうか。

 いや、元々こういう男だったのだろう。

 とはいえ、彼の期待しているような禁忌魔法などではない。そもそもだが、失敗しているものだ。


「失敗したものだが、下手をすれば世界滅亡になっていた可能性のある陣だ。勉強のために見ておくといい」

「ありがとうございます!」

「わかりました」


 昨日は犬に連れられるがまま行っていた屋敷だったが、今日は目的地が分かっているため、寄り道もせずにそちらへ到着できた。

 あいも変わらず廃れた屋敷は、我々を歓迎するわけもなくただそこに建っている。

 背を屈めて屋敷へ入り、迷うことなく部屋の扉を開けた。


『む?』

「うん?」


 ……まだ学者がいる。

 てっきりもう帰ったと思っていたから、気を抜いていた。まさか残っているとは。

 丸一日経過しているはずなのだが。


「お前、まだ居たのか」

『まだって、一日しか経っていないが』

「それもそうだが……」


 まったく、指導者の時間の価値観で考えないでいてほしい。

 確かに万を超える年齢の彼等にとっては、一日など些細な時間に過ぎないだろう。

 だが指導者達の価値観でここに滞在した場合、旧館を取り壊すときに人間と相まみえることになってしまう。

 ここは彼等の暮らす『指導者達の街』ではない。人間の住む世界だ。


「あと数日で屋敷が解体されるだろうから、早めに撤退をしないとだぞ」

『そうか、人間基準で考えないといけないのだったな』


 学者はまだ指導者の中でも、言葉が通じる部類で助かった。

 まだ3万歳と非常に若いため、頭も柔軟なのだろう。

 これで年寄りだったり、面倒な性格の指導者だとしたら、魔法陣の解析が納得するまで残っていたに違いない。


「あの、リサ様……こちらの方は?」


 あぁ、そうだった。弟子の存在を忘れていた。

 ブラムウェルが私に疑問を投げかけ、はっと我に返る。


「ああ。友人の学者だ」

『魔技の学者と言う。お前達で言う禁忌魔法で喚び出せる存在だ』

「学者、彼等は私の弟子であるブラムウェル・レイナーと、テナ・ソーヤマだ」

『よろしく頼むぞ』


 学者を紹介すると、テナもブラムウェルも、口を開けたままポカンとしている。

 見た目は人間に寄せているが、分かる人間が見れば人ならざる者であると理解できるはずだ。

 テナはどうかは知らないが、ブラムウェルには異様な存在だと察知出来ているかもしれない。

 それに禁忌の召喚術だと聞けば、人外であるのは当然のこと。


「詳しい説明は省くとして、彼は〝真実の指導者〟という、神と同等かそれ以上の存在といったところだ」

『癪な説明だが、定命の者が理解するにはそれが一番だろう』

「神と同等……?」

「それ以上……?」


 変だな。理解できる説明だと思ったが、オウム返しされてしまった。

 まだ人間には早すぎたのだろうか。

 私も理解するには時間がかかったし、これも徐々に慣れていってもらえればいいだろう。


「とにかく。こいつには魔法陣の解析で来てもらっていた。まだ帰っていないのは想定外だったが……」

「な、なるほど……」


 今は学者の紹介のために、ここに来たんじゃない。説明は後回しだ。


 床に描かれた魔法陣はまだそのままで、未だに学者が観察している最中だ。

 手を加えた様子もなく、昨日のまま。改変されてしまえば、昨日の状態を再現しなければならないからな。


「では説明するぞ。学者も、人間に分かりやすいように言ってくれるなら、補足してくれ」

『仕方ないな……』

「おおぉ……! 禁忌レベルの方に直々にご教授頂けるとは……よ、よろしくお願い致します!」

「お願いします」


 それから、私と学者で説明を始めた。

 この場で巻き起こった事件、謝った魔法陣、それに対しての質疑応答を繰り返せば時間がすぐに過ぎていった。

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