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さすがに1000年は飽きたから。  作者: ボヌ無音
第一章 魔女、外に出る。

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貰いもの。3

次回は11日(水)です

「テストするぞ」

「えっ、あ、リサ様――」


 ブラムウェルの返事を待たずに、私は簡単な魔法を展開した。

 誰でも扱える階級の低い魔法。小さく炎が生み出され、すぐさま消えた。

 正直、このレベルの魔法ならブラムウェルに硝子は不要だろうが、問題はそこじゃない。

 きちんと眼鏡に表示されるかのテストだ。


「……〈火炎(ファイア)〉、下級魔法と……出ました」

「良し。効果は出ているな」

「……あの、これは……」

「魔法の名前と階級が見れるようになる。一つ一つ説明するのが面倒だし、私が急に展開した時も分かるだろ」

「あ、ありがとうございます!」


 いちいちあれこれ聞かれるのは面倒なんだ。

 魔法名と発動タイミングさえわかっていれば、頭のいいブラムウェルは魔法名を覚えておいてくれるはず。

 後々落ち着いたタイミングで、聞いてくれるだろう。

 それに関連する文献を、自分で漁ってくれるかもしれない。

 私の説明の手間が減るならそれでいい。


「じゃ、最初の授業だ」

「はい!」

「禁忌魔法というものに伴う代償は、足りない分の魔力の代わりなんだ」


 ――禁忌魔法。

 その名の通り、禁じられた魔法だ。禁じられている理由は簡単。危険だから。


 人間社会においては『代償が発生する』と言い伝えられている。

 しかしそれは、今言った通り。足りない魔力を補うための贄のようなもの。

 魔力が十分に足りていないのならば、命を。

 魔力が十分に足りていないのならば、土地を、世界を。人類が出し得る全てを。


 通常の魔法ならば、魔力が足りない場合は発動が出来ない。燃料がなければ動けない機械と同じ。

 禁忌魔法はその制限がない。それが恐ろしいのだ。


「まるでクレジットカードだな」

「くれ……?」

「何でも無い」


 さて、冗談はさて置き。

 その膨大な魔力を、もしも発動者一人で賄えるとしたら?

 枯渇することのない、無限に湧き出る資源――魔力があるとしたら?


「もしも禁忌魔法の使用者が、十分な魔力を持っていたらどうなる」

「……まさか、あなたは……」

「そう。私に魔力の上限はない。だから代償なしで禁忌魔法を使える」

「す、す、素晴らしい……!」


 感動しているブラムウェルを放置して、私はダークエルフの方を見た。

 目がかち合うとビクリと体を揺らしている。これはもう反射に似たようなものだろう。

 それにこれから、彼女を脅すのだから怯えてもらわねば困る。


「それを見ることになる。お前も同罪だぞ」

「……はい」


 紫色の瞳が静かに潤んだ。そしてポロポロと大粒の涙がこぼれ落ち、少女は声も上げず泣いている。

 禁忌魔法と聞いて恐ろしいのだろう。

 話を聞いていれば救ってくれると理解できるだろうが……彼女に余裕はない。

 つい先程まで、死にかけていた人物だ。


「だから口封じのために、私のパーティーに入ってもらうかな」

「……っ! ぜ、ぜひっ!」

「よし。ではやるぞ」


 人に見られると少々まずいからな。

 監視者を防ぐ魔法も、幾つか展開させてもらおう。

 では、行こうか。


 〈深淵を覗く者〉――監視者を通知する。

 〈不可視の門〉――監視を防ぐ。

 〈苦痛なき眠り〉――万一に発生した痛みへの緩和措置。

 〈流転の神の御業〉――体内の魔力を循環。

 〈魔法の女神の導き〉――人の肉体が魔法に耐えきれず、魔力を奪っていくのを防ぐ。

 〈流魔正導〉――魔力の流れを正しく戻す。


 ――さて、これで治っただろう。

 改めてダークエルフの中を覗けば、絡み合っていた魔力は元に戻っている。

 監視者がいたという通知もないし、無事に済んだようだ。


「あ……」


 ぐらり、と少女の体が傾いた。

 座る力すら失った彼女は、そのまま倒れていく。

 私は少女をそっと抱きとめ、そのままゆっくりとベッドに寝かせた。


「よしよし。中身をいじったから疲れたな。このまま寝なさい」

「……は、い……」


 先程の警戒心も、怯えもない。それほど疲れたのだろう。

 少女は言われるがまま、夢の中へ落ちていった。

 眠った彼女をベッドの真ん中に移動させ、布団をかけてやる。


 少女が目覚めたら、胃に優しい食事を運ぶようホテルスタッフに頼んでおくか。


「さて……、うぉ!?」


 くるりと振り返れば、そこにはボロボロと涙を零している美青年がいた。

 黙っていれば美形だと言うのに、鼻からも液体を垂れ流しているのは少し滑稽である。


 ブラムウェルがこうなったのも、全ての魔法を〝視た〟からだろう。

 効果は分からずとも、その眼鏡には神域魔法だの禁忌魔法だのが大量に表示されていたはずだ。


「私は……世界を……見たのですね……」

「言うなよ」

「勿論です! 口外など以ての外。心に刻み、この貴重な機会に巡り会えたことを感謝致します」

「そ。じゃあ一番弟子のブラムウェルよ」

「はいっ!」


 おい、鼻水が飛び散ったぞ。汚い。

 満面の笑みなのに、顔面がびちゃびちゃすぎる。


「……こ、この子はこのまま寝かせて、私達はギルドに行こうか」

「承知しました!」


 部屋を出る前に何かで顔を拭いてやるべきだな……。

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