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さすがに1000年は飽きたから。  作者: ボヌ無音
002 第二章 魔女、冒険者と貰い物。

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冒険者登録。2

「さて。冗談はさておき。この方は私の師匠です。ペンでは測れない魔力をお持ちですから、普通のペンを頂けませんか」

「ひぇっ……! かしこまりましたっ! どうぞ!」


 今度差し出されたのは、受付にあった何の変哲もない普通のペン。

 それを受け取ると、破裂することもない。


 改めて項目を見た。書かれているのは履歴書みたいなもの。

 名前や生年月日などのシンプルなものから、経歴、得意とする戦闘方法など、アピールポイントまで。

 入会、登録などの言葉を用いているが、結局ここは仕事を斡旋している会社のようなものだ。

 この〝入会〟でふさわしい人物なのかを見極めるのだろう。


 となると非常に不利だ。私に経歴はない。

 だって1000年、引きこもっていた。何もしていない人物など怪しいに決まっている。


「ブラムウェル。私は特に書けない」

「気にしないでください。名前だけで結構ですよ」

「そうか」

「ええ。リサ様を落とすようなレベルの低いギルドなら、こちらから圧をかければよい話ですから」


 うーん。やっぱり、この弟子怖すぎる。誰だ、小動物とか言ったやつ。

 これを笑えないのは、奴が本当にやりかねないから。

 笑顔で恐ろしいことを言うせいで、目の前のスタッフが固まっている。

 ――今日は本当に災難だな、この娘は。

 などと、同情の念を送った。


 とりあえず書けるところは書き上げて、ペンと紙を受付へ返す。


「あっ、あの、あと数十分ほどで試験がありますのでっ、そちらにご参加ください!」

「ほう」

「私も見ていて構いませんか」

「……かっ、確認します!」


 またバタバタと裏へ走っていった。短い時間なのに、忙しくさせてしまった。


 ……というか、ブラムウェルはどこまでついてくるつもりだろうか。

 奴ほどの有名人であれば、仕事も多くあるだろうに。

 右も左も分からない私からすれば、付き添ってくれるのは非常に助かるが、妨げになっているのならやめてもらいたいものだ。


 スタッフはまた忙しそうに走りながら戻ってきた。

 表情はもう接客のために取り繕う顔ではない。

 明らかに申し訳なさそうな顔を貼りつけて来た。


「ずみまぜん〜……、ブラムウェル様とは、弁償について支部長が話したいと……」

「分かりました。では、リサ様。後ほど」

「ああ、また」




 スタッフの口頭での案内で裏の方に行くと、訓練所のような施設へ出た。

 弓矢の練習に使うような的に、剣技で用いるような人型の的。

 広く取られたスペースには、少し小高い舞台が用意されている。リングや土俵の類だろう。


 既に数名の登録希望者が待機していたようで、広い空間にチラホラと人影がある。

 一人でいるのは私だけのようだ。

 誰もが二人以上のチームでいるようで、単独で入ってきた私を睨んだりしている。

 別にライバルでもないというのに、そこまで警戒する必要はあるのか。


「――なあ、姉ちゃん」

「ん?」


 急に声を掛けてきたのは、柄がいいとは言えない数人の男達。

 全員が頭の悪――治安の悪そうな様相から、仲間同士で間違いないだろう。

 それぞれが、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべている。


「いい体してんなぁ」

「冒険者よりも、娼婦のほうが金稼げるんじゃねぇのか?」


 ふむ。いい体であるのは非常に同意だ。

 私は――この世界に転生してからの私は、美女とハッキリ言える。スタイル抜群、乳もでかい。

 飽きた、見慣れたとはいいつつも、美しいのには変わりない。

 我ながら気に入っている。


「褒めてくれてありがとう。私も私を美人だと思っている」

「へーぇ……」

「なぁ、合格できるよう手伝ってやるからよ。一晩抱かせてくれねぇか」


 なるほど。これは〝舐められている〟というやつだ。

 外に出るとこういうことも起きるというわけか。

 私自身が見た目に慣れていることもあるが、人間からしたら美しい部類であることをもう少し自負するべきだな。


 さて、こいつらの処遇はどうしようか。

 まだ時間はあるし、暇だから〝遊んで〟もらおう。


「いいぞ。私に触れたらな」

「ひっひっひっ、そうこなくっちゃ――グォ!?」


 スッと出した手は、まるで同じ極の磁石のように弾かれた。

 二度、三度と手を弾かれれば、男たちは焦り出す。

 痺れを切らした一人が、大胆にも抱きつこうと駆け寄ったが、今度は男自身が私を避けた。

 両腕が空をかき、私の横で何もない空間を抱き締めている。


「なんっ、なんだこれ!?」

「触れるどころか……」

「近付けねぇ……」


 そう言いながら果敢に挑戦する男共。

 もしもこれを打破出来ようものなら、それこそ私が本当に抱かれるべき男。

 私よりも強い存在であれば、それに値する。


「ほうら、いいのか。頑張らんで。豊満な胸がお前を待っているぞ〜」

「くっ……!」

「ちくしょう……!」


 胸を両手で支え、ゆさゆさとわざとらしく動かしてやれば非常に悔しがっている。

 どれだけ頑張っても、チンピラ程度が私に触れられるはずはない。

 肉欲に支配された男が必死になっている様子が滑稽で、くつくつと笑いが漏れる。


「何をしている」


 背後に来た誰かが、そう言った。

 すると空間は一気に静まり返る。チンピラも、私とチンピラのやり取りを傍観していたほかの希望者も。

 鶴の一声とは、こういうものを言うのだろうか。


 振り返ってみれば、やはり見覚えはない。

 短い金髪に、青い瞳。筋肉質で、鎧を装備している男。

 後ろには四人の男女が控えており、雰囲気からして仲間に見える。

 ギルドの職員かと思ったが、まとっている衣装は冒険者が着ているものによく似ていた。

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