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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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犯人は。2

 古くからいるとされるメイドとやらを、急ぎ集めてもらった。

 間違いなくこの場には、熟練そうなメイド達がズラリと並んでいる。

 急に呼び出したというのにも関わらず、彼女たちは不満そうな様子を一切見せない。


 男児は早々に目が覚めて、今はテナと別室でおやつを食べている最中だ。

 大人の黒い事情を見せる必要はないからな。


 私はメイドを改めて観察する。いや、観察するまでもない。

 1人だけ、はっきりとした魔法の気配が残っている。魔力の痕跡とも言うべきか。

 仕事で魔法を使うこともあるだろうが、生活魔法程度で発生するような痕跡ではなかった。


 最も左端に立っていたメイドを、私は指差した。


「あれは誰だ」

「兄の乳母です。侍女も兼ねております」

「兄?」

「はい。優秀な子なのですが、不治の病で寝込んでおりまして……」


 てっきり、子供はあの男児だとばかり思っていた。

 ……もしや、病弱な兄にかまけていたせいで、男児の対応が遅れたのか?

 あの子供は冷遇されているという訳ではないのか。


 またもふつふつと怒りが沸き起こっているが、なんとか鎮める。目の前の犯人を何とかしなければ。


 私は〈生ける檻(アライブ・プリズン)〉を発動させた。

 獅子の剣ですら防げなかったのだ、メイドが抵抗できるはずもなかった。

 今回はただの檻として発動させた。足元から急にツタが出てきたと思えば、ちょうどメイド1人分の檻が作られる。


「きゃあぁあぁっ!?」

「何をなさるのです!?」

「逃げられては困るのでな」


 さすがの冷静だったメイド達も、いきなりの魔法発動に困惑したのか、列を崩して隅に逃げ始めた。

 私はそんな事など気にもせず、檻とその中にいるメイドへ近づく。


 近寄ってわかったが、どうにも〝臭い〟のだ。

 比喩などではなく、本当に臭う。何で嗅いだ臭いだったか……。

 それも追々確認しよう。


「お前、あの魔法陣はどこで知った」

「な、なんのことですか!?」

「あれは他者を殺す代わりに、使用者の命を蝕む魔法。知っていて使ったのだろう」

「……う、うそ、そんなこと書いて――」

「ああ、嘘だ」

「なっ……」


 魔力反応の時点で当たりなのは分かりきっていたが、本人の口から聞けるのが一番いい。

 そこで驚いている主人にも、私へ怒鳴っている夫人にも有効だ。


「何に書いてあった。言え」

「ほ、本です」

「誰から貰った」

「……っ」

「……はあ」


 なぜこの期に及んで黙ろうとするのか。

 もう自分の仕える相手の前で、犯人ですと吐露したというのに何を守ろうとしているのか。

 どうせ貴族を手に掛けたという理由で、有罪は免れない。下手をすれば処刑されると言うのに、黙っていても仕方ないはずなのだが。


 尤も、墓まで持っていきたいという気持ちは、発動させようとしていた魔法を知らないことが一番の要因な気もするな。

 禁忌魔法を使ったと言う割には、あまりにも無知で、平和な思考すぎる。


「事の重大さを理解していないようだな」

「……」

「あの子供の瀕死で済んだから良いものを、下手をすればミ・ノヴィア……世界が滅んでいてもおかしくない」

「……また、嘘ですか」

「そうだな。呼び出したかったものにもよるが」


 今回は猫だったが。もしも、私が出会った中でも酷い部類の指導者が呼ばれていたら。

 彼女の希望なんぞ聞きもせず、久方ぶりの人の世界に歓喜して、目につくもの全てを破壊していたことだろう。

 私もサンドバッグにされた嫌な思い出があるからな。

 文字通りサンドバッグだ。死なないからといってあの扱いは酷すぎるぞ、まったく。


 だから指導者との付き合い方は気をつけたいんだ。

 考えるだけで恐ろしい。


 メイドを見れば、完全に怯えていた。魔法の効果をよくもまあ、知らずに使えたものだ。


「うそ、そんな、だってあれは、呪殺するものだと……!」

「あれは禁忌の召喚術だ。成功していれば、代償として命や世界が消えていた」


 顔がどんどん青ざめていく。やっと理解したようだ。

 遅すぎるくらいだが。


「なぜ動揺する、分かっていてやったはずだろう」

「そ、そんな……」


 もう私を疑う様子はない。自分のしてしまったことが、どれだけ重いことなのかハッキリしたのだろう。

 ではだからといって、私は許すのか。このまま主人に渡して、はい終わりなのか。


 そうはいかない。

 あの魔法陣を教えた人間――もしくは存在を、特定しなければならない。


「もう一度聞くぞ。誰から貰った」

「…………っ、黒い、フードの男です。坊っちゃまを殺すために街を探していたら、彼から貰いました……」

「本は何処にある」

「も、燃やしました。手順では、燃やして川に捨てると呪殺が確定すると」

「チッ……」


 分かっていたが、用意の良い奴だ。

 ここまで来ると、呪殺というのもでっちあげた嘘だろう。おそらくだが、本を渡した人物は禁忌魔法であることを理解しているはず。

 ただ、呪殺だとバレないよう、隠蔽したという説もあげられるが――警戒しておいて損はないだろう。


 それにもしこれが計画的に行われていた場合、誰か知識のあるものが特定するのも想定していたということ。

 ……どうにも、きな臭いな。

 学者の言っていた通り、なにかに巻き込まれる予兆だろうか。

 1000年も引きこもっていたのだから、その分の貯蓄と思えば可愛い方――か。


 この使用人を問い詰めたいところだが、そこまでは管轄外。

 尋問は――魔法に頼れば可能だが、加減を間違えそうで怖いからな。


「おい、主人」

「は、はい」

「こいつは次男を殺そうとしただけではなく、世界を滅ぼそうとしていた女だ」

「……聞いておりました」

「ただでは殺すな。情報を持っていれば全て吐き出させろ」

「はい。分かっています。冒険者様、本当に……」


 主人が何かを言いそうになっているとき、私はふと思い出した。

 そうだ、長男。病に伏している子供がいると言っていた。

 なにか嫌な予感がする。長く生きてきたからこそ分かる感覚。


 ――そうだ、臭さだ。

 このメイドの臭さを思い出した。これは――呪いだ。

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