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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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難しいこと。

「つ、つまり、長男の侍女は次男を呪い殺すため、次男の侍女は長男に呪いを掛けていた、と?」

「そう言っている」


 あれから1時間が経過した。依頼を終えて帰りたいところだが、彼等から質問攻めにあっている。


 息子達2人は一気に体調が好転し、今では庭を駆け回っているほどだ。

 「二度と見ることのないと思っていた光景だ」と、両親とも涙を流していた。

 次男がテナを気に入っているようで、そのまま長男も合流し、テナが2人を見る形で落ち着いた。


「なんてことだ……。あの二人がそこまで、息子達に入れ込んでいたとは……」

「違うな。当主になれば〝礼〟が弾むだろう。金に目が眩んだだけだ」

「……そうですな」


 人間という生き物は、そんな程度だ。私が読んでいた1000年前の文献にも、同じようなことが書いてあった。

 人は年月を経ても、変わることは無い。

 技術や常識が巡り巡っても、結局は私利私欲を優先する者が必ず現れる。


「侍女達からは、責任をもって情報を引き出します。後に裁判など、表に出すつもりです」

「ほう。貴族なら揉み消しそうなものだが」

「……からかうのはおやめください。これでも歴史と矜持のある一族です」

「それは失礼」


 まあ、たまにこういう律儀で正義感のある人間もいるようだが。


「古い屋敷は、思い出として残しておきましたが……壊した方が良さそうですね」

「いや、暫く待ってくれ。弟子を連れて調査をしていいだろうか」

「調査、ですか」


 魔法陣は貴重な資料だ。

 様々な面倒事や、弁償金を肩代わりしてくれたブラムウェルのためにも、ここは見せておきたい。

 ……学者があのあと、消し去ってしまった可能性も否定できないが。


「きちんと〝門〟が閉じていることの確認と、弟子への勉強がてら」

「構いません。むしろ、安全な状態で取り壊しが出来るのならば、有難いほどです」

「ええ、お願いいたしますわ。あなたほどの実力者でしたら、問題ありません」


 理解が早くて助かる。今回ばかりは夫人も全面同意してくれていた。

 あとは再訪日まで、そのままの状態にしてもらえれば完璧だ。


「それまでは何人たりとも近づけないように」

「わかりました」




 それから少しの雑談を終え、気づけば外は夕焼けに染まり始めている。私とテナは帰ることになった。


「本日は本当にありがとうございました。報酬は通常通り、ギルド経由でお渡しします」

「分かった」

「テナおねえちゃん、ばいばーい」

「テナおねえさん、また来てください!」

「はい、また」


 子供2人は、テナによく懐いている。

 テナは子供の扱いが、苦手ではないようだ。

 となると、子守りなどの依頼も受けられるのではないか。私は人間の相手がそもそも得意ではないが、テナに任せれば――いや、頼りきりもよくないか。


 そろそろ帰ろうか――とした時。

 夫人が前に出てきた。隣には無愛想なメイドを連れている。あの中から厳選した、まともなメイドなのだろう。


「あの、無礼な言葉をかけてしまって、すみません」

「構わない。お前は母親としての務めを果たしただけだ」


 何かと思えば、ただの謝罪だった。

 子供たちは年齢にそぐわない過酷な人生を歩んでいた。だから彼女が神経質になるのも頷ける。

 これ以上、子供たちを危険に晒さないよう、愛する家族を守ったに過ぎない。


 それに、ほら。子ウサギや子猫がピーピーシャーシャー吠えたところで、可愛いなとしか思わないだろう。


「……ありがとう、ございます……」


 ただ真実を述べただけだと言うのに、母親は目に大粒の涙をためて今にも落としそうである。

 子供も回復したことだし、今後の主人の役目は夫人の疲れをとってやることだろう。


 私は「なんとかしろ」と言わんばかりに、主人へ顎で合図を送る。

 主人はハッとした様子を見せると、すぐさま妻の肩を抱きしめた。


「あの……こちら、お詫びと言ってはなんですが……」


 夫人がそう言うと、隣で待機していたメイドが動いた。手には、高級そうな包み紙が使われた箱を持っている。

 ちょうど、菓子折りのように見える。

 この世界における詫びのお菓子が想像できないが、大貴族様が用意した品なら満足できるだろう。

 私は早速、受け取ろうと手を出した。


「ほう、では――」

「先生」


 しかしその手は、テナによって叩き落されてしまった。

 まるで飛ぶ虫を落とすように、パシンと。


 この短い時間で、テナが大きく成長したのは理解していた。

 だがまさか、私の手を叩く行動に出るとは予想だにしなかった。

 別に痛みなどないのだが、私は驚いたまま固まって動けないでいる。


「ギルドの規約において、これは賄賂に当たります」


 テナは至極真面目な顔で、そう言った。

 悪意があって叩いたとは思っていないが、テナが叩いたのは、ただ止めたかっただけのようだ。


「そんなに厳しいのか」

「念の為、です」

「分かった」


 テナの目を見ると、ほんの少しだけ揺れていた。動揺していたのだ。

 意を決して、恐れを抱きながらも私に注意をしてくれた。

 その気持ちを汲まずして、どうしようと言うのだろう。

 それにテナがここまで来て、私を騙そうとなんて思わないはずだ。


「ということらしい」

「これは無知ですみません……! 失礼しました。これもギルドにお渡ししておきますね」

「……関係ない話ですが、チップでしたら、上限はありません。手数料は抜かれますが……ご検討くださいね」

「……! 良いことを聞きましたわ」


 ……なるほど、賄賂、チップ。そういうことか。

 菓子折りだったら底に仕込める。中の見えない箱であればあるほど、隠しやすいだろう。

 テナも冒険者だったこともあって、そういう話や経験があるのだな。


 前世では身近で聞いたことはなかったが、お偉方がそういうことをしていたという話も耳にしたことはある。

 結局は良いお金ではないのは確かで、私もトラブルにあわないためにも、避けたほうが良い。

 テナには感謝だな。

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