表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第二章 魔女、冒険者と貰い物。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/40

冒険者とは。2

 さてさて。防がれっぱなしでは、弟子の顔が立たない。

 怪我をさせない程度に勝って、終わりにしようか。


「では――〈二重身(ドッペルゲンガー)〉」


 魔法の発動により、私が二人に増える。

 二人と言っても思考から何から同じというわけではないため、ある程度の指示は必要だ。

 オカルトで聞いていたような本人に成り代われるほど、あまり万能な魔法ではないのだ。

 とはいえ試験程度ならば、切り抜けられる。


 さて、まずはどうしてやろうか。

 頭の良さそうなお姫様には、早々に消えてもらったほうが良いだろう。

 いまのところ指揮を取っているのは、リーダーであるエドガーだが――いずれ彼女が出しゃばってきた場合、平凡である私は敗北してしまうだろう。


「あの白髪女を引き剥がせ」

『分かった』


 分身は真っ先に、フィリスの方へと走った。

 私もドッペルゲンガーも、身体能力は抜き出て良いというわけではない。

 しかし、魔法をそれぞれ三度も受けた彼らは、心身ともに疲弊している。真横を走り抜けてもすぐに対応ができなかった。


『〈生ける檻(アライブ・プリズン)〉』

「きゃあっ!?」


 どこからともなく現れた太いツタが、逃げる時間も与えぬ一瞬で檻を作る。

 それだけではなくその檻は、隙間すらなかった。

 フィリスを完全に覆い隠し、姿を見えなくさせた。


 調整によっては普通の檻を作成することが出来る。人間が通れない隙間を生んで、こちらを見れるようにすることだって。

 しかし外が見える状況では、フィリスに援護を許可するようなもの。

 だから視覚情報を奪うためにも、外界を遮断する。


 なにも戦闘不能にしろ、とは言われていない。

 戦いに参加できない状況を生み出し、強制的に戦闘から排除すれば良い。


 それにこの檻は上級魔法とはいえ、即座に出てくることは不可能だ。ある程度は攻撃への耐性がある。

 それこそ、私レベルの化物では無い限り。


「なっ……! フィリス!」

「だ、大丈夫ですわ! 怪我はありません!」

「エドガー、私が攻撃魔法で破ってみるわ!」

「危険だ。お前の魔法じゃ、中のフィリスごとやられかねない」

「そうね……。じゃああの、分身を相手するわね」

「そうだな、頼む。俺は――こいつを封じる!」


 そう言うと、エドガーが飛び出してきた。

 固まっていても狙われるだけだと判断したのだろうか。

 残念だが、私は動いている的にもきちんと当てることができる。

 ここは彼の戦闘能力を見るという意味でも、少し遊んでみようか。


「ハァッ!」


 エドガーは急激に距離を詰めると、狂いのない剣さばきで私を狙った。

 人間としては速いほうだろう。魔獣、普通の人間であれば、見切ることすら出来ない。

 超人の域に達しているとも言える。

 剣を振る音が異様なほどに軽い。洗練された動きだった。


 近接戦闘はあまり得意とは言えないので、力を残すためにも最低限の動きで避ける。

 最悪、当たってしまっても問題ないのだが、人間たちは驚いてしまう。


「くっ、やるな!」

「どうも」


 私はエドガーの剣をギリギリで回避しながら、後方に目をやる。

 ちょこまかと動くドッペルゲンガーに苦戦するプリシラ。

 檻の内側から攻撃するフィリスに、外側から攻撃するダレン。

 遠方からエドガーを援護するべく、弓を放つニック。


 あちらはあちらで、色々と試行錯誤してくれているようだ。戦いがいある。

 さて、次は誰を封じようか。

 ……そうだな、盾役なんていいだろう。エドガーに合流されたら困る。


 ではどうやって、動きを封じてやろうか。同じ魔法で虐めてやってもいいが、味気がない。

 せっかく相手は本気を出せと言ってきているのだ。


 しかしそのまま盾役を狙うのは面白くない。

 私よりも弱いとはいえ、彼等は上位に食い込む実力者たちだ。今この瞬間も、様々な作戦を練っているはず。

 それに〝現場経験〟から言えば、彼等のほうが上。

 だから何かで気を逸らす必要がある。となると――


「分身、避けていないで魔法使いの女をなんとかしろ」

『了解』

「プリシラ! 気をつけろ!」

「分かってるわよ!」


 もちろん、盾役を狙うと言ったからこれはブラフだ。


 注意がプリシラに向いているすきに、盾役の足元に水を生成する。

 彼が気づくよりも先に、その水は大きく膨れ上がった。

 包み込むように増えた水は、彼の武器を含む腕までを飲み込みんだ。

 がっちりと水で拘束された盾役は動けなくなり、一瞬の出来事で頭が追いつかないのか、まだ表情は変わらないままだ。

 それとも、単純に冷静なのだろうか。


 当たり前だが、顔まで覆うと死んでしまうため、腕、もしくは肩までが限界だ。

 拘束するにはこの程度で十分である。


「……おお、これは……」

「ダレン!?」

「問題ない。ただ、俺は〝死んだ〟」

「……くっ、残るは三人か……」


 はてさて、本当にそうだろうか。


「きゃあ!」


 魔法特化だとは分かっていたが、やはり単純な体術で蹂躙できる。

 普通の女性よりは体力はあるが、近接戦闘は得意ではないようだ。


 分身も私からの命令を受けたことで、本格的にプリシラの相手を開始していた。

 ダレンに意識が向いた一瞬で、彼女に体当たりをして体勢を崩させ、そのまま馬乗りになる。

 トドメこそはささなかったが、これで彼女も離脱といえる。


「プリシラ!」

「だ、大丈夫……」


 仲間ばかりを気にしていていいのだろうか。いい人なのは分かった。

 だが、肝心の私への対応が疎かになっている。

 あっちを見たり、こっちを見たり、驚いたり忙しいが――私への剣が緩くなっている。


 ならばちゃっちゃと終わらせてしまおうか。

 どうせこの後、魔法を見まくったブラムウェルからの質問攻めにあうのだろうし。


 そう思うと、私は〈忍び寄る影(ハイドアンドシーク)〉を発動した。

 その名の通り、隠密に特化した魔法である。

 様々な〝影〟に潜むことが出来るこの魔法は、日中であれば自身や他人の影の中、夜であればどこにでも隠れられる。

 影を攻撃されると解除される欠点はあるが、今この混乱している状況で、床を見て「ここだ!」と的確に攻撃を入れられるわけもなく。


「ちょ、おい! 消えたぜ!?」

「おいおい……」


 視線がプリシラに向いた一瞬で、私は影の中に隠れた。

 再び振り向けばそこに私がいないのだから、彼等が驚くのも必然。

 床を見れば影が動いているので、バレバレなのが昼間における欠点だ。

 だからばれないうちに、さっさと決めてしまうのが吉。


 少々急いで、私はニックへと近付いた。

 ニックも変わらずメンバーを心配し、私への対処どころではなくなっている。

 そっと真後ろに姿を現し、首元に人差し指を突きつけた。


「動くな」

「……勘弁してくれよ」


 ニックはそっと両手を上げ、降参の意思を示している。


「……ッ、ニック!」

「さて、どうする。エドガー・ワイル」

「……。…………降参する」

「懸命だ」


 私は例のごとく、指を鳴らす。

 指を鳴らすと、周囲に展開されていた様々な魔法が消え去った。

 檻は消え、水もなくなった。ドッペルゲンガーも解除される。


 それと同時に、〈癒やしの女神の微笑み〉を付与する。

 神域魔法の、魔力と体力を回復する魔法だ。

 これからも彼等は試験官として戦わなければならない。

 だから私の戦いで消耗したものを、取り戻してやった。遊びに付き合ってくれたお礼でも有る。


「すごい……」

「なんでしょう、疲れが……消えました?」

「魔力も回復している、のか?」

「では残りも頼んだ、試験官殿」


 そう言って私は、戦闘用の舞台をおりた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ