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さすがに1000年は飽きたから。  作者: ボヌ無音
002 第二章 魔女、冒険者と貰い物。

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冒険者になるために。1

「開始前から仲が良いのは結構だが、試験に集中して頂きたい」

「え、エドガー・ワイル……!」

「獅子の剣が試験官かよ、ツイてねぇ……!」


 やはり影響力のある人物のようだ。

 チンピラどもは何やらモゴモゴ言いながら、訓練所の中に逃げていった。


 エドガー・ワイル。獅子の剣。どちらも、知らない名称だ。

 奴らの様子から有名人であるのは見えているが、ブラムウェルやアレックスの説明にもなかったし、どうしたものか。


「お前も希望者か」

「そうなる」


 エドガーはじっくりと私を観察した。

 頭の上から、つま先まで。美女を観察しているというよりかは、戦士の技量を見ているようだ。

 あまりいい気はしない。


「……冒険者を舐めないほうがいい」


 はて、それはどういう意味で言ったのだろう。

 彼等を弄んだことだろうか。それとも、先程の品定めからして――私が舐めた態度で冒険者登録しているとでも思ったのか。


 前者であれば、一応成人しているであろう男をからかったのは悪いとは思う。

 あちら側から仕掛けてきてはいるが。

 後者であれば、もう少し目利きを鍛えるべきだろう。

 もちろん、このエドガーとやらが。

 私の実力が全てに知れ渡ってほしいわけではないが、そこまで名のしれた人物なのであれば、私の力を見抜いてほしいものだ。


「それは失礼」

「……」


 私が言うと、エドガーは明らかに不快そうに眉をひそめる。

 私の言動の一つ一つが気になるようだ。どう謝っても何か言われそうな雰囲気がある。


 まだなにか言いたげなエドガーだったが、後ろに控えていた猫に似た美女が姿を見せた。


「エドガー、気にしてないでとっとと始めましょ」

「……そうだな。――待たせてすまなかった。これより試験を行う。魔力の検査は先程済ませたと思うので、実技試験に移る」


 あの美女には感謝しないとな。エドガーが説明に入った。

 チンピラが言っていた通り、彼等はこの試験での審査を行う人物たちのようだ。


「知っている者も多いと思うが、改めて自己紹介させてもらう。俺達は獅子の剣。俺はエドガー・ワイル、リーダーだ」

「プリシラ・サーチよ」

「……ダレン・アドヴァンス」

「ニック・ウィンドだぜ」

「フィリス・レイトと申します」


 プリシラ・サーチ――先程の猫系美女だ。

 薄紫色の瞳に、黒色の頭髪と妖艶さがより美しさを醸し出している。

 流れ出る魔力からして、魔法使いだろう。


 ダレン・アドヴァンス――屈強な肉体を持った大男。

 エドガーもそれなりの体躯の持ち主だが、それをもはるかに超える巨躯だ。

 色黒の肌、黒髪に黒目という地味な見た目だが、肉体のインパクトは尋常ではない。

 盾を持っているな、彼は盾兵といったところか。


 ニック・ウィンド――黄緑色の髪の毛に、黒目。異世界ではほとんどが美形だが、彼はその中でも軍を抜いている気がする。

 雰囲気からして、一言で言うなら『チャラ男』という部類だろう。

 その割には気配が静かだ。盗賊、暗殺などが得意な部類だろうか。


 フィリス・レイト――泥臭い冒険者とは思えない、所作に洗練された雰囲気がある女。

 きちんと整えられた白銀の髪に、薄緑の目が美しい。

 プリシラが猫のような美女であるならば、フィリスはお姫様やヒロインの部類の美女だろう。

 しかし、このチームに属しているだけあって、ただのお姫様には思えない佇まいだ。


「まじか……」

「うそ」

「獅子の剣……? ほんもの……?」


 訓練所で待機していた人間たちは、口々に言う。

 その誰もが獅子の剣を知っているようで、驚きや困惑を表している。

 一方で獅子の剣は、そんな対応は慣れきっているようだ。自慢する様子も、厄介に対応する様子もない。


「説明を続ける。今回の試験内容は二つ。的あてと、試験官チームとの戦闘だ」

「的当ては正確性、戦闘は我々が実力を見ることで適性を測るわ。それぞれ得意な方法でやって貰って構わないわよ。両者の成績を見て考慮するから、遠距離攻撃が苦手な子も的当ては参加するようにね」


 エドガーの言葉を補足するように、プリシラが続けた。


 ここで実力をきちんと見分けて、ただの喧嘩が強いだけの自信家を蹴落とすようだ。

 現場を見ている冒険者チームだからこそ、この試験で可否を決める事ができるのだろう。

 冒険者とは命に関わる仕事でも有る。それは自分の命も、他人の命も。

 だからこそトップチームである獅子の剣が、試験官として選ばれるのも頷ける。


「では、呼ばれた者からこちらへ来るように。まずは――ウィッシュから!」


 呼ばれたのは三人の少女。ウィッシュというのはチーム名のようだ。

 まだ若く、現代日本で言うなら……そう、中高生くらいだったか。

 そんな若い少女達が、危険な冒険者になろうとしている。

 前の世界では考えられない。少なくとも、住んでいた国では。


 書物でこの世界と元の世界との違いは理解していたが、1000年越しにこうしてきちんと見ることになるとは。

 ――というか、1000年も経ってもあまり変わっていないんだな、人類。


 そんなことを思いながら、私は試験用の的を見た。

 的は人数分用意されており、狙う位置は数メートルほどの距離がある。


「ふぁ、火炎(ファイア)!」

風切り(ウィンドカッター)!」

「……ふっ!」


 三人のうち、二人が魔法を放った。最後の一人は弓矢を用いていた。


 火炎(ファイア)は外れたが、風切り(ウィンドカッター)は的を真っ二つにした。お見事。

 矢は真ん中から少し外れた場所に刺さり、悪くない。

 最初の一人は覚束ない様子だったが、他の二人は慣れているようだ。

 これが初めてというわけでもないのだろう。


「クッソー、ズレた。クララもどんまい!」

「うぇーん、ごめんね……」

「良いよ。攻撃は苦手でしょ」

「うぅ……」

「――次の者!」


 次々に、この場にいる受験者が呼ばれていく。

 誰もが悪くない成績を残しており、この試験は楽勝と見た。

 あのチンピラですら苦戦しつつも、的になんとか当てている。


「次、リサ・ソーヤマ!」


 おっと、気付けば私の番のようだ。

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