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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第三章 魔女、禁忌と呪い。

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初めての仕事。

「今日もよろしくお願いします、〝先生〟!」

「ああ。私の方こそ」


 冒険者生活、二日目。

 今日は一人ではなく、テナとチームとして活動する。


 テナはチームの仲間ということもあって、私を「リサ様」と呼ぶのは控えるよう頼んだ。

 かといってすぐにそれに馴染めるわけもなく、結局私の方から「先生」と呼ぶように伝えた。

 今後はテナに魔法を教えるつもりでもいたし、合っているだろう。


「そうだ、お前とチームを組むにしても、登録はどうしようか」

「大丈夫です。私も登録証はあります。奴隷も戦う場合、登録証が必要でして」


 つまり、前のチーム時代にギルドに登録済みだということ。

 ……そうなると私のほうが後輩なるのか。

 ある程度の依頼をこなしていたのなら、テナの登録証に依頼達成率とかも、登録されているのだろうか。

 そのおかげで少しは依頼の幅が広がってくれたりはしないか、などと甘い考えを抱く。


「……あっ、でも、以前のご主人様が持っていて……」


 テナがそのことを思い出し、うなだれる。確かに正式に引き継いで連れてきたわけじゃないから、テナの所持品などは全て奴らの手の中だ。

 ギルドが管理している身分証明書のため、下手に細工はしないとは思うが――そもそも手元にない時点で、私達は詰んでいると言える。


「再発行が出来るか聞いてみるか」

「はっ、はい!」



 ◆



「い、い、い、いらっしゃいませ〜!」


 ギルドに到着すると、昨日と同じ受付嬢がぎこちない笑顔で迎えてくれた。

 もう完全に顔を記憶されている。隣の受付嬢も、表情が固まっている。

 今日はブラムウェルと来ていないのにこの対応では、きっとあの日に起こったことも伝達済みなのだろう。


「どどどど、どう言ったご要件でしょうか!」

「ギルド登録証の再発行は可能か」

「え? は、はい。可能です……」


 明らかに何かを言いたげな表情。「もう無くしたのか」とでも言いたいようだ。


 この娘、こんなに態度に出ていてよく受付が出来るものだ。

 現代日本なら即刻クレームだったろうに。

 これも、異世界で異国だからこそ、成立する商売なのだろう。


 とはいえ昨日の今日で、登録症の再発行を頼んでいるのだ。疑ってしまうのも仕方がない。

 受付スタッフを困惑させたままにするわけもいかず、私は正直に口を開く。


「彼女のものを。以前のチームに預けたままだそうだ」

「そういうことですか! 承ります!」

「それと、名を書き換えたい」

「はい、どちらに?」


 私はテナへと目線を送った。自分の口で伝えるように、と。

 もしも、万が一。彼女があの名前を名乗るのを嫌だと思ったのならば。

 少しでもその素振りがあるのならば、私は止めに入る。

 彼女の意思を尊重したいから。


「テナ・ソーヤマに、お願いします」


 はっきりと、伝えた。そこに拒絶や無理強いはなく、テナはソーヤマを名乗ると決めていた。

 動揺などによる魔力の揺れもみられず、心ははっきりしていると私は確信できた。


 テナが自らソーヤマを名乗ったのならば、その覚悟があるのならば。

 私はその全てをもって、彼女を守ると心に決めた。


「かっ……かしこまりましたっ!」

「いいか。私の名前を使っているということは、責任は私にあり、テナへ行われた全ての行為は私への行為と見なすつもりだ」

「ひいっ! わかりました! て、手続きには少々お時間を頂きます……! 明後日……あっ、いえ! 夕方に! お越しください!」


 ……おっと、これは牽制の仕方を間違えたのだろうか。

 事務作業のようなものは別に負荷や迷惑とも思わないから、のびのびとやってもらって良いのだが……。


 まあ、こう言っているのだから甘えさせてもらうか。


「待ち時間に、ひとつ仕事でも受けようか」

「あっ! そうでした、ちょうど騎士団から依頼が来ています!」


 早速、アレックスから仕事の依頼のようだ。

 仕事の出来る男なのか、騎士団は処理しきれない仕事を大量に抱えているのか、たまたまなのか……。

 まあ、内情はどうでもいい。問題は依頼の内容だ。


「指名……?」

「しかも、騎士団だって?」

「見かけない女だが……」

「よそから来たのか?」


 話を聞こうと思えば、周囲がざわつきだした。

 原因はおおかた、目の前にいる受付嬢だろう。ハキハキと大きな声で受け答えしてくれるのは好印象だが、もう少し抑えてもらいたいものだ。

 私の知名度がもっと高ければ問題はないのだが、初日の騒動もあったし、落ち着いてほしい。


「お前は少し、声を落として喋るといい」

「す、すみません〜……」





 結局、依頼の詳細は騎士団が直接伝えるということで、騎士団に行くことになった。


「こちらに来たのは一日だけだったのに、リサ殿の噂で持ちきりだぞ」

「それはそれは……」


 初日とは違い、最初からまともな部屋で対応してくれたアレックス。

 私とテナは連れて行かれるまま、客間にやってきた。


「ところで、その少女は?」

「ああ、連れだ。私のファミリーネームを名乗る許可も出した」

「……そ、そうか」


 さすがは騎士団副団長といったところか。私が多くを語らずとも、全てを理解したらしい。


「……さて、雑談はここまでにして、仕事の話に戻ろう」


 彼は単刀直入で非常に助かる。

 アレックスはテーブルの上に、一つの紙を置いた。

 置かれたのは地図だ。街の地図に、赤い丸印が書かれていた。

 きっと、依頼主のいる住所の書かれたものだろう。


「とある貴族の令息が、数日もの間、行方不明になっている」

「ほう。人探しながら騎士団でもできるだろう」

「やってみたとも。痕跡すら見つけられなかった」


 人探しは苦手だから見つかりませんでした、とは言わないだろう。

 ただでさえ貴族令息であれば、手を抜かないはずだ。

 わざわざ〝私〟に依頼してきているということは、彼等も何か引っかかる点があったということなのだろう。


「それにもとより、この依頼主は冒険者に頼みたかったようだ。ただ、どの冒険者が適切か知らない。俺に依頼してきたのは、その冒険者の仲介だ」

「面倒だな、お前達も」

「……まあな」


 歴史や貴族、組織など様々な観点から、世間体的にはまだ冒険者のほうが下だろう。

 だというのに、騎士団を押しのけて冒険者を雇いたいと言われ、なおかつ仲介を頼まれたのならば。

 普通の騎士ならばプライドがボロボロになっているだろう。

 騎士を誇りに思っていれば、恨みを抱いてもおかしくはない。


「頼まれてくれるか」


 色々な葛藤があるだろうに、素直にそう言えるアレックスには尊敬してしまう。

 まだ若いから、そのように固まった思考はないのかもしれない。


「引き受けよう」


 若者の頼みを断る訳にはいかない。

 私は地図を取って、了承の意を示した。


「続きのやり取りは、依頼主と直接行ってくれ」

「分かった」

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