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さすがに1000年は飽きたから。~引きこもりを謳歌した最強魔女は、外に出てみることにした~  作者: ボヌ無音
第二章 魔女、冒険者と貰い物。

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冒険者になるために。2

「次、リサ・ソーヤマ!」


 さて、呼ばれたはいいものの、方向性を決めていない。

 『私やっちゃいました系』や『実力を隠す系』など、異世界では色々とあるだろう。

 待ち時間に考える予定だったのだが、思ったよりも試験を見るのに夢中になってしまった。


 正直に言えば、私は身分を証明する物が欲しいだけだ。

 冒険者として食っていこうとは別に思っていない。家に帰れば十分な食べ物と、ぐっすり眠れるベッドがあるのだ。

 アレックスから依頼を受けた際には、幾つか仕事をするつもりだが――結局この旅はただの暇つぶしの外出。


 となると、やはり『実力を隠す系』に近い動きをすればいいだろう。

 別に隠す訳では無いが、必要最低限の動作ですませば良い。


「〈氷塊(アイス)〉」


 ド真ん中を狙えるし、何なら的ごと消すことも出来るが――ここはひとつ、真ん中を外す。


 発射された〈氷塊(アイス)〉は、真ん中を外れて左の三分の一程が削れた。

 ぱこん、という小気味いい音がして的が動く。

 下級魔法ごときがここまでの威力を出せたのならば、十分と言える。


「……。……まぁいいだろう。次!」




 しばらくして、全員分の的あて試験が終了した。休憩を挟んで、次は戦闘試験になる。

 魔法を使用した者や緊張を緩和するための休憩時間のようだ。意外とホワイトなスケジュールらしい。


 それだけではなく、ギルドスタッフが入ってくるなり差し入れをくれた。

 そういえば出てきてから、殆ど食事をしていない。

 客室に通された際に少しだけつまんだが、お菓子を食事に区分すると、ソーマが怒るからな……。


 差し入れも受け取ったそれぞれのチームは、反省会を開いていたり、雑談に花を咲かせていたりしている。

 私も端っこで、もそもそと軽食を食べていた。


「リサ様」

「お、ブラムウェル。終わったか?」


 ちょうど話し合いを終えたらしいブラムウェルが戻ってきた。

 よかった、一人じゃ暇だったんだ。気持ち悪い弟子とはいえ、話し相手がいるのは良い。


「はい。こちらも終わってしまったようですね……」

「別に大した成績残していないぞ。〈氷塊(アイス)〉でちょっと的を削っただけだし」

「……なぜ?」


 ……明らかにキレている。

 着せ替えごっこで脱ぎ散らかしていたのを知った、あの時のソーマのような怒りのオーラを放っていた。

 アレは怖いんだ。


「だ、だって、身分証欲しいだけだし……」

「あ、あなたともあろう人が……!」


 なんとでも言え。

 どうせここで力を自慢したところで、冒険者にランクはない。

 依頼だって数をこなさないと上位ランクを受けられないし、ここで真面目にやったってしょうがないでしょうに。


 私とブラムウェルでは考え方がだいぶ違っていたようで――当然とも言えるが――、何度いなしてもブラムウェルは猛抗議を続けている。

 こんなところで私の実力を見せたって、ねえ。


「あの……!」


 ブラムウェルの対応に困っていると、声がかかった。

 また面倒事か、と目をやるとそこに居たのは――先程の少女三人パーティ、ウィッシュだった。

 三人の中で、淡い桃色の髪をした金色の瞳の、小動物を彷彿とさせる少女が声をかけてきている。


 その瞳はまるで憧れを孕んでいるようで、目線は私――ではなくブラムウェルに向いていた。

 当たり前である。


「ブラムウェル・レイナー様ですか……!?」

「そうですが、何か」


 無表情のまま一切変えることなく、無愛想に対応するブラムウェル。

 何だその差は。私との対応と違うじゃないか。

 むしろ嫌がっているまであるぞ。


「ふぁ、ファンです! 著書も毎回買ってます……!」

「それはどうも」


 嬉しい言葉をかけられているのに、ブラムウェルは終始真顔を貫いている。

 わざわざ格好つけるために真顔になっているのではなく、本当に心の底から興味がないようだ。

 ここまでつっけんどんだと、少女が可哀想に思えてくる。


「こちらの方は……?」

「私の師匠です」

「しっ……!?」


 目を丸くして、少女は驚きを隠そうとしない。

 ブラムウェルの知名度――と、おそらくあるであろう功績――を考慮すると、当然の反応だ。

 私だって書籍などである程度の人間の限界は学んでいるから、ブラムウェルがどれだけの才能あふれる人間なのか理解できている。

 だからもしも私が同じ立場だったら、同じように驚くだろう。


 そして肝心の私は、反射的に「違う」と言いそうになってしまった。

 流れで師匠になったのを、既に忘れそうだった。危ない。


「……嘘ですよね?」


 そう言うのは、声をかけてきた少女とは別の少女。

 茶髪に青い目。きりりとした表情から、強気な少女だと分かる。

 桃髪の少女を守るように前に出て、堂々とした姿勢で抗議してきた。


「あんな低レベルの魔法で、まともに制御できない魔法使いが、師匠なわけがありません」

「ちょ、ちょっと、ジュリー!」


 ブラムウェルと少女・ジュリーの間に、冷えた空気が流れる。

 その原因を作ったのは完全に私だ。

 失敗だ。楽な道を選びすぎて、ブラムウェルが人に疑われる始末。


「それは俺も気になっていた。何故、的あてで手を抜いた?」


 にゅ、と急に出てきたのは、エドガーだった。

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