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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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人探し。1

 テナが地図を読めると言うので、彼女に道案内を任せた。

 前のチームで散々雑用をこなしていたせいか、普通の奴隷よりも一般教養が豊富だ。

 金銭管理、地図による道案内、常識。これだけの好条件が揃っているとは。


 それに書かれていた街はミ・ノヴィアの街のようだ。

 おかげで土地勘のあるテナは、サクサクと案内してくれている。

 気づけば屋敷は目の前だ。


「あちらのお屋敷ですね」

「ほう。大きいな」

「どうやらミ・ノヴィアでも有数の大貴族のようです」


 それはいい事を聞いた。初めての依頼で、多くの金銭を手に入れられる。

 必要なものも多いし、資金が一気に増えるのは有難い。




 しばらくして、私達は屋敷へと到着した。

 豪華な扉の前に立ち、ドアノッカーを叩く。

 まるで警戒するかのようにゆっくりと扉が開かれ、狭い隙間からメイドが覗く。


「……どちら様ですか」


 ……明らかに態度が悪い。冒険者だからだろうか。

 かといって、お貴族様特有の見下している感じではない。

 つま先まで見定めるような目線もなく、ただ警戒が行き過ぎて愛想がなくなってしまったようにも思えた。


 つまり、屋敷の人間が行方不明になってしまい、ピリついているのだろう。


「騎士団の依頼で来た冒険者だ」

「左様でしたか!」


 希望を見出したかのように、一気に表情が輝いた。

 さすがの温度差に、私でさえ驚いてしまう。


「こちらへ」


 どうぞどうぞと招かれるまま屋敷へ入れば、客間に案内された。

 わらわらと使用人達が群がり、一瞬のうちにテーブルに茶と菓子が並べられる。至れり尽くせりだ。


 騎士団経由で選んでいるだけあって、それに対する信頼度が高いのだろう。

 ギルドに直接依頼していれば、盗み聞きした変な輩が来るやもしれない。

 余計なトラブルや詐欺を防止するという点では、賢いやり取りかもしれない。

 ……まあ、騎士団には悪いが。


「ただいま旦那様をお呼びします」

「こちらを召し上がってお待ちください」


 メイド達は一通り、目の前を豪華な茶菓子で埋め尽くすと、そう言って立ち去って行った。


 いつもならば出された菓子は問答無用で食べるが、今回ばかりは手を出したくない。

 子供を探しているならもてなしているよりも、とっとと情報を渡すべきだ。

 数日もの間居なくなっているだけあって、ある程度は判断のできる青年だとは思うが、大切な令息ならば一秒でも無駄にするべきではない。

 家主から直接依頼を伝えたいのは分かるのだが。


「凄いですね……」

「食べてもいいぞ」

「いえ、遠慮しておきます。朝ご飯も沢山食べましたから」


 たしかにまだテナにはクリームやバター、油たっぷりの菓子類は重いな。

 かといって若者には菓子をあげたい気分だし、スーザンに頼んで作ってもらうか。


 私も茶ぐらいならば貰ってやるか、と手を出した時だった。

 廊下から、バタバタと忙しい音が聞こえる。

 ノックもせずに飛び込んできたのは、おそらくこの屋敷の主。

 マナーに厳しいであろう貴族様がここまで荒々しくなるとは、相当焦っているようだ。


「冒険者様ですか!」

「ああ」

「実は――」

「無駄話は好きではない。子供の私物を出せ、探す」

「はっ、はい」


 主人はまた慌ただしく部屋を出ていった。

 なぜ私物を、などという無駄な質問がなくて安心だ。


「先生。少しは優しく振舞ってください。怖いですよ」

「……む、すまん」


 ……怒られてしまった。

 ここ数百年は、使用人達くらいとしか会話してきていないから、人間への正しい対応というものが薄れているようだ。

 人間だった頃に比べればだいぶ暴君じみた性格になってしまっているからな、気をつけたいが……。


 いかんせん、数百年もこのままなのだ。

 今後はテナに口を挟んでもらって、気をつける生活になるだろうな。

 うーむ。意識改善か……。




「お待たせしました、こちらが息子の私物です」


 主人は思ったよりも早く帰ってきた。

 渡されたのは、可愛らしいリボンのついたクマのぬいぐるみ。

 男の子の私物らしく、ところどころ〝冒険の痕〟が見られる。

 随分と気に入っているのか、縫い直した部分も多くあった。


「……最近使っていた私物で構わないのだが」

「これがそうです」


 私はその言葉に固まった。


 趣味嗜好を貶すつもりはないが、今の若者はクマのぬいぐるみを大切にしているのか。

 ――なんて、現実逃避にも似た考えが浮かぶ。

 この世界の貴族に限って、そんなことはないだろう。


 であれば、まさか――考えたくもないが、行方不明の令息とやらは幼子ではないのか。


「失礼ですが、お子様の年齢は?」


 よくやった、テナ。固まっている私のために、聞きたい質問を投げかけてくれた。


「もうすぐ七つになります」


 その言葉に、私は怒りに任せて立ち上がった。

 ありえない、何をしていたというのだ。まさか育児放棄なのか。

 幼い子供が失踪したのならば、もっと早く、なぜ優秀な人材を雇わないのか。


 幼い子供が数日、行方不明。

 行方不明というのは大きくなっていたとしても、日数を追うごとに生存率が落ちていくのは分かりきっていることだ。

 しかも現代日本ならまだしも、ここは劣悪な環境も多い異世界。


「まだ幼いではないか! そんな子供を探すのに、何を手間取っている!?」


 貸せ、と言わんばかりに私は私物を奪い取った。

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