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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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人探し。2

「〈精霊の(ガイド)先導獣(・オブ・スピリット)〉」


 魔法を発動させると、獣――白銀の狼が現れた。

 光の加減できらきらと別の色に見えるのが、また美しい。

 私以外の誰もが、精霊獣の姿に引き込まれていた。


 人間の世界の狼に似せているものの、実際は違う種族らしい。精霊に言わせればもっと高貴な存在『精霊獣』だとか。


 精霊獣は気まぐれだが、魔獣に比べて人に寄り添ってくれる。

 迷い子がいれば導いてくれるし、なくしものがあれば見つけ出してくれる。

 ただし、プライドの高い精霊達に飼われているだけあって、召喚者には懐かないことも多い。

 私は力関係の問題で言うことは聞いてくれるが、懐くと言うよりもビジネスパートナーに近いだろう。


『わう! わふっ!』

「ふふ、かわいいワンちゃんですね」

「……そうだな」


 ……珍しい、精霊獣がテナの周りをぐるぐると飛び跳ねながら回っている。

 尻尾も引きちぎれんばかりに振り回している。

 狼の威厳はどこへやら、ただのワンコに成り下がっていた。


 ――いや、今はそんなことは良い。早く子供を探さねば。


「これを頼りに、持ち主を探せ」

『ワウッ!』


 クマのぬいぐるみを差し出すと、精霊獣はすぐさま動いた。

 彼らは霊体に近いような体を持っているため、人間の作った壁や部屋は関係ない。

 壁をするりと抜けると、こちらが追従出来ているのか確認もせずに進む。

 かといって、置いていかれる訳には行かない。


「テナ、行くぞ」

「はい!」

『ワン! ワンワン!』


 遠くなる声の方へ急ぐ。

 一応は待っていてくれているようで、既に庭に降りていた精霊獣は我々を呼ぶように鳴いていた。

 待ってはいるが、既に屋敷にすらいない。本当に導く気はあるのか。

 そもそも人間程度に呼ばれる機会は少ないから、力量差が分からないのだろうか。


「も、もう外に……」

「精霊の飼い犬だ。人間の作った壁など、あってないようなもの」


 ではこちらも近道する他ない。

 私は窓を開放し、足を掛けた。パンツスタイルの服だけあって、動きやすくて助かる。

 そうして足を掛けた窓から、躊躇いなく飛び降りた。


「先生!?」


 ――ここ3階です!

 というテナの声が、遠くなっていく。

 しまった、2階くらいかと思っていたが、想像以上に高かったらしい。流石は大貴族。

 2階なら無事に降りれるはずだったが、1つ高くなれば肉体が持たないだろう。


 当然だが――着地した瞬間、ボキリと嫌な音がした。そして訪れる痛み。


「む、折れた」


 折れた足では立てないわけで、私はそのまま前のめりに倒れてしまった。




 しばらく待っていれば、足が治っていく。痛みはあるが、こんなもの慣れている。

 死にかけたても再生、を研究と実験で繰り返していたため、足の骨が折れる程度は慣れていた。

 急がば回れとはよく言ったものだな。これで時間がだいぶ無駄になった。


「よし、治ったな」

「だっ、大丈夫ですか!?」


 テナがようやく走って降りてきたようだ。広すぎる屋敷というのも、考えものだ。


「ああ。痛いことに変わりないが、傷はなんでも治る」

「――痛い自体だめですっ!」


 テナらしくない強い語気だった。

 私は数百年ぶりに、心臓がバクバクと忙しくなった気がした。

 テナは震えながら、涙をためている。走ってきたせいか顔は赤く、息も荒い。


「私、ソーマさんが言っていたことが、よーく分かりました! 今までの弱い私じゃ、先生を止められません」

「テナ?」

「私が奴隷じゃないなら、きちんと叱りますからねっ! 飛び降りたら、ダメですよ!?」


 テナがこんな短期間で成長するとは、折れた足も喜んでいるだろう。

 急いで来たせいかと思ったが、呼吸が荒いのは怒りが爆発しているかららしい。

 そこまで心配することはないと言うのに。とりあえず合わせておくか。


「ああ、分かった」

「『ああ、分かった』……?」

「……とっ、飛び降りてごめんなさい」


 訂正。成長などではない。

 テナにソーマが憑依している。怖い。

 ソーマと違って表情があるおかげで、テナの怒りが直接伝わる。

 距離を詰めて威圧的に聞き返せば、それはもう恐怖である。


『わうわうっ!』


 早くしろと言わんばかりに犬が急かす。

 好機だ、今は依頼の真っ最中。テナのお説教から抜け出すチャンス――ではない、仕事に集中しなければ。


「そうだった。行くぞ、テナ」

「もう……。はいっ」


 犬に追従して走れば、中庭を抜けてどんどん進む。

 広い庭園に、訓練場らしきスペース、馬小屋。村ひとつありそうな敷地を、私達は駆け回る。


 そうして見えてきたのは、今まで通ってきた場所とは掛け離れた薄汚れた屋敷。

 ここに来るまでに周りの景色はどんどん変わり、木々も鬱蒼と生い茂っていった。

 手入れされていないのは明白で、同じ敷地なのかを疑いたくなるほどだ。


「ここはまだ敷地内のようですが……」

「別棟というやつか?」

「旧館という可能性もあります」

『わぅ! わふっ!』


 犬は早く行こうと我々を呼ぶ。

 この辺りに小屋や別の建物があるように思えないし、あの屋敷でほぼ確定なのだろう。


「とにかく行こう。精霊が間違えるわけがない」

「はい」

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