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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第二章 魔女、冒険者と貰い物。

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冒険者とは。1

「それは俺も気になっていた。何故、的あてで手を抜いた?」


 にゅ、と急に出てきたのは、エドガーだった。

 最初の登場と言い、急に現れる男だな。比較的体躯の良い男のくせに、忍び足も得意と来たか。


 なんだ、見抜いていないと思ったのに。実は気付いていたのか。

 案外人間は察しが良いらしい。私の認識を改めないとならない。

 それに試験官にバレていたのならば、もう諦めて吐露するしかないな。


「私は別に冒険者になりたいわけじゃない。身分を証明する物が欲しいだけ」


 はっきりとそう言うと、ウィッシュのメンバーだけではなく、その場で休んでいた殆どがざわつき始めた。

 まるで私が悪いかのように、睨みつけたり、ヒソヒソと言い合ったりしている。

 苛立ちを隠さないようで、鈍感な私でも殺意に似た憎悪が籠もってるのは分かった。


「……リサ様。中には何度も、試験に落ちている者もおりますので」

「あー……」


 しまった、と頬をかいた。

 確かにそうだ。どんな試験であっても、手を抜いても合格できると宣言すれば、喧嘩を売っているようにしか聞こえない。


 ……私はここまで、考えの及ばない無神経だっただろうか。

 もう人間だった頃の性格は殆ど消えているようなものだ。

 だって人間として過ごしていた時間と、この世界で魔法使いとして生活してきた時間は圧倒的に違う。

 転生直後とは性格も変わってきている自覚はあったが、もう少し人間に寄り添うべきだな。


「悪かったよ。じゃあ次の試験は、なるべく力を見せるようにしよう」

「そうしてくれ」




 しばらくして、試験が再開された。

 あんな雰囲気ではあったものの、各々がベストを尽くせるように動いていた。

 試験中は〝雑念〟を消すように立ち回り、舞台から降りて来くれば私を睨む。

 完全に先程のくだりで、私は受験者全員を敵に回したようだ。


「――次、リサ・ソーヤマ!」


 私の番が来た。舞台へと向かうが、ちくちくと視線が痛い。

 中には私を『イキっている女』と見ている人も居るだろう。女で一人、ということも相まって反論できない偏見だ。


 こんなに注目されるのは想定外なんだがなぁ。


「手加減は不要だ」

「あー、はは……」


 私は苦笑いを零す。

 本気を出したら〝次元〟が〝消える〟のだが、構わないのだろうか。

 これが存在する次元が消えれば、私は一人ぼっちで虚無の空間を漂うことになる。

 彼らは死すら認識できず、この世界は崩壊し、誰の記憶にも残らない終わりを迎えるというのに。


 ま、よくないから加減をするがな。


「じゃ、行くぞ」

「……来い」

「〈凍てつく雨(フリージング・レイン)〉」


 〈凍てつく雨(フリージング・レイン)〉は上級魔法である。

 効果は〈聖なる雨(ホーリー・レイン)〉の氷版と言ったところだ。

 オシャレに〝雨〟を名乗っているが、ただの例えに過ぎない。実際は該当の属性が付与された、矢が降り注ぐのみ。


「いきなり上級!?」

「……俺が受け止める」

「頼む、ダレン」


 ふむ、やはりダレンという大男が盾役らしい。

 その巨躯を活かした絶対的な守りと、大きいゆえに囮としても優秀なのだろう。

 彼が一身に私の魔法を受けようとしているが、そうはいかない。


「――・五重(クインティプル)

「は?」

「なんだ?」


 五重の重複魔法を唱えたことで、〈凍てつく雨(フリージング・レイン)〉は五倍の量となる。

 見たこともない魔法の量だろう。

 いや、複数名の魔法使いを相手にすれば、これくらいの量は見かけるかもしれない。

 だが一人から展開された〈凍てつく雨(フリージング・レイン)〉は、これが最多のはずだ。


「なっ!?」

「な、何よあれ!?」

「……エドガー、流石に防げない」

「だろうな。各自で防御を取れ!」


 一応、殺してはならないので、彼らの状況が整うのを待った。

 エドガーの発した言葉を受けて、そろそろ発射してもいいだろう――と魔法を放つ。


 場に響き渡ったのは、轟音。

 雨とは思えぬ暴力的な矢の量が、彼らを襲う。

 いくら上位のチームとて、それぞれが上級魔法を受けるのは厳しいだろう。


 と、思っていた。

 彼らは難なく防ぎ切り、〝雨が上がった〟その場所には耐えきった獅子の剣の五名が立っていた。


「ふむ。上級を一人で防げる程の能力があるのか」


 想像以上に優秀なチームのようだ。

 であればもう少し〝遊び〟に付き合ってもらっても、いいだろう。

 こんな機会は滅多にないからな。


「〈凍てつく雨(フリージング・レイン)〉」

「また来るぞ!」

「――・十重(ディカプル)

「は!?」


 十倍。つまり一人あたり、魔法を二つ受ける必要がある。

 一つなら凌げたが、果たして二つはどうだろうか。

 魔法自体は同じだし、他に特に強化も用いていない。

 彼らなら大丈夫だとは思うが。


 私は問答無用で魔法を放つ。先程とは比にならない量の魔法が降り注いだ。


「ぐっ、おおおお!」

「くそ……!」

「なんなの、これ……!」

「冗談きついぜ!」

「み、みなさん、頑張って耐えてください!」


 色々と言っているが、どうやら無事に耐えきっているようだ。

 矢の雨が降り注いでいるが、致命傷には至っていない。

 流石は上位のチームといったところだ。

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