表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第二章 魔女、冒険者と貰い物。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/40

律儀なもの。

 私が舞台から降りていくと、案の定、キラキラと目を輝かせた大型犬――ブラムウェルが走ってきた。

 様々な魔法を見れて、感無量といった様子だ。


「お疲れ様です、リサ様! 素晴らしい戦いでした!」

「ありがとう」


 ブラムウェルに気とられていたが、会場の視線が変わった。

 嫌悪や憎悪は無く、畏怖と奇異な目。呆然と立つ者もいる。

 喧嘩を売ってきたチームも、私を口説こうとしたチームも呆気にとられている。


 当然だ。人の領域では踏み込めないものばかりを、今こうして目にしたのだ。

 滅多にない機会に巡り会えたことだろう。

 そんな視線の中を抜けて、私は端へと移動する。


「リサ様。先程の魔法について、お尋ねしても構いませんか」

「いいぞ」

「まず、〈二重身(ドッペルゲンガー)〉ですが、効果は分身を生むのみですか? わざわざ指示を出しておりましたが」

「流石は天才魔法使い。あれはだな――」




 ブラムウェルからの質問攻めにあっていると、いつの間にか最後の戦闘が終わったらしい。

 死屍累々――とまではいかないが、疲労した冒険者候補達が転がっている。


「結果は1時間後、またここで発表する。それまでは自由で構わない。解散」


 また待たされるのか。様々なことを考慮して、合格者を決めるのだろう。

 とはいえ1時間は暇だ。


「もうご飯は貰えないのか」

「何か買ってきましょうか?」

「そこまでじゃない」


 天才魔法使いさんをパシらせる女って、絵面が怖くないか?

 想像しただけで恐怖を感じる。

 食べ物が欲しいにしても、自分で買いに行くようにしよう……。


 さてさて、1時間。何をして時間を潰そうか――と考えていた矢先、私の方へと人影が向かってくる。

 5人の猛者、獅子の剣だ。


「やあ、試験官殿」

「……先程の非礼をお詫びしたいのです」


 驚いた。見た目通りの堅物、真面目、律儀さである。

 おそらく人間の頃の私が見ても、どう考えても傍若無人なのは私だ。

 他人のプライドをボキボキに折って、人の神経を逆なでし、守るべきマナーや信条を足蹴にした。


 不老不死、不死身の弊害だ。

 年々、他人の――特に人間の――心に寄り添えなくなる。


 ……いや、そもそも私はそういう人間だったのかもしれないな。


「いらない。私も人の心がよく分かっていなかった」

「リサ様。彼らを立てるためにも、詫びは受け取るべきです」

「んん、そういうものか」


 そういうものです、とブラムウェルは続ける。

 これが人間社会でのあるあるだったのか、それともこの世界での人々の心構えなのか。

 どちらにせよ、ブラムウェルがこういうのだから、受け入れるべきなのだろう。


「それでは私は、お前達の謝罪を受け入れよう」

「感謝します。……あなたは間違いなく合格出来るでしょう」

「そりゃありがたい」

「その力を、本当に正しく振るわれないおつもりですか」


 エドガーの目は、何かを訴えかけるようなものだった。

 私が加減をして試験に参加していたことが、よっぽど気になっているらしい。


 ノブレス……なんちゃらだったか。以前の世界でも、そんなような話を聞いたことが有る。

 金や権力を持つものは、持たざるものに与えるべき。そんな教えだった気がする。

 エドガーも、似たようなことを言いたいのだろう。

 私に正しく力をふるい、弱きものを助くような冒険者になってほしいのだと。


 まぁもちろん、事件事故、危険行為を無視するつもりはない。

 だからといって、勇者や正義の味方、英雄になる予定もない。

 私のこれは、所詮ただの散歩にすぎないのだ。


「通りすがりに見かけたら、助けるつもりだ」

「そう、ですか」

「エドガー、行きましょ」

「……ああ」


 エドガーは「また1時間後に」と残して、その場を去っていった。


「不愉快な冒険者ですね。私の持ちうる全てを動員して、社会から消しましょうか」

「怖いな~」


 やめてくれ、とやんわり頼んだ。

 ブラムウェルは不服そうに「今の今まで使ってこなかった権力は、現在のための貯蓄だったのですね」と呟くものだから、余計に恐ろしさを感じた。




 それから、ブラムウェルと会話を続けていれば、1時間などすぐに経過した。

 幸いにも他に話しかけてくる人間はおらず、比較的快適な時間を過ごせた。


「待たせたな。合格者を発表する」


 エドガーが各チームの名前を読み上げる。そのたびに、チームからは声が上がった。

 安堵、喜び、緊張から解き放たれた声。

 それぞれが肩を抱き、全身で喜びを示しているチームさえいる。

 彼等にとっては、それほどまでに厳しい試験だったのだろう。


 それに、彼等は生活もかかっている。就職と同じだ。

 受かればホッとするだろうし、落ちれば絶望する。


「ウィッシュ!」


 あの少女たちのチームだ。

 名前を呼ばれた瞬間、桃色の髪の少女が泣き出した。

 そして、残りの少女二人がそれをなだめている。二人も緊張の糸が解けたのか、目が潤んでいるように見えた。

 コレが青春というやつなのだろう。


「――リサ・ソーヤマ」


 そうして私の名前も呼ばれる。チーム名ではなく、個人名なのは私だけだ。

 誰もが私に目線を送った。それぞれの瞳には、多くの感情が乗っている。

 喜んだり、訝しんだり、忙しい連中だ。


「合格おめでとうございます。まぁ、リサ様なら当然ですね」

「なんでお前が誇らしげなんだ」


 獅子の剣は最後に、「呼ばれた者はカウンターで、登録証を受け取るように」とだけ告げて去っていった。

 これで解散、解放される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ